電子文書といえば、大半の人がPDFを思い浮かべるだろう。アドビシステムズの開発したPDFは、文字通り電子文書の世界標準となっている。このPDFドキュメントは、アドビシステムズが無償提供しているAdobe Readerで閲覧することが可能だ。閲覧ソフトが無料であること、希望した印刷状態が確実に再現される安心感があること、この2つがPDFを世界標準に押し上げたといえる。
さらに最近のPDFには、もうひとつの新しい特徴が追加されている。それは、PDFが持っているオリジナルの情報を損なうことなく、あとから情報を付加できるということだ。
たとえば、官公庁などで使用する申請書や届け出用紙は、誰がどんな環境でプリントしても同じものが得られなくてはならないため、まさにPDF向きだ。実際にPDFでの提供が広く行われている。一方、提供された申請書や届け出用紙の記入欄にあわせて、手元のパソコンを使ってデータを入力したいという希望もある。そういった要望にあわせて、最近は印刷しなくても、入力フォームに直接データを記入できる対話型のPDFが登場している。
本稿では、この「データ入力できるPDF」をSOHOで活用する方法について紹介しよう。PDF作成ソフトは数社から提供されており、最近では文書作成ソフトを中心に、PDFでの書き出しが可能な製品も増えてきている。しかし、安定して質の高いPDFを作成しようとすれば、やはりアドビシステムズのAdobe Acrobatシリーズが最適だ。PDFの開発元ならではの機能の豊富さ、そして信頼感の高さは、とくにビジネスユースでは重要なポイントとなる。
11月より順次販売が開始される予定の最新版「Adobe Acrobat 8」シリーズの日本語版は、フリー版のAdobe Reader 8を除くと、「Adobe Acrobat 8 Elements」「Adobe Acrobat 8 Standard」「Adobe Acrobat 8 Professional」「Adobe Acrobat 3D Version 8」と4つのグレードに分かれており、この順番で機能が多くなっていく。たとえば、下表のように、ワンクリックでPDFを作成できる対応アプリケーションが増える。
ワンクリックでPDFを作成できるアプリケーションの対応状況 | ||||
---|---|---|---|---|
PDFをワンボタンで作成(Windows版の場合) | Elements | Standard | Professional | 3D |
Word | ○ | ○ | ○ | ○ |
Excel | ○ | ○ | ○ | ○ |
PowerPoint | ○ | ○ | ○ | ○ |
Outlook | − | ○ | ○ | ○ |
Internet Explorer | − | ○ | ○ | ○ |
Publisher | − | ○ | ○ | ○ |
Access | − | ○ | ○ | ○ |
Lotus Notes | − | ○ | ○ | ○ |
AutoCAD | − | − | ○ | ○ |
Microsoft Visio | − | − | ○ | ○ |
Microsoft Project | − | − | ○ | ○ |
主要なCADアプリケーションで作成した3DモデルのPDF変換 | − | − | − | ○ |
グレードによる違いは、ワンクリックPDF作成機能の対応状況だけではなく、利用できるツール類にも現れている。単にPDFを作成するだけなら最下位のElementsでも十分だが、それ以上にPDFを活用したいのなら、StandardかProfessionalがおすすめだ。Standard以上を使うことで「印刷状態を再現するためのPDF」から一歩も二歩も踏み出した「情報を追加できるPDF」が利用できるようになる。さらに最上位の3Dでは、3Dモデルを盛り込んだPDFを扱う専門家のための機能も用意されている。
StandardとProfessionalの基本的なツールは共通で、Standardでも「ノート」「ハイライト」「描画」「スタンプ」などの機能が利用できる。また、レビュー参加者からのコメントを集約する機能や、スキャンした紙文書をOCRを使って検索可能なPDFにする機能なども共通だ。今回のバージョンアップで追加された「複数フォーマットの関連ファイルを束ねて1つのPDFファイルとして扱う機能」(PDFパッケージ機能)もStandard以上に装備されている。
StandardとProfessionalのいちばん大きな違いは、「フォームフィールド」の付いた対話型のPDFを作成する機能だ。これは、Professionalからの装備となる。またProfessionalを使えば、「ノート」「ハイライト」「描画」「スタンプ」などの一般的なツール類や「フォームフィールド」「電子署名」などの機能を、無償のAdobe Readerでも利用できるように権限を付与できる。つまり、無償のAdobe Readerしか持っていないユーザーも含めた高度な「統合ドキュメント環境」を作成できるのがProfessionalということになる。SOHOにとって、この違いは大きいだろう。
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