NVIDIAがデモスイートでアピールする「今年の勝算」今週はCOMPUTEX TAIPEI 2004で右往左往した

» 2004年06月04日 19時55分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 COMPUTEX TAIPEI 2004は、台北世貿中心にある四つのホールが会場になっているが、そこにブースを出展せず、独自のプロモーションを展開する大手パーツベンダーもいくつか存在する。先日PCI Express対応ビデオカードのローンチイベントを大々的に行ったATI Technologiesもその一つであるが、そのライバルNVIDIAも会場にブースを設けず、その代わりに会場に隣接するビルに独自のブースエリアを展開している。

 大掛かりなイベントを行ったATIと異なり、このエリアで「静かに」デモスイートを行うNVIDIAだが、やはりCOMPUTEX TAIPEI 2004の開催に向けて、PCI Express対応のグラフィックスカードやMXM、nForce3 Ultraなどの重要な新製品群を発表している。デモスイートも「GeForce 6800 Ultra」などの新製品を中心に展示しているが、その一方で今年の主力GPUとして投入したGeForce 6800シリーズの出荷は、2003年のGeForce FX以上に順調でない。GeForce FXの出荷の不調はATIが大きく躍進した(それは、NVIDIAの失墜を意味する)原因の一つであるのは間違いない。

 はたして、NVIDIAはグラフィックスカードとマザーボードの市場でどのような戦略を練り、どのように体勢を立て直していくつもりなのか。デモスイートの会場で、デスクトップPCグラフィックス、ノートPCグラフィックス、チップセットの担当スタッフに聞いてみた。

「GeForce 6800 Ultraは本当に店頭に並ぶのですか」という失礼な質問にも笑顔で答えてくれた、デスクトップGPUプロダクトマネージャーのジェイソン・ポール氏

 デスクトップGPUで、ユーザーがまず気になるのが「果たしてGeForce 6800ファミリーは店頭に並ぶことがあるのだろうか」ということ。この疑問について、Product Managerのジェイソン・ポール氏は「最初に製造した分については、OEMなどにほとんど回ってしまってコンシューマー市場に供給する分を確保できなかった。そのため店頭に並ぶのが遅くなったように見えたかもしれない。まだ、はっきりとした日程は話せないが、6月後半からはコンシューマー市場にも十分な数が供給できる」と答えてくれた。

 6月末から日本のユーザーもGeForce 6800シリーズを「安心して」購入できることが分かったところで、先のことに目を向けてみよう。GeForce FXのPCI Express対応させた製品をすべてのレンジで発表したように、NVIDIAのデスクトップPC向けグラフィックスカード戦略も「これからは、PCI Expressがメインになっていく。我々もトップからボトムまでカバーする予定だ」(ポール氏)

「GeForce 6」シリーズのPCI Express対応についても「インテルと同じタイミングで出荷するつもりで、GeForce 6800がカバーするハイエンドより下のレンジに対応する製品も出していく予定だ」と、Paul氏はミドルレンジからバリュークラスに向けたGeForce 6シリーズが登場することも明らかにした。

「NVIDIAはPCI Expressへの移行を2段階で進めていく。第一段階はGeForce FXファミリーとGeForce 6800でPCI Express対応製品を投入し、第2段階ではGeForce 6800ベースでPCI Expressに正式に対応していく」(ポール氏)

 ミドルレンジとバリュークラスのGPUでも、GeForce 6シリーズの重要な仕様である「Shader 3.0のサポート」などは継承されるが、コストを削減するために「ダイサイズは小さくしなければならず、チップとしては別なものになるだろう」と述べている。

 ただし、ダイサイズを抑えるためにATIが採用したような11ナノプロセスルールへの移行などは、「第2段階の時点で採用できるかは分からない」(ポール氏)としており、ミドルレンジとバリュークラスのGeForce 6シリーズでは、クロックが低くなりパイプラインの数も削減されるなど、アーキテクチャに変更が加えられる可能性を示唆している。

 GeForce 6800ファミリーのニューフェイスとして一部のパーツベンダーから名前が出ている「GeForce 6800 GT」についても、ポール氏は「16本のパイプラインやGDDR3対応など基本的なアーキテクチャは同じだが、コアクロック400MHzとメモリクロック500MHz(DDR1GHz)と動作クロックを下げている」とスペックを説明。

 最も大きな変更点として「GeForce 6800 Ultraで二つ必要だったパワーコネクタが一つになり、クーラーユニットも薄くして1スロットで収まるようにした」とパワー周辺の改善をアピールした。

 これはクロックを下げることで必要とする消費電力が下がったためで、GeForce 6800 Ultraで480ワットだったシステムの推奨電力容量は、GeForce 6800 GTでは最低必要電力用慮画300ワットになった。 これらの改良によって、「GeForce 6800シリーズがスモールフォームファクターPCにも搭載できるようになった」(ポール氏)

 なお、GeForce 6800 Ultraについても、「480ワットはサンプルボードで試算したときの値で、そのときはヘビーユーザーは大量のストレージデバイスをシステムに組み込んでいると想定していた。現在ではノーマルな構成なら350ワットでも問題ないと考えている」とポール氏は語っている。

GeForce 6800 GTはクロックを下げて消費電力を削減。そのおかげで動作を保障する最低電源容量は300ワットまで下げられ、クーラーユニットも薄くなって、省スペースPCにも組み込めるようになった

 こうしたハードウェアスペックの進化とともに、NVIDIAが重視するのがATIのGPUとの大きな違いである「Shader 3.0」への対応だ。2003年もサポートするDirect XのバージョンやShaderのバージョンを競っていた両社だが、NVIDIAにしてみれば「Direct X 9対応ゲームが普及するまで、Direct X 9の登場から1年以上もかかってしまったため、それほど大きな意味を持たなかった」(ポール氏)

 しかし、Shader 3.0に対しては、「シェーダプログラミングが簡単になったため、対応するゲームの開発期間が短くなった。そのため、この夏から秋にかけてNVIDIAも開発に協力したShader 3.0を取り入れたメジャーなゲームタイトルが多数登場するだろう」と、Shader 3.0対応ゲームが早期に普及することで、ATIではサポートしていないこの機能が有効な差別化になると、NVIDIAでは期待している。

すでに発売されているFarCryについても、夏に登場する予定のShader 3.0対応パッチを適用することで「Shader 3.0によって可能になる美しい視覚効果をユーザーはすぐに堪能できるだろう」(ポール氏)

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