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» 2004年03月12日 20時02分 公開

わかりたい人のための動画エンコード講:リッピングってナニ?〜Ripping Wrapping Made〜

今回のテーマは「リッピングとそれにまつわる世界について」。「何がイケなくて何がOKなのか」ということについて考えてみたい。本当は、こういう話をする時には法的な話に踏み込んで細かく解説すべきなのかもしれないが、それは他のどなたかにまかせることにする。

[姉歯康,ITmedia]

「リッピング」は悪くない?

「リッピング」という言葉はほとんど悪者扱いされている。ロクでもないこと(DVDの違法コピーやCDの違法コピー/配布)にばかり使われているイメージが強すぎるのだ。だが、もともと、リッピングという言葉は「切り裂く」とか「ひっぺがす」というような意味の言葉であり、

“Oh,come on ! Rip my stocking !”

というのが正しい使い方である。

 ……という本来の意味から考えると、おそらくは、「本来1枚のディスクに存在している情報を、デジタルデータとしてひっぺがして個別に保存する」といったことを意味しているというのが正解だろう。これを私的に利用する限りにおいては、まあ、悪いことではないだろう。扱いやすいようにしたい、ということもあるかもしれないし、単なるバックアップということもあるかもしれない。いずれにしても、この行為そのものは悪くないのだ。

「コピープロテクトの解除」がマズい

 では何がイケないのか? ズバリ、「コピープロテクトの解除」である。

 市販のビデオテープやDVDの多くには、ユーザーがコピーできないようにするための処置が施されている。このコピープロテクトを何らかのツールによって解除しなければ、リッピングすることができない。そこを解除するという行為が違法行為に該当する可能性があるのだ。

 人によってはこの「コピープロテクト解除」まで含めてリッピングととらえているようだが、私はそうは解釈していない。「リッピングはいいが、プロテクト解除はダメ」ということだと解釈している。

 だから、たとえばホロンのサイトのDa ViDeo 3のページなどを見ると、赤い文字で「プロテクトがかかっているものはダメよ」と書かれているのだ。

デジタルばかりが狙われるのなぜ?

 とはいうものの、誰かがこっそり解除ツールを作って、自宅でせっせとバックアップづくりをしている分には、取り締まられることもないはずだ。なぜ問題になるかというと、そうやって得たコンテンツが何らかの形で世に出ているからなのである。一番の問題はリッピングではなくて、「それを配布しようとするヤツがいる」という部分にある。

 たとえそれが商用目的でなかったにしても、その行為は、クリエイターなりレコード会社なりの著作権を侵害してしまうことになるのだ。

 これはデジタルだろうがアナログだろうが同じことで、品質の話を抜きにすれば、「CDをカセットテープに録音して配って歩くのはいけない」というのと同じレベルの話なのである(もちろん、実際にはそのテープを聴いてCDを買う人もいるという可能性はあるのだが)。

 それなのに、なぜデジタルのものばかりイケナいとされるのだろうか?

 よく言われるのが

  • 1.品質が劣化しないから
  • 2.コピー/加工が簡単だから

といったことである。

 1に関しては、確かにその通りなのだが、インターネットのやりとりでは、普通、リッピングされたものは、何らかのツールでエンコードされ、劣化した状態で出回る。当てはまらないコンテンツも多数存在する。

 それよりも、2だろう。コピーが簡単なだけでなく、インターネット経由で、あっという間に世界中にコピーが出回ってしまう可能性があるからこそ、著作権者が恐れているのだ。

■P2Pってナニ?

 デジタルでのやりとりの中でも、最も違法ファイルがやりとりされている場といえば、WinMXなどに代表されるP2P型のファイル交換である。

 P2Pとは「Server-Client」の関係に対して、「対等な立場同士でのやりとり」(Peer to Peer)を意味している言葉である。普通、Webページをブラウズしたりダウンロードをしたりという行為は、ユーザー(クライアント)がサーバにアクセスすることで成り立っている。P2Pの仕組みでは、そのサーバにぶらさがっている対等な立場の者でやりとりができることになる。

 そもそも、インターネット上の違法なファイルをすべて検出するというのは無理な話だが、これがP2Pのファイル交換でやりとりされているとなれば、なおさらである。ネットに接続される人はその度に違う。いろいろな人が接続し、様々なファイルが共有されては、別の人の手に渡り、今度は別のところで共有され……となってしまう可能性がある。

 そもそも、「ファイル交換」といっているが、これは物物交換のような「取り替えること」とは根本的に違う。人に与えても手元には残っているワケだから、「お互いに与え合っている」ことにしかならないのだ。

 ある意味では、非常に「インターネットっぽい」仕組みではあるのだが、ここに顔を出して著作権や肖像権(こちらはきちんと法律になっているわけではないが)に触れるものをアップロードしたり、ダウンロードしたりということ自体がマズい行為なのだ。

 ことわっておくが、P2Pはこういったファイル交換だけを示す言葉ではない。P2Pでストリーミング放送を共有するといった素晴らしい技術も存在するのだ。決してネガティブな用語ではない。

合法ファイルにも潜む問題

 ここまでは違法なものについての話だが、実は違法ではない、誰かにオーサライズされたものの配布にも問題がないワケではない。例えば、コンテンツの販売会社が「ネットワーク配信を始めました」といっても、そのことに納得していないクリエイター達もたくさん存在するのだ。

「馬鹿やろう、俺の美しい音楽をMP3なんかにクオリティを落として配信するんじゃねぇ」

「せっかく動きを表現したのに15フレーム/秒に落とされたんじゃ、台無しじゃねーか!」

「こんなダイジェストにするな!」

「こんなちっちゃい画面で俺の映像のよさがわかるか!」

 こういった意見がクリエイター側から出ることだってあるのだ。先の話で「デジタルは品質が落ちないから問題だ」という話だったが、今度は「品質が落ちると問題だ」という話である。

 それから、音楽に関して言えば、コピーを恐れるあまり、最近はCCCDという「CDに似た規格」も登場している。いろいろな考え方があろうが、ミュージシャンとして、自分の作った音楽がCCCDで出されることに腹を立てている人もいるのだ。例えばブライアン・メイ。ここの1月15日に、ブライアンは、主にリスナーに不便な思いをさせてしまうことに対して怒っている。さすが30年以上も髪型を変えない人である。説得力がある。さすが、30年前に5本指ソックスを履いていた人である。先見のメイがある……。

複雑に入り組む権利関係

 ただ、ここでブライアンが最後に言っているように、時には違法とも言えるやりとりが売り上げにつながることもあるから、それはそれでどうとらえたらいいのか、難しい問題ではある……。

 また、著作権とは別に、アーティストの肖像権、レコード会社やビデオ会社だけでなく、所属事務所の意向があったり、スポンサーの意向があったりと、一つのコンテンツの中でも権利関係は入り組んでいて、非常に難しいのである(ジャニーズ系のアーティストの写真がWebで出てこないのは、そういう事務所の意向によるものであり、それだけデジタルに気をつけているということであり、それだけ事務所が強いということでもある)。

 何を言いたいかというと、これだけいろんなところで、いろんな人が神経を尖らせている世界なのだということである。軽い気持ちで市販DVDのコピープロテクトを解除してリッピングして配布してしまったら、訴えられるのは一カ所からではないかもしれないのだ。あるいは、「アーティストに確認してOKが出たから公開したら、販売会社からクレームが来た」というようなこともあり得る。

 ……ということを理解した上で、コピープロテクトを外さないリッピングを行うのであれば、そのことには何も問題がない。それをエンコードして自分だけのために何十枚CD-Rに焼こうが、何も問題はない。

 まあ、中には、「好きだから広めたいだけなのに……」という純粋な思いで公開に走る人もあるだろう。そうであれば、その好きなアーティストなり監督の権利を守りながら広める方法を自分なりに考えていかなければならないだろう。

 今後もこの連載の中で、エンコードやらリッピングの話をしていくことになると思うが、今回はその前提となるお話をしてみた。決して悪の道への案内役ではないのです……。

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