本体手前のアームレスト部サイドが、滑らかに垂れ下がっている部分だ。これは設置面である机なりテーブルなりの表面が滑らかに持ち上がり、本体部へと連結するラインを生み出している。この点からも、「常時開けておくPC」という主張が感じられる。
アームレスト部手前の底面は、側面とは反対に、まるで設置面からすくい上げるかのような持ち上がり方をしている。このカーブは、それ自体がそう主張しているとおり、本体をAVパワーアップステーション(リプリケータ兼用)から持ち上げるときに、指をそこに滑り込ませて、すくい上げるように持ち上げることができる。そしてこのカーブが両脇の垂れ下がったラインと交差する部分、すなわち手前の両角に、従来のPCにはあるまじき複雑な立体形状を生み出している。
上から被さり、下からすくい上げるという形状のモチーフは、モノを包むという基本だ。最もプリミティブな例は、「手」である。例えば、手の中に壊れやすいものを包み込むような形を作ってみてほしい。蝶など捕まえたときのイメージだ。
これが人間が考え得る、「空間を閉じる」という、最も原始的な形なのである。type Aのボディデザインは、この「包む」という行為の最もプリミティブな形を表現していると言えるのではないか。
だがこのイメージの萌芽は、既に今年の春モデル、「バイオHX」の中に見ることができる。この筐体も、2個のコの字を組み合わせたものだ。奇しくもtype Aと、デザインキーワードはかなり近い。だがHXの場合はあまりにも角張っており、オーガニックな形状をしていなかったので、「手」の発想にはまったく気が付かなかった。
さらに言うならば、HXでは「黒の筐体部分の隙間から青いラインが光る」という、今回のVAIO第2章のデザインコンセプトを象徴する仕掛けもあったのだが、これもまた気が付かなかった。
この黒字に青のラインというデザインは、今後製品のパッケージなどにも生かされることになる。ま、言ってみれば、筆者はそれだけHXというモデルに興味がわかなかったということなんである。
デザインもさることながら、機能的な面でもtype Aは革新性が高い。注目すべきは、付属のAVパワーアップステーションとスピーカーだ。type Aラインナップには最下位モデルとして、これらが付属しない本体のみのモデル(VGN-A50B)もある。
だが筆者が思うに、type Aのコンセプトでこれらの付属品なしというのは、存在価値の70%を“捨てる”ようなものだ。
ポートリプリケータと言わず、あえてAVパワーアップステーションと名乗る理由は、従来であれば本体内に入れていたハードウェアを“外出し”しているからである。例えばTVチューナー一つ取ってみても、以前のバイオGRではポータブルテレビに使っていたような小型のユニットをPC本体内に内蔵していた。当然デスクトップ機のチューナーに比べれば、画質面で劣る。
だが今回のtype Aでは、チューナー部をAVパワーアップステーション側に出したため、デスクトップ機並みのちゃんとした?チューナーユニットが入っている。S/Nのような特性だけでなく、実用性の面でもその差は小さくない。
もう一つの見所は、AVパワーアップステーション内に、オーディオ用のデジタルアンプを格納した点だ。これは同社が大人のためのオーディオとして訴求する“Listen(リスン)”で採用されている、「S-Master」である。
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