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» 2017年11月15日 06時00分 公開

バラして見ずにはいられない:ワイヤレス充電対応で中身が大きく変わった「iPhone 8/8 Plus」 (1/3)

「iPhone 8/8 Plus」はワイヤレス充電に対応した初めてのiPhone。これに伴い、中身も大きく変更されている。また、一部のiPhone 8/8 Plusでバッテリーが膨張するという報告があったようだが、この原因についても考察したい。

[柏尾南壮(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ),ITmedia]

 日本が世界に誇る戦艦「大和」。その最高速度は27ノット(約50km)であった。どのフネにも速度の限界はあり、そこから先は搭載兵器で勝負する。戦艦大和の武器は約1.5トンの砲弾を40km先まで飛ばす主砲だった。東京から横浜を超えて大船あたりまで届く距離だ。

 AppleのiPhoneがさまざまな意味で世界最高峰であることは多くの人が認める。最新技術の粋を結集した小型電子機器の頂点であり、価格も同様だ。乗り物でいう「最大速度」に達したといえるだろう。販売価格上昇にも限度があるし、現在利用可能な機能はほぼフル装備だ。これはAppleだけでなく、韓国Samsung Electronicsや日本のソニーモバイルなど、多くの高級スマホメーカーの到達点でもある。

 その中で、Appleが勝負に出た「新兵器」にはどんなものがあるか、分解しながらご案内する。

iPhone 8/8 Plus 外観写真。iPhone 7/7 Plusで印字されていた総務省の技適マークは姿を消した

電子部品に「MEMS」を搭載、そのメリットは?

 日本で発売された「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」に初めて搭載された電子部品にMEMS(Micro Electric Mechanical System)ベースのタイミングデバイスがある。タイミングデバイスとは、ICの動作周波数や無線通信の交信周波数を定義する役割を持つ。さまざまな部品を調和よく動作させる指揮者のような存在だ。2016年までこの部品は水晶をベースにしたものだったが、2017年からMEMSベースの製品1個が採用された。米国カリフォルニアに本社を置くSiTime(2014年に日本のメガチップスが買収した)の製品である。

 MEMSの利点は、ICと同じくシリコンで作るため、ICのモットーである大量生産や小型化がしやすい点である。事実、iPhone 8/8 Plusに搭載されたMEMSベースのタイミングデバイスを水晶ベースの部品と比較すると、横幅はほぼ同じだが、縦サイズはMEMSの方が半分強だ。現在は水晶より値段が高いなどの難点もあるが、採用製品が増えるにつれて価格も下がり、課題の1つとされている精度も次第に向上するだろう。

ワイヤレス充電対応で大規模工事が行われた

 ワイヤレス充電はコードレスで充電できる便利な機能だ。これまでのiPhoneはボディーがディスプレイ面を除き皿のようなアルミ合金で覆われていたため、ワイヤレス充電は使えなかった。Appleがワイヤレス充電を搭載するために行った設計変更は、まさに「大規模工事」といえる。従来は一枚皿だったところを、iPhone 8/8 Plusでは、ボディー周囲を巡る「フレーム」、電子部品を固定する「底板」、そして背面の「フタ」に分割した。

 iPhone 8/8 Plusのフレームにはアルミニウムが使われている。底板は、薄いステンレス板にワイヤレス充電アンテナ用の穴を空け、強化ガラスでフタをした。製造原価については諸説あるが、原価は50米ドルといわれている。アルミ合金製ユニボディーと比べるとアルミ合金の面積や加工エリアは減り、より安価なステンレス板や強化ガラスが使われているため、安くなったという見方がある一方、部品が増えれば組み立てコストが増すため、あまり変わらないという見方もある。

iPhone 8/8 Plus 分解したところ。右端の2枚が本体下部。ワイヤレス充電を実現するため大規模工事を行い、大きく構造が変わった
iPhone 8/8 Plus メイン基板通信部。銀色のチップは、電磁波対策のため、チップ表面に金属を塗布(塗布の仕方はさまざまある)していることを示す
iPhone 8/8 Plus A11プロセッサ。ICの設計はAppleで、製造は台湾の半導体製造受託会社TSMC製。Samsungに続き、10ナノメートルFinFETと呼ばれるプロセスを採用した
iPhone 8/8 Plus 通信ICは米Qualcommの「WTR5975」。iPhone 7/7 Plusでは2個使用されていたが、iPhone 8/8 Plusでは性能はそのままに1個に統合された。1個あたりの単価は約5ドルといわれており、員数減少によるコスト削減効果が大きい
iPhone 8/8 Plus iPhoneの部品総数は約1300個。そのうち、砂粒のように見える受動部品が約1000個ある。そのうち、日本メーカーしか量産できないといわれる極小サイズは約400個。この時点で全部品の4分の1以上は日本製ということになる
iPhone 8/8 Plus iPhone独特の振動モーター「Taptic Engine」。重りが横滑りするタイプ。iPhone 7/7 Plusまでは日本電産と中国AACが生産していたが、今回はアルプス電気もサプライヤーに加わった
iPhone 8/8 Plus iPhoneには13組のコネクターがある。そのほとんどが日本メーカーの製品。京セラ、航空電子、ヒロセ電機、第一電子工業などが採用されている
iPhone 8/8 Plus カメラのフィルムに相当するCMOSイメージセンサーは全量をソニーが供給している。またオートフォーカスや光学式手ブレ補正機構などはアルプス電気、ミツミ電機、TDKなどが担当しており、日本が得意とするカメラ技術が広く採用されている
iPhone 8/8 Plus Apple Watchや2016年の一部iPhoneでは採用されていたが、日本で発売されるiPhoneとしては初めてMEMSベースのタイミングデバイスを採用した。2個ある部品のうち、下の黒い方がMEMS。横幅は同じだが縦方向のサイズが小さいことが分かる
iPhone 8/8 Plus
iPhone 8/8 Plus iPhoneには多くの穴があり、水やホコリが浸入する。防水・防塵(じん)を確保するため、開口部をガスケット(パッキン)や防水シートでふさぐ方式が採用されている。この他にも、完成した端末を特殊なガスに浸して撥水(はっすい)性を実現する方法もある
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