遅かったのか、それとも間に合ったのか? QuarkXPress 6出荷開始

» 2004年06月24日 19時51分 公開
[大出裕之,ITmedia]

出荷開始はアナウンス通りに

 クォークジャパンは24日、QuarkXPress 6日本語版の出荷開始を発表した。価格はMac版もWindows版も同じで、税込み通常価格28万2450円。旧バージョンからのアップグレードは、3.x日本語版からが12万6000円。4.x日本語版からが8万2950円となっている。

 クォークジャパン代表取締役の早川裕子氏は「印刷業界の市場規模は減少しつつあるが、デジタルコンテンツとしてのテキスト&グラフィックスの分野は、実は成長分野。業界全体が新しい市場にシフトするのにお役に立てるツールとして評価いただければと思う」と語り、紙や印刷の仕事をしつつ新しい分野にも移行できるツールとしてのQuarkXPress 6をアピールした。

デジタルコンテンツとして成長がいちぢるしいのはDVDなどの映像分野と、T&G(テキスト&グラフィックス)の分野。T&Gはインターネットを媒体とする割合がさらに大きい

 またQuarkXPress 6の特徴は、ライセンスや認証などについて旧バージョンと一線を画すシステムに変更された点が挙げられる。これまではハードウェアキー(ドングル)を使用する必要があったがそれは廃止され、かわりにアクティベーションを行うように変更された。

 ライセンスについても、これまでは1ライセンスパッケージのみの商品構成だったが、サイトライセンスパッケージを新たに導入。ライセンス管理がより柔軟になり、無駄ないライセンス数を購入して運用できるようになった。

 少し詳しく説明すると、サイトライセンスパッケージを購入すると、Quark License Administratorというソフトでライセンスを管理することになる。これは同一ネットワーク内の複数台のPCのライセンスをコントロールすることができ、例えば、10人のチームに対して5本分のライセンスを購入すると、そのネットワーク内のPCの5台まで、ライセンスを認証してQuarkXPressを使用することができるというもの。

 Quark License AdministratorはサーバではなくノートPCなどにインストールしておくこともでき、ライセンスの期限付きチェックアウト・チェックイン機能も持つ。つまり、ノートPCなどで持ち帰り仕事をする場合に、そのPCへの期限付きライセンスを発行することができるようになっている。

 シリアルは1つだけになっており、ライセンスを追加購入した場合には、新たにクォークジャパンより発行されるライセンスファイルを置き換えることで、管理できるライセンス数が増えるという仕組みになっている。


QuarkXPress 6は間に合ったのか?

 機能の説明については、今年2月の発表以降各種メディアで既に報じられていると思うので本記事では割愛させていただく。問題は、マーケットの動向である。

 発表会の冒頭、Fred Ebrahimi氏に代わってQuark Inc.の社長兼CEOとなったKamar Aulakh氏が「ビジネスのありかたや品質への取り組みについて、根本的な変革を行ってきた。かつて、Quarkとユーザーは乖離していた。だが今ではお客様こそわれわれの将来そのものであり、お客様の判断がすべてだ」と語った。つまり、わざわざこのような主旨を語る必要があると、彼らは考えているわけである。

amar Aulakh氏

 アップル的な言い方をすれば、Mac OS Xへのシフトを最後まで拒んでいるのがDTP業界であり、その理由のひとつがQuarkXPressのMac OS Xへのネイティブ対応が遅れているからだ、ということになるだろう。

 またアドビ的な言い方をすれば、いつかはQuarkXPressのMac OS X版が日本にも投入される、それまでにInDesign CS及びPhotoshop CSやIllustrator CSなどとセットにしたAdobe Creative Suiteのシェアを取る必要がある、との思いは明白だろう。

 ユーザーの視点から見れば、業界が構造不況に至っているのに加えて、OSもハードも、そしてアプリケーションまでもが新製品への置き換えを迫ってくる。Mac OS 9が起動するMacの発売はとうとう終了し、アドビに続きクォークまでもが、Mac OS Xでしか起動しなくなってしまった、という状況なわけだ。フラストレーションはたまる一方なのである。

 おそらく、QuarkXPress 6の登場は間に合った。すべての石をInDesign CSにひっくり返される前に。ただ、この値付けを見る限り、容易にひっくり返すことができるほど、この石は軽くないだろうけれど。

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