「ARMは13年後のスマホを設計している」「後継者は10年かけて探す」――孫社長

» 2017年06月22日 00時13分 公開
[田中聡ITmedia]

 ソフトバンクグループが6月21日に開催した株主総会で、孫正義社長が、未来に向けてのビジョンを語った。

ソフトバンク ソフトバンクグループの孫正義社長

孫氏が思い描く未来

 「情報革命をけん引し、人類に最も尊敬される会社になりたい」と孫氏は語る。その鍵を握るのが「シンギュラリティ」。人工知能が人間の能力を超える技術的特異点のことで、2016年の株主総会から、孫氏が連呼しているキーワードだ。

 「われわれ人類が生み出したコンピュータのチップが、発明した人類をも上回る知的活動をし、30年以内にさまざまな分野で活躍する。最近では、囲碁や将棋でも、AIがプロの名人を負かすレベルになってきた。一部の知的活動においては、すでにコンピュータは人間の知能を上回っている」(孫氏)

ソフトバンク インターネットにつながるIoTデバイスのビッグデータが、人工知能を発達させる

 人工知能が発達することで、車の事故が起きない、平均寿命が100歳を超える、未来を予測できる、ロボットと共生する――そんな世界が訪れると孫氏は予測する。その鍵を握るのが「データ」と「チップ」だという。「ディープラーニングをする上で重要なのがデータ。データを生み出すにはチップが必要。チップがあるからデータが生まれ、データがチップをさらに賢くし、人工知能として超知性を生み出していく」(同氏)

人工知能の発達で大きな役割を果たすARMのチップ

 そのチップの設計を手掛けるのが、ソフトバンクグループが2016年に買収したARMだ。「1年間で、約170億個もARM(ベース)のチップが出荷されている。(単純計算で)1人あたり2.5個のARMチップが出荷され、2次曲線で増え続けている。単にスマホや自動車、電子機器だけでなく、ランニングシューズ、メガネ、いずれはミルクの容器などにもARMのチップが搭載されていく」と孫氏は話す。

ソフトバンク ARMのビジネスモデル
ソフトバンク ARMベースのチップ出荷数は年々増加している

 孫氏によると、未来の予測にも、ARMは大きな役割を果たしているという。「5年、10年後に、技術がどこまで進展していくのかを読むのはなかなか難しい。でもARMには、10年先までのチップ設計のロードマップがある。設計図を出荷してから2年後にチップになって、1年後に製品になるので、13年後のスマホの設計を今、ARMは行っていることになる。これほど先を予言できる会社をグループに持っていることは、全体の戦略を練るのにどれだけ役に立つか。あれに組み込まれたらああなるとか、どんどん推論できるようになる」(孫氏)

 ソフトバンクグループは、これまでさまざまな企業を買収してきたが、「一番鍵になった買収を1社だけ挙げよと言われると、ARMになるのでは」と孫氏が言うほど思い入れがある。「ARMの買収を発表したときに、ソフトバンクの株価は下がった。多くの人々に理解されていなかったが、全然構わないと思った。そんなもんだ」と振り返る。

 一方で、人間が人工知能を制御できなければ、人類に大きな被害を及ぼす恐れもあり、そうなると人工知能は「もろ刃の剣」になってしまう。孫氏は「人類に対して(人工知能が)反乱を起こすと滅亡の危機になるので、われわれが超知性を正しく組み込み、正しく行動してほしいと願いながら設計する」と話す。また、人工知能が、そうしたリスクを人間に代わって解決してくれるかもしれない、という逆説的な考えも披露した。

 ソフトバンクといえば、携帯キャリアのイメージが強いが、「ソフトバンクの本業は携帯電話ではない」と孫氏。「ソフトバンクは情報革命の会社。携帯電話は単に一道具にすぎない。これから超知性の誕生に向けて頑張っていく。あらゆる生活シーン、インフラ、これが情報ネットワークで結ばれるという時代になる」と意気込みを語った。

ロボット企業を買収、血液検査でがんの発見を

 スマートフォンやPCに続く新たなデバイスも1つとして孫氏が注目をするのが「ロボット」だ。パーソナルロボット「Pepper」の展開はおなじみだが、ソフトバンクグループは6月に、4本足で動くロボットを開発すする米ボストン・ダイナミクスを買収。孫氏は同社を「世界で最も進んだロボット企業。腕だけが動くようなロボットとは程遠いくらい、多彩な能力を持つ」と高く評価する。

ソフトバンク ボストン・ダイナミクスが開発したロボット。テーブルや階段を上るといった動きも難なくこなす

 他に、ソフトバンクグループは、血液検査でがんをはじめとする病気の診断サービスを提供している米ガーダントヘルスにも出資。従来の細胞を摂取するがんの生体検査だと、痛みを伴い、コストが高いといったデメリットがあったが、血液検査ならより安全で、がんの早期発見ができる。この血液検査でもビッグデータと人工知能を活用し、ガーダントヘルスは、5年以内にがん患者100万人の解析を目指している。

ソフトバンク ガーダントヘルスが開発している、血液検査による診断
ソフトバンク ビッグデータと人工知能を活用してがんの早期発見につなげる

孫氏の後継者は10年以内に

 当日の孫氏は風邪気味で、説明中にせき込むシーンが何度か見られた。それでも「熱なんか関係ない」とどこ吹く風。「今、人生が楽しくてしょうがない。朝が来るのが待ち遠しい。引退なんてしていられない」と、衰えることのない情熱を語った。では孫氏の後継者はどうなるのか?

 孫氏は「気心が知れて、同じ方向で経営を引っ張ってくれる。能力も人格も優れている人物を後継者に指名する」と言うが、今すぐというわけではなく、「10年掛けて探していきたい」とのこと。後継者発掘と育成を目的とした「ソフトバンクアカデミア」は何だったのか……という声も聞こえてくるが、もう少し先、3代目以降の後継者育成が狙いのようだ。

 「アカデミアは続けて数年経過したが、やってよかったと思っている。そのメンバーが、グループの中で役員や社長として続々と活躍している。ただ、今すぐ後継者にと目を付けている人はいない。直近の2代目は、すでに活躍している経営陣から選ばれる」(孫氏)

 「知識や経験、思考パターン、志を教え込んだ人工知能を後継者に据える可能性は?」と株主から聞かれると、「人間の集団を率いて人間に貢献するという意味で、生身の人間に後継者になってもらいたい」と孫氏は答えた。2016年の株主総会でも話題になった、Pepperが次期社長になることはなさそうだ。

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