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» 2018年01月15日 06時35分 公開

石野純也のMobile Eye:AT&TがMate 10 Pro採用をドタキャン 日米で明暗分かれたHuaweiのキャリア戦略 (1/3)

スマートフォン市場で着実にシェアを伸ばしているHuaweiだが、課題も残る。キャリア市場での存在感がまだ小さいというのはその1つだ。現状、「キャリア市場への進出」は、日米で明暗がクッキリ分かれる結果となった。

[石野純也,ITmedia]

 スマートフォンの出荷台数で、世界第3位のHuawei。今の成長率を考えると、Appleの定位置であった2位の座を奪う日も、そう遠くはないだろう。端末自体にも磨きがかかっており、特にPシリーズやMateシリーズなどのフラグシップでは、業界のトレンドをリードするようになりつつある。

Huawei CEOのリチャード・ユー氏がCESで基調講演を行うなど、業界内での存在感が増している

 ただ、課題も残る。キャリア市場での存在感がまだ小さいというのはその1つだ。特に米国や日本など、キャリア経由で販売されるスマートフォンの比率が高い国を見ると、Huaweiは十分な力を発揮できていない。米国、日本ともにキャリア市場は全体の9割程度といわれるだけに、シェアを上げていくうえで、攻略は必須といえるだろう。実際、日米両方で、同社はキャリアへのアプローチを続けている。

 現状、「キャリア市場への進出」は、日米で明暗がクッキリ分かれる結果となった。日本では、auが初のHuawei製スマートフォンとなる「nova 2」の取り扱いを表明。キャリア市場での取り組みも、さらに強化していく方針だ。これに対し、米国では「Mate 10 Pro」のキャリアへの導入に失敗し、出ばなをくじかれた格好だ。

AT&Tでの取り扱いが中止に、厳しい船出となった米国のMate 10 Pro

 もともとMate 10 Proは、米キャリアでシェア2位のAT&Tが取り扱う予定だった。交渉は順調に進んでいたといい、1月8日(現地時間)に米ラスベガスで開催されるCESの基調講演が、発表を行う“晴れの舞台”に選ばれていた。

 ところが、直前でこの契約がAT&Tから白紙撤回された。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、同講演の前日にこれをスクープ。Huaweiの端末部門を統括する、コンシューマー・ビジネス・グループのCEO、リチャード・ユー氏も、「新聞報道でご存じかと思いますが、ここではキャリアとのパートナーシップを発表する予定だった」と、事実関係を認めた。

Huawei 米国向けの価格発表を行うユー氏。本来、ここではAT&Tのロゴが大写しになっていのかもしれない
Huawei ユー氏は基調講演の最後に、キャリア市場に参入できなかったことを「キャリアやわれわれだけでなく、消費者にとっての損失だ」と語った

 Mate 10 Proがキャンセルされた理由は不明だ。安全保障上のリスクを懸念する米国政府から圧力がかかったという説もあるが、あくまで臆測の域を出ていない。過去、米国ではHuaweiにスパイ疑惑がかけられたこともあったが、これはインフラ部門での話。十分な証拠も挙がっておらず、Huawei自身も、これに対しては明確に反論している。

 Huawei自身は、その理由をセキュリティやプライバシーにあったと考えていたのかもしれない。ユー氏の基調講演は、さながらMate 10 Proの製品発表会という趣だったが、グローバルや日本での発表と比べ、セキュリティやプライバシーについての解説に時間が多く割かれていた印象を受ける。

Huawei
Huawei
Huawei 商品発表のような体裁の基調講演だったが、通常以上に、セキュリティやプライバシーに関する説明に時間が割かれた

 ユー氏いわく、Mate 10 Proは「業界最高水準のプライバシーやセキュリティを備えたスマートフォン」。OSは米国に本社のあるGoogleのAndroid。その上に載るクラウドサービスもGoogleのもので、「170以上の国や地域で販売されている実績もある」(ユー氏)。さらに、ゲストとして、Googleアシスタントのエンジニアリング担当VP、スコット・ハフマン氏が登壇。「Mate 10 Proはファンタスティックなスマートフォンだ」と評し、Huaweiに援護射撃を送った。

Huawei 利用するサービスはGoogle、つまり米国のサービスであることを強調した
Huawei ゲストに登壇したGoogleのハフマン氏も、Mate 10 Proを絶賛した

 Huaweiの米国における状況は、日本より厳しい。SIMロックフリーモデルの端末は販売されているが、米国は「9割がキャリア市場で、キャリアが扱わないと、消費者に行き届かない」(ユー氏)国だ。一方で、人口の多さや所得水準の高さなどが相まって、全体の市場規模は日本を大きく上回る。シェア1位、2位を目指すHuaweiにとって、避けては通れない市場なのだ。その意味で、AT&Tの“ドタキャン”はHuaweiにとってかなりの痛手になりそうだ。

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