AMDとATIの合同記者会見の舞台ソデで聞く話

» 2006年07月27日 20時56分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 合同記者会見で両者のトップ同士は1年前から話を進め、ATIテクノロジーズジャパン代表取締役社長の森下正敏氏は2週間前から耳にしていたことが明らかになった今回の買収について、現場のスタッフが知らされたのはリリースが流れたその日の夕方だったそうだ。以前から観測記事がながれていたものの、今回のタイミングに関しては突然で知らされたスタッフは「みんな、聞いた瞬間はただ呆然としただけ」という状況であったとATIテクノロジーズジャパンのスタッフは語っていた。

 気になるATIのブランドについて、公式の質疑応答では「ATIのブランドは優れた“財産”なので有効に生かしていきたい」(米AMD執行副社長兼ワールドワイドセールス/マーケティング最高責任者のヘンリー・リチャード氏の回答)「AMDはATIのすべての製品が両者の相乗効果にとって必要と判断している」(リチャード氏)「ATIが行う投資は従来どおりであり、すべてのカテゴリーに対して行っていく」(ATIワールドワイドセールス上級副社長のリック・ヘグバーグ氏)と、ATIのブランドやビジネスがそのまま継続されると説明している。

 その一方で「ATIが日本のビジネスパートナーに対してこれから先のロードマップをすでに説明した」という情報もある。一部では現在開発途上にある製品について計画の見直しがあるかもしれない、という噂もある。この件についてもAMDのリチャード氏、ATIのヘグバーグ氏はそろって「ロードマップに変更はない」(リチャード氏)「繰り返し述べているようにGPUも引き続き資源を投入していく。われわれの“ビジネス”に変更はない」と力強く否定している(製品ではなくビジネスといっているあたりに疑問は残るが)。

 CPUを供給するAMDとGPU、チップセットを供給するATIという組み合わせ、となるとちょっと気になるのが「AMD LIVE!」というキーワードだ。インテルのViivと違い、AMD LIVE!では構成するハードウェアの組み合わせについて条件を定めていない。しかし、ATIが提供する高画質化機能「Avivo」など、AMD LIVE!に影響を及ぼす技術をATIは製品に持たせている。AMD LIVE!の構成要素として「CPUにはマルチコアAMD64を搭載し、GPU(もしくはチップセット)にはAvivo機能を実装すること」という条件が課せられても不思議ではない。AMDはAMD LIVE!プラットフォームに対応する製品をまもなく投入するとしていた時期を迎えるため、ATIの買収がこの動きになにかしら影響することも考えられる。

 このあたりの事情について日本AMDのスタッフは、「AMDはオープンであることを第一として考えている。AMD LIVE!の条件にATIだけをあげることは考えられない」と回答している。質疑応答の回答でリチャード氏が「ATIのチップセットではAMDのCPUしか使えなくなるという噂は間違っている」という発言をしているが、AMDは常に「オープン」であって組み合わせをクライアントが自由に選択できることをAMDプラットフォームのメリットとしてアピールしてきている。AMD LIVE!ではAvivoもPureVideoも使えることが、AMDが掲げる「オープン」という重要なコンセプトを満足させる、というのが、現時点におけるAMDのスタンスであるようだ。

 買収に関する合同記者会見を行った両社であるが、法的な手順に則り4カ月という時間を掛けてから具体的な一体化が進むものと思われる。「開発の拠点は現状維持で、トロントの開発部隊が再編によってAMDに」いくことはない、と記者会見でも説明しているが、ATIテクノロジーズジャパンのスタッフが「現在リリースしている製品についてはいままで通り、ビジネスを行いサポートも完全にする」と述べているように、業務はこれまでどおり進むらしい。

 ただ、例えば今回の合同記者会見では両社の広報部門が合同で作業を行うなど、セクションによってはすでに協力する業務が発生している。問い合わせについてもATI独自ではなくAMDと確認をとったうえで対応することも増えてくるだろう、と広報部スタッフは述べている。製品開発や通常のビジネスだけでなく、勤務する場所や労働条件など、2つの会社が1つになるときの諸々の問題について「いまはまったく何も聞いていない」というATIのスタッフ。別れ際に「そういえば、コーポレートカラーが“緑”になったらどうする?」と聞いてみたところ「むはははは」と返されたのであった。

左は米AMD執行副社長兼ワールドワイドセールス/マーケティング最高責任者のヘンリー・リチャード氏で右はATIワールドワイドセールス上級副社長のリック・ヘグバーグ氏。2人とも「ロードマップに変更はない」と口をそろえているので、「R600」はきっと陽のめをみることができるのだろう

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年05月15日 更新
  1. 新型「iPad Pro」が見せる未来の夢と「iPad Air」が見せたバランス感覚 実機を試して分かったiPad購入ガイド (2024年05月14日)
  2. 使って分かったM4チップ搭載「iPad Pro」のパワフルさ 処理性能とApple Pencil Pro/Ultra Retina XDRディスプレイ/新Magic Keyboardを冷静に評価する (2024年05月14日)
  3. ワコムの有機ELペンタブで快適手書きメモライフ! 絵描きではないビジネスパーソンが「Wacom Movink 13」を試したら (2024年05月14日)
  4. ASUSが「新しいAI PC」を5月21日午前3時(日本時間)に発表 Snapdragon X搭載? (2024年05月13日)
  5. FMVの富士通クライアントコンピューティングが2種類の周辺機器を発売 「27型ワイド4Kディスプレイ」と「ワイヤレス静音キーボード」 (2024年05月14日)
  6. Intel ArcにARCTIC水冷キットにマウスに! 白と黒が選べる新製品が多数登場 (2024年05月13日)
  7. OpenAIが新AIモデル「GPT-4o」を発表 (2024年05月14日)
  8. キヤノンMJ、PCレスでのスキャンやデータ送信も可能なネットワークスキャナー「ScanFront 400II」 (2024年05月14日)
  9. 新型「iPad Pro」がM3チップをスキップした理由 現地でM4チップ搭載モデルと「iPad Air」に触れて驚いたこと (2024年05月09日)
  10. 「M4チップ」と「第10世代iPad」こそがAppleスペシャルイベントの真のスターかもしれない (2024年05月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー