冬春モデル、auが充実でドコモが控えめなのはなぜ? 分離プランや5Gの考え方に違い石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2019年10月12日 15時18分 公開
[石野純也ITmedia]
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5G時代を先取りしつつ、ミドルレンジを大幅に拡充したau

 対するauは、スマートフォンだけで9機種と、豪華なラインアップを取りそろえた。目玉としてGalaxy Foldを据えつつ、ドコモが採用した5機種に加え、ミドルレンジモデルはXperia 8や「AQUOS sense3 plus」まで採用。シニア向けスマートフォンの新モデルである「BASIO4」もラインアップに加えた。

 豪華なラインアップになった背景について、KDDI広報部は「ラインアップは市場やお客さまのニーズに即して投入するものであり、適正なモデルを適正なタイミングで投入した」と語る。具体的には、5G時代の世界観を先んじて提示しつつも、10月1日の電気通信事業法改正を踏まえ、ミドルレンジモデルを拡充した格好だ。

 ラインアップをよくよく見ていくと、Galaxy Fold以外のハイエンドモデルはドコモと同じだが、“目玉”があることで先進性を上手に印象づけることができている。KDDIが「5G時代を見据えた『au UNLIMITED WORLD』にふさわしい、最新技術による折りたたみスマホを独占販売する」と語っていたように、Galaxy Foldの導入は、5G時代の世界観を先取りしてユーザーに見せる狙いがあったようだ。

ドコモ ハイエンドモデルはGalaxy Foldを除くと、ドコモと同じ端末

 あくまで世界観であり、実際に5G対応モデムが載っているわけではないのは少々残念なところだが、フォルダブルスマートフォンにはメーカー各社が取り組んでおり、高速・大容量が特徴の5Gでコンテンツが精細化した際の受け皿になることが期待されている。上記のように、ドコモの吉澤氏が「注目している」と語ったのはそのためだが、販路限定ながら実際に取り扱うことで注目を集めたという点では、KDDIが1枚上手だったといえる。

ドコモ フォルダブルスマートフォンのGalaxy Foldは、直営店などに販路を限定して販売する。5Gの世界観を見せるための、話題作りの側面も強い

 対するミドルレンジモデルは5機種と、価格帯を細かく分け、充実したラインアップを取りそろえた。背景には、やはり10月1日に実施された電気通信事業法の改正がある。KDDI広報部は、「電気通信事業法改正による分離プランの浸透に伴い、お買い求めやすく、使いこなしやすいミドルレンジモデルや、初心者向けのモデルを拡充した」と語る。

ドコモ ミドルレンジモデルは5機種と、価格帯別にバランスのいいラインアップを取りそろえた

 分離プランの導入は3社で最も早い2017年7月だったこともあり、ユーザーにもミドルレンジモデルが浸透している。年間を通して最も携帯電話が売れる2月、3月の春商戦に向け、割引がなくても手ごろな価格になり、売りやすいミドルレンジモデルを取りそろえておきたい意図もありそうだ。

 ここまで見てきたように、ドコモとKDDIのラインアップには、分離プランの浸透度や、5Gの世界観をどうユーザーに伝えていくかといったスタンスの違いが色濃く反映されている。新たな法規制と、次世代の通信方式導入の時期が非常に近く、キャリアにとって難しいかじ取りを迫られていることが伝わってくる。

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