孫社長が語る米国戦略 2019年に2.5GHz帯の5Gサービス開始、T-Mobileの買収意欲が再燃

» 2017年05月10日 21時32分 公開
[田中聡,ITmedia]

2.5GHz帯で2019年に5Gサービスを開始

孫正義 ソフトバンクグループの孫正義社長

 ソフトバンクグループ、Sprint、Qualcommの3社は、2.5GHz帯(Band 41)での5G通信システム技術を共同で開発することを発表した。2019年後半に、5Gに対応した商用サービスと端末を米国で提供する予定。

 ソフトバンクグループの孫社長は、5月10日の決算会見で「今朝、QualcommのCEOと合意を交わして非常に興奮している。画期的なニュースだ」と報告。「Sprintが5Gで最も優れた電波と、最も先進的なネットワークを、誰よりも早く大規模で作る」と意気込みを語った。

 5Gでは主に、3GHz以降の高い周波数帯と、数100MHz〜1GHz以上の広い周波数帯域が使われるが、高い周波数帯だと屋内に電波が浸透しにくいという問題がある。「屋内で80%のデータ通信が発生するので、外だけではダメ。そこ(屋内)にいかに浸透させるかがカギになる。(Sprintは)2.5GHz帯を使うので、圧倒的に有利だ」と孫氏は自信を見せる。

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 なお、ソフトバンクは日本でもWPC(Wireless City Plannning)から帯域を借りる形で2.5GHz帯での通信サービスを提供しているが、日本での展開については言及しなかった。Sprintの通信事業では、孫氏はチーフ・ネットワーク・オフィサーとして深く関わり、日本で培ったノウハウも導入してきた。「ソフトバンクとSprintが、お互いに技術で刺激し合う」(孫氏)関係になり、日本のソフトバンクにも好影響を及ぼすことが期待される。

 孫氏のコミットが功を奏し、Sprintのネットワークは右肩上がりで改善されている。2016年下期の音声通話のパフォーマンスは、Verizonに告ぐ2位になり、大都市圏に限れば1位となった(RootMetricsの調査)。

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 データ通信については2.5GHz帯に「HPUE(High Power User Equipment)」という技術を導入。スマートフォンなどユーザーが使う端末の電波の出力を上げることで、基地局からの電波が届きやすくなり、より広いエリアをカバーできるようになる。HPUEによって、1.9GHz帯の99%を、2.5GHz帯でカバーできるようになったという。

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 さらに、米国ではスモールセル(小型基地局)を設置して、カバレッジの拡大に取り組んでいる。その一環として、「Magic Box」と呼ばれる小型基地局を、ビルや住宅の窓際に設置する実証実験を主要6都市で行ったところ、Web閲覧、ファイルダウンロード、YouTubeアプリなどのテストで、5地域で1位を獲得した。このMagic Boxの取り組みは「全米で展開していく」(孫氏)とのこと。

ソフトバンク 屋外は基地局、屋内はMagic Boxがカバーし、満遍なく電波が届くよう工夫した

T-Mobileの買収意欲が再燃

 米国のトランプ政権下では、携帯業界再編の障壁が低くなったと言われている。孫氏は「新しい政府では、少なくとも前政権よりも業界再編が開かれた。以前の政権では全く聞く耳なしで、ビジネスに対して非常にやりにくいと不満を持っていた。業界再編についてもいろいろな可能性があると受け止めている」と前向きに捉えている。

 オバマ政権下では米連邦通信委員会(FCC)にT-Mobile買収を却下された経緯があるが、規制緩和によってT-Mobile買収の可能性が再浮上した。孫氏は「シナジーが即出るのは、最初に(買収の)思いを持っていたT-Mobile。T-Mobileがオーソドックスな本命であり、誠実に交渉に持っていきたい」と意欲を見せた。

国内事業はトータルでARPUを増やす

 国内のソフトバンクとY!mobileを合算した契約数は、2016年度はほぼ横ばいで、2015年度第4四半期から2016年度第4四半期の純増数は36万にとどまった。その一方で「ソフトバンク光」は、モバイル事業よりも契約数が伸びており、契約数は2015年度第4四半期の172万から、2016年度第4四半期は359万に伸びた。

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 Y!mobileも好調だが、毎月の料金がソフトバンクよりも安いため、ARPU(1ユーザー当たりの売り上げ)は下がってしまう。この点について孫氏は「Y!mobileの方がARPUは少ないが、光ファイバー(ソフトバンク光)のバンドルや、コンテンツ、サービスのトータルでARPUを増やしていきたい」とした。

営業利益1兆円超えでも「全く感動がない」

 2016年度の営業利益は1兆260億円(前期比13%増)、純利益は1兆4263億円(前期比201%増)。営業利益が1兆円を超えたのは、国内ではNTTグループとトヨタに続く3社目。なお2013年度もソフトバンクの営業利益は1兆円を超えたが、これはガンホーとウィルコムの子会社化に伴う一時益を計上したため。「今度は実力ベースで1兆円」と孫氏。「営業利益1兆円超え」は、孫氏が以前から掲げていた目標の1つだったが、「不思議と全然感動がない。通過点にすぎない」とさっぱりした様子。

ソフトバンク ソフトバンクグループの連結業績

 それよりも孫氏が熱弁したのは、「金の卵」の話。これは2014年の決算会見で孫氏が紹介したもの(関連記事)。イソップ寓話(ぐうわ)の「金の卵を産むガチョウ」を例に出し、「ソフトバンクは金の卵を産むガチョウである」という前提で、金の卵よりもガチョウの方が価値がある、という持論だ。

 金の卵はソフトバンクが投資した企業のことで、これらの企業の成長を支えてきた。その結果、2017年5月時点でのソフトバンクの株主価値は17兆円にまで上がった。「この2年間で借金を増やしたが、これはガチョウにとっての餌代。餌をたくさん与えた結果、ソフトバンクが持っている企業群の時価が2年前の18兆円から25兆円に増えた。決してマイナスではない」(孫氏)

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