Torrenza対応「コプロセッサ搭載HTXカード」が姿を見せた!──AMDの次世代CPU戦略AMD Technology Analyst Day 2006(3/3 ページ)

» 2006年06月02日 11時03分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]
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超低消費電力版「Turion」の登場は2007年以降に

 AMDは先日、ドイツのドレスデンにある同社の製造施設に25億ドルの追加投資を発表している。今後3年間でプロセッサ製造能力を4倍にまで引き上げる計画だ。製造能力を大きく引き上げる300ミリウェハへの移行、そして65ナノメートルプロセスルールへの移行でIntelに大きな差をつけられているAMDだが、米AMDロジック技術・製造部門シニアバイスプレジデントのダリル・オストランダー氏によれば「65ナノへの移行は当初の計画どおりに進んでおり、このプロセスルールを用いたCPUは2006年末からデスクトップPC、次いでノートPC向けの順に製造と出荷が開始されることになる。45ナノへの移行はさらにスムーズで、(CPUでは一般的な2年サイクルよりも早い)18カ月のサイクルで65ナノから45ナノへの移行が進むことになる」とコメントしている。45ナノプロセスルールを用いたCPUは2008年中ごろでの登場を予定しており、その後の32ナノや22ナノプロセスルールも視野に入っているという。65ナノ以降、IBMとのプロセス技術の共同開発が効果を現してきたといえる。

現在開発中の45ナノプロセスルールで製造されたシリコンウェハ
今年後半より量産・出荷が開始される65ナノプロセスルールのシリコンウェハ

 AMDがCPU戦略で重視するのは、電力あたりのパフォーマンス効率「Performance Per Watt」(PPW)だ。同社によれば、AMD64のPPWの上昇カーブは年々アップし、2007年の時点で前年比60%増、2008年にはさらに2006年との比較で150%増の水準に達するという。これは、サーバやハイエンドデスクトップPCの分野でIntelと競合するばあい、AMDの大きなセールスポイントになっている。AMDでは、現行世代サーバ向けデュアルコアCPUのOpteronシステムとXeonシステムを比較した場合に、PPWで220%のアドバンテージがあるとしている。また次世代版Xeon(Woodcrestベース)とOpteron(Santa Rosaベース)を比較した場合でも消費電力の面では依然としてAMD側にアドバンテージがあるという。

 このほか同社では、「Trinity」と呼ばれるバーチャライゼーション(仮想化)技術をベースにしたプラットフォームをサーバやデスクトップPCなどへ導入していく。仮想化技術導入のメリットは、バーチャルマシン(VM)上でOSを動作させることでセキュリティに対する耐性が上昇するほか、複数のサーバを1つの物理的なマシン上で動作させることで、サーバの運用コストや管理コストの削減が期待できることにある。同社ではさらにこれを一歩推し進め、「Raiden」と呼ばれるプラットフォーム戦略を推し進める。これは、1つのサーバ上に複数の仮想クライアントOSを動作させる、いわゆるシンクライアント(Thin Client)的なソリューションだ。このような方式を採ることで、クライアントOSの管理をさらなる効率化を実現する。

 ノートPC向けCPUの世界では、さらに電力消費効率を高めた「Ultra-Low Power」(超低消費電力)のカテゴリに相当するCPUを2007年以降にもリリースし、Intelが大きくリードする市場に攻勢をかける。5月中旬にノートPC向けで初のデュアルコアCPU「Turion 64 X2」を発表したAMDだが、今年末には65ナノへの移行を進め、さらに2007年の段階でさらにモバイル用途に最適化された新型コアを導入、超低消費電力の世界へと突入する。2008年の段階では、すでに45ナノプロセスがロードマップ上に見えており、ライバルと正面からぶつかるだけの布陣を敷くことが可能になる。

65ナノプロセスルールで製造されたプロセッサを搭載したデスクトップPCとノートPCのリファレンスマシン
仮想化プラットフォーム「Trinity」「Raiden」の発表にあわせて、米Sun MicrosystemsのSunRay 2やAMDのGeodeベースのシンクライアント端末が多数展示されていた

 今回のAMDのロードマップ発表からうかがえるのは、同社の強みがハイエンドサーバとデスクトップPC向けプロセッサにあることを彼らは自覚しており、まずはそれらを重点的に強化しようという姿勢だ。逆に同社の弱点であるモバイル向けCPUと製造キャパシティの部分は、大規模な投資やIBMなどとの技術開発でプロセス技術の移行と製造能力強化を急速に進め、時間とともに解決していこうという戦略だ。とくに65ナノから45ナノプロセスへの移行スピードは早く、これまでIntelに遅れをとりがちだった製造技術の面でようやく追いつくことになる。近年、プロセッサ市場でシェアを拡大しつつある同社だが、本当の勝負は2007〜2008年に到来することになるだろう。

AMDのサーバ向けプロセッサロードマップ
AMDのデスクトップPC向けプロセッサロードマップ

AMDのノートPC向けプロセッサロードマップ
AMDの次世代ノートPC向けプロセッサのダイ写真
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