3DMark Scoreの値は、軽負荷時の状態でNX6800が26%減、FX5700は15%減とECSが示している傾向とは異なる結果となっている。とくに最も重負荷である1600×1200ドット、アンチエイリアス4サンプル、異方性フィルタリング8サンプルにおいて、NX6800の性能低下は実に58%にも達している。
915P-A&NX6800(1024×768ドット、nonAA、nonAniso) | 915P-A&NX6800(1024×768ドット、4AA、8Aniso) | 915P-A&NX6800(1600×1200ドット、nonAA、nonAniso) | 915P-A&NX6800(1600×1200ドット、4AA、8Aniso) | |
3DMark Score | 26.2 | 25.2 | 19.4 | 58.3 |
GT1 | 36.4 | 20.1 | 24.4 | 6.8 |
GT2 | 7.3 | 19.3 | 4.4 | 85.0 |
GT3 | 23.3 | 10.7 | 12.0 | 54.7 |
GT4 | 45.6 | 55.5 | 41.9 | 89.7 |
915P-A&FX5700(1024×768ドット、nonAA、nonAniso) | 915P-A&FX5700(1024×768ドット、4AA、8Aniso) | 915P-A&FX5700(1600×1200ドット、nonAA、nonAniso) | 915P-A&FX5700(1600×1200ドット、4AA、8Aniso) | |
3DMark Score | 14.5 | 4.5 | 5.0 | 1.2 |
GT1 | 12.1 | 7.0 | 6.1 | 0.9 |
GT2 | 24.7 | 4.1 | 6.9 | 0.5 |
GT3 | 18.6 | 5.2 | 4.9 | 2.4 |
GT4 | 3.0 | 1.5 | 2.3 | 0.8 |
NX6800の結果をもう少し細かく見ていくと、解像度が1024×768ドットの状態では、フィルタリングなどの負荷を重くしても性能の低下率は同程度であるが、1600×1200ドットでは、フィルタリング負荷を重くすることでパフォーマンスが一気に低下している。
GTテストを個別に見ていくと、より興味深い傾向が見られる。ECSの説明ではDirect X 8ベースよりDirect X 9ベースのアプリでは性能低下が少ないということだったが、Direct X 8ベースのGT1〜GT3よりDirect X 9ベースのGT4のほうが、性能低下の割合がより大きくなっているのが分かる。
また、GT2、GT3、GT4でも重負荷テストで著しく性能が低下している。その一方で、シェーダ系のテストにおける性能低下はほんのわずかに止まっている(ただし、重負荷時で著しい性能低下が起こっているケースも確認されている)。
ECSの結果とは逆に、性能低下の割合が少なかったミドルレンジのFX5700であるが、GTテストを個別に見ても、軽負荷時のほうが重負荷時より性能低下が大きいという、NX6800とは逆の傾向を示している。もっとも重負荷テストではAGPにおける動作でもAGP Expressの動作でもほぼ同じ結果になっている。
これらの傾向は、ほかのベンチマークテストでも市販のゲームで行ったベンチマークでも同じである。すなわち、Aquamark3もTOMBRAIDER the angel of darknessも、NX6800では軽負荷時よりも重負荷時で性能低下の割合が大きくなるのに対して、FX5700は軽負荷時で性能低下の割合がより大きくなり、その度合いはNX6800よりも少ない。
一説によると、AGP Expressは複数(2本)のPCIをまとめて使えるようにしたスロットといわれている。このスロットに差したグラフィックスカードはPCI接続のカードのように動作すると考えてもいいだろう(この件について7月29日現在、ECSは正式なコメントを控えている)。
もし、この「仮説」が正しいとすると、グラフィックスのデータはPCIバスやノースブリッジ−サウスブリッジを接続するバスであるDirect Media Interface(DMI)を介して処理されることになる。DMIの帯域は最大2Gバイト/秒であるが、ICH6につながっているPCIは133Mバイト/秒。このあたりの帯域がAGP Expressに差したグラフィックスカードのボトルネックとなる可能性は高い。
ベンチマークのテスト結果を見ても、シェーダ処理系など、扱うデータ量が少なく、GPUのアーキテクチャに依存するテストでは、AGP Expressで動作してもパフォーマンスがほとんど変わらないのに対し、GT3、GT4やAquamark3、TOMBRAIDER AoDなど扱うデータ量が膨大なテストになると、負荷条件が重くなったとたんに、パフォーマンスがガクッと落ちてしまうのも、データがバスで渋滞していると考えると納得がいく。
FX5700の結果がAGPとAGP Expressでそれほど差がないのは、バスが渋滞する前にGPUの処理能力が飽和してしまうためと考えられる。GPUが飽和するのが先か、AGP Expressのバス(PCIバス)が渋滞するのが先かで、グラフィックスの性能が左右されるようだ。
予想よりも(またはECSが当初説明していたよりも)、AGP Expressで使うグラフィックスカードの性能低下が大きいかった今回のベンチマークテスト結果だが、この性能低下は915P-Aにとって致命的なものだろうか。
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