ARM買収で「圧倒的世界一を取れた」、下り200Mbpsの次世代衛星通信で「通信革命を」――孫社長

» 2017年02月08日 23時15分 公開
[田中聡ITmedia]
ソフトバンク決算 ソフトバンクグループの孫正義社長

 「ARMを買って良かった。心の底から喜びをかみしめている」――ソフトバンクグループの孫正義社長は、2016年度第3四半期の決算会見であらためて語った。

 「ARM買収前のソフトバンクは、ユーザー数が日本で3位、米国で4位の通信会社でしかなく、“圧倒的世界一”を誇れるものはなかった。ARM(の買収)で初めて、最も重要な事業セグメントで圧倒的1位を取れた」と語り、ARM買収がソフトバンクグループにとって大きなステップアップになったことを強調した。

 スマートフォンの99%以上にARMのチップセットが採用されており、2016年の9カ月間で125億個のチップが出荷された。「世界の人々が、1年間で2個以上ARM(を採用した製品)を買った形になる。ライフスタイルに完全に浸透してきている」と孫氏。同氏は現在のARMは「序章だ」とし、次世代の“ARM 2.0”の準備を始めたところだという。「直接、深く関わって、戦略とビジネスモデルを作っている最中」(孫氏)

ソフトバンク決算 ARMベースのチップの出荷数は年々増加している

 世界のテクノロジー企業への出資を目的としたファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の狙いについては、「300年間成長するための重要な構え」とした。孫氏は「確実にこのファンドは組成される、現実味が出てきた」と話した。

 日常生活のあらゆるものがインターネットにつながる「IoT」の世界では、孫氏は90%のデバイスにARMベースのチップが使われるとみる。「さまざまなテーマの分野で、人間の知能をチップが超えていく。医療、自動車、街のインフラなど、あらゆる産業が再定義される」

 その変革期にソフトバンクグループが深く関わるために設立したのがソフトバンク・ビジョン・ファンド。「それぞれの分野で世界一になりそうな会社が、連合体としてシナジーを出していく。全世界のベンチャーキャピタルを足した規模よりも大きい」(孫氏)

ソフトバンク決算 IoT時代では、さまざまなモノにARMベースのチップが搭載される

ワンウェブの次世代衛星通信で人口カバー率100%に?

 米国のベンチャー、ワンウェブ(One Web)に10億ドルを出資した件についても、孫氏は詳しく説明した。

 ワンウェブが手掛けているのが、低軌道衛星を利用した高速通信サービス。既存の静止衛星(3万6000km)よりもはるかに低い1200kmに720基以上の衛星を設置することで、世界中に低遅延の通信サービスを提供できるという。通信速度は下り最大200Mbps、上り最大50Mbpsで、飛行機や車などに設置したワンウェブのアンテナを経由して、スマートフォンで通信する。

ソフトバンク決算 ワンウェブ(One Web)の、低軌道衛星を利用した通信サービス
ソフトバンク決算 サービスのイメージ。車に設置したアンテナを経由してスマホで通信する

 孫氏は「世界中のキャリアは、(人口カバー率の)5〜10%は諦めているが、(ワンウェブのサービスは)衛星なので最後の0%までつながる。山でも郊外でもどこでもつながる」と期待を寄せる。商用化すれば、人口カバー率100%も夢ではないかもしれない。

 ワンウェブのサービスを低コストで運用できる点も評価。「携帯キャリアは(設備投資に年間)1兆〜2兆円を使っている中、ワンウェブは1年間の設備投資と固定費は1000億円ちょっと。これで通信革命をもう一度起こす」と孫氏は意気込んだ。

※「人工カバー率」→「人口カバー率」に訂正いたしました(2/9 1:00)。

国内通信事業は好調だがARPUはマイナスに

 国内通信事業も好調で、営業利益は前年比で9%増、ソフトバンクの累計回線数は前年比54万増の3223万となった。ただしARPUは前期比で190円マイナスの3980円に。この点を問われた孫氏は「各社が競争し合うと、ARPUは常にマイナスになるというプレッシャーがある。同じサービス、同じ内容なら、価格を安くする力が働くのは当然のこと。単に価格を下げるだけだと収益も下がるので、サービスを増やしてメニューを多様化する必要がある。動画も含めて通信のボリュームが急激に増えているので、単価は安くなるが(たくさんのデータ)量を提供する。そういう努力をし続けないといけない」と語った。

ソフトバンク決算 2016年度第1〜第3四半期の業績
ソフトバンク決算 国内通信事業の営業利益
ソフトバンク決算 累計契約数はY!mobileスマートフォンの契約数が好調で、前年比で増加した

 ヤフーとの連携も強化し、「Yahoo!ショッピング」と「LOHACO(ロハコ)」で買い物をすると、ソフトバンクユーザーのTポイントが10倍たまるキャンペーンを2月1日から5月31日まで実施中。孫氏は「速報レベルだと、非常によい結果が出始めている」と手応えを語った。

 ソフトバンク光の累計契約数は、前年比2.6倍の314万となった。

Sprint事業は「米国でもまれにみる大反転」

 孫氏が「直近で一番難しかった事業」と語る米Sprintについては、2014年度までは赤字だったが2016年度(第1四半期〜第3四半期)には13億ドルの営業利益を上げ、孫氏は「アメリカの歴史でもまれに見る大反転」と胸を張る。Sprintが、今やソフトバンクグループの成長をけん引するまで成長したことから、「ARMを買収する、また10兆円規模の投資ファンドを作る決断ができた」と孫氏は振り返った。

ソフトバンク決算 Sprintの営業利益は大きく改善した

 孫氏は現在も毎週、Sprintのチーフネットワークオフィサーとして、ネットワークの設計や進ちょくをチェックしており、「(米国の通信キャリアで)一番少ない設備投資で、一番早く、激しくネットワークを改善した」と話す。「(Sprintネットワークの)信頼性はもうじき1位になる。ソフトバンクのネットワークは世界で一番つながる」と豪語した。

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