“SoftBank 2.0”で「世界のソフトバンク」に――情報革命のカギを握る3つの分野

» 2015年06月19日 21時17分 公開
[田中聡ITmedia]

 「SoftBank 1.0」から「SoftBank 2.0」に――。ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、6月19日に開催された第35回定時株主総会で、これまでの日本中心のビジネスを海外中心にすることを宣言した。そして孫氏の後継者として、Googleの筆頭経営者だったニケシュ・アローラ氏を指名し、株主総会での承認を得て代表取締役副社長に就任した。

photo ソフトバンクの孫正義社長
photophoto 海外に資産を持つ日本の通信企業から、世界で影響力のあるプレーヤーになる

ビジネスでは市場、アイデア、チームの3つが重要

 孫氏は「100%の子会社を世界各国に作って、ソフトバンク流の事業を行うよりは、それぞれの国にいる野心あふれる起業家とともに、その事業をパートナーシップで展開したい」との考えを話す。その際にカギを握るのが的確な「市場」「アイデア」「チーム」の3つ。

 孫氏が注目している市場は「中国」と「インド」だ。「あと5〜6年で、中国のGDPはアメリカを抜いて世界最大になると予想したので、2000年にアリババに投資し、中国で積極的な事業を開始した。同じように、インドがアメリカを抜く時期もやってくると信じている。中国とインドが世界の1、2位を争う時代がやってくる」(孫氏)

photo 的確な地域と業界に長期投資をする

 「どんなビジネスモデルと分野で、どんな技術を用いてナンバーワンになるのかを考えないといけない」と孫氏はアイデアの重要性も説く。そうしたアイデアを具現化して実現するためには、起業家を囲む的確なチームが重要になる。そして孫氏はソフトバンクを大企業にするのは恥でさえあり、あくまで「野心的、革新的、挑戦者である起業家集団でありたい」とこだわる。

photo ビジネスモデル、製品、需要に対するアイデアをどれだけ生み出せるかも重要になる
photo 起業家を囲むチームもカギを握る

 今後は革新的な起業家との協業をいっそう進めるとともに、事業価値を最大化し、さらなる厳選投資を行うことを目指す。

IoT、AI、スマートロボットに注力する

 ソフトバンクが理念として掲げている「情報革命で人々を幸せに」を実現するにあたり、同社は「IoT(モノのインターネット)」「AI」「スマートロボット」の3つの分野に注力していく。

 IoTは、あらゆるモノがインターネットにつながることを示す言葉だが、この流れがさらに加速することは、疑う余地はないだろう。

 「今、1人あたり平均2台の電子機器がインターネットにつながっているが、今から30年後には、1人あたり1000台がつながる。例えばユニクロのシャツやズボン、ベルト、下着ですら、ネットにつながる。スマートフォンから湯沸かし器に命令できる。そんな時代が来ると信じている」と孫氏。こうした時代が来たときに「ソフトバンクグループが革新的なテクノロジー、サービスで、世界中の人に情報革命を提供していきたい」と同氏は意気込んだ。

photo 2040年には、1人あたり1000台強のデバイスが通信可能になる?
photophoto IoTの世界では、クラウドヘルスモニター、スマートウェア、アプリ操作ケトル、スマートテニスラケットなど、さまざまな製品が生まれそうだ

 AI(人工知能)については、ソフトバンクはIBMが開発した質疑応答システム「Watoson(ワトソン)」との協業を発表している。孫氏は今後「あらゆるものが、人工知能で開発されてサービスが提供される」と予測する。2018年には、人間の脳細胞の数(300億)をトランジスタが超えると言われており、「人工知能が著しく伸びていく。同時通訳で、何カ国語でも、それぞれの国の言葉で翻訳できる」と孫氏は期待を寄せる。

photo AIの分野も強化していく
photo 2018年には、トランジスタが人間の脳を超えるとされている

 AIの発達に伴い、このAIを搭載したスマートロボットの市場も伸び、「30年後には、ロボットの台数が100億を超えて、自動車よりもはるかに大きな市場になる」と孫氏は考える。ソフトバンクが6月20日に販売開始するパーソナルロボットの「Pepper」はその筆頭といえる存在で、すでに「100件ほど特許を出した」(孫氏)というほどの技術をつぎ込んだ。

photo 2040年には、ロボットの数が世界の人口を超える?

 「(Pepperは)単に動く、しゃべるのではなく、心を持ったロボット。自らの意志で行動し、しゃべり、考え、家族を幸せにするために行動する。例えばニュースを自分で検索し、地震や火山の噴火があったら『大丈夫かな』と心配する。天気予報を見ながら『今日は傘を忘れないで』と語りかけてくれる」(孫氏)

photo ソフトバンクはスマートロボットの開発にも注力する

 「SoftBank 2.0で、ソフトバンクはこれから数世紀、300年にわたって伸び続ける、世界的な企業になっていきたい」と孫氏は熱く語った。

質疑応答で孫氏が吹いた新しい大ぼら

photo 株主からの質問に答える孫氏

 株主からの質問は、孫氏の考えに感銘を受けたことや、事業内容についてのリクエスト、素朴な疑問など、さまざまな声が挙がった。

 「iPad miniを使っているが操作の仕方が分からない。ショップに聞いてもなかなか分からない」という指摘に対しては「教育はさらに強めていきたいが、根本的には、説明をしなくても分かるような製品、サービスにしていくことがより重要だと思っている。そのためにも、人工知能でお客様により自発的に使い方を促す会話型でやれるようにしたい」と回答した。

 「役員報酬の制限(8億円)を撤廃してほしい」とのリクエストには、「ニケシュの年俸は、Googleでは数十億円(その中でも上の方)だった。ソフトバンクに来なくても大金持ちだったが、あえて来てくれた。まさか決心してくれるとは思わなかったが、『世界のソフトバンク』になるには、世界の優れた経営陣が続々と集まる環境にしていかなといけない」と話し、「宮内ちゃんの給料も上げるからね(笑)」と、宮内謙氏の報酬アップを約束(?)した。

 「シャープやソニーを買収して、大きな日本の家電メーカーとしてソフトバンクグループで復活させてほしい」という提案には「一言でもコメントすると明日の記事になってしまうので……」と孫氏も苦笑いするしかなかった。

 Sprintの米国事業については「ネットワークが一番にならないといけないと思っている」と決意を述べる。「昨日も、夜10時からトップ技術者20人〜30人で、ずっとネットワークの設計と、具体的な方法論を打ち合わせていた。(打ち合わせは)だいたい夜の2時ぐらいまで毎晩続いているが、新しいネットワーク設計は、相当いいものができた。難しい局面に追い込まれると、心が燃えてくるタイプなので、いい結果が出てくることが多い」と自信をのぞかせた。

 ニケシュ氏を後継者に指名した理由については「米Yahoo!がMicrosoftに検索事業を売却したときに、Yahoo!Japanの検索エンジンにGoogleのエンジンを使うことを決めた。そのときの交渉相手がニケシュだった。その過程でいろいろな条件交渉をしたが、真剣勝負をする中で『ただ者ではない』と心から思った。ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズたちと同格レベルだと感じた。彼の人格、洞察力、インターネットの情報革命に対する情熱など、複合的に深く感銘を受けてほれ込んだので、口説き落とした」と話した。

 「2010年に『新30年ビジョン』を発表したときには『大ぼらを吹く』とおっしゃっていたが、SoftBank 2.0がスタートした今日の大ぼらをいただきたい」とのリクエストには「あの時点では、30年以内に時価総額で世界のトップ10の200兆円くらいにしたいと大ぼらを吹いたが、その大ぼらをなんとしても実現させたい」と語り、「大ぼらの実現=大ぼら」とした。

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