第4回 HD DVDとBlu-ray Discメディアの仕組み新約・見てわかる パソコン解体新書(3/4 ページ)

» 2007年06月01日 11時11分 公開
[大島篤(文とイラスト),ITmedia]

データはグルーブに記録する

 書き込み可能な光ディスクの記録層には、データを書き込むためのガイドとなる溝が、製造時に刻まれています。この溝は専門用語でグルーブ(groove)と言い、蚊取り線香のような渦巻き状配列となっています。グルーブの総延長はCDでも5.7キロメートル、Blu-ray Discでは27キロメートル以上という驚くべき長さです。


 データを記録するときには、ディスクを高速回転させながら、グルーブに強いレーザービームを照射して、記録層の反射率を変化させます。

 データを読み出すときには、同じくディスクを回転させながらグルーブに弱いレーザービームを照射して、その反射光の強弱を調べます。

 なお、記録面から見ると、グルーブは溝ではなく下図のように出っ張っています。グルーブ間の凹んだ部分はランドといいます。

 ほとんどの光ディスクはグルーブ部に記録するオングルーブ方式を採用していますが、DVD-RAMの場合はランド部とグルーブ部の両方に記録するランド&グルーブ方式です。また、グルーブ間の凹部分にだけ記録を行うイングルーブ方式のメディアも今後登場する可能性があります。


 書き換え型メディアに対する記録データとレーザー照射、そして記録された状態の関係を次に示します。2進数データの、1のところでレーザー照射の強度を切り替えるのが特徴です。


 なお、記録データは1が連続して現れないように、あらかじめ変調されています。採用する変調方式は、DVD、HD-DVD、Blu-ray Discでそれぞれ違いますが、ここでは説明しません。

書き換え型の記録原理

 書き換え型メディアの記録原理を説明しましょう。

 書き換え型メディアの記録層は、特殊な合金でできています。たとえば、日立マクセルのBD-REの場合は、ビスマス・ゲルマニウム・テルル系の記録材料を採用しています。

 この合金は、強いパワーのレーザー光を照射して、合金の融点以上の高温にしてからレーザー照射を止めた場合は、分子がバラバラになった非結晶(アモルファス)状態で固まります。また、中くらいのパワーのレーザー光を照射して、温度を融点に達しない範囲で高温にした場合は、分子がきれいに並んだ結晶(クリスタル)状態で固まります。

 結晶状態の部分と非結晶状態の部分とでは、光の反射率が異なるので、記録層に弱いレーザービームを照射してその反射光の変化をとらえることで、記録された信号を再生することができます。


 以上の記録方式を、相変化記録方式といいます。既にデータを記録した部分であっても、直接新しいデータを上書きできるのが大きな特徴です。それも、何度もくりかえして。一般に書き換え型の記録メディアは最低1000回、製品によっては1万回以上の書き換え回数を保証しています。

 書き換え型は、温度の違いによって結晶と非結晶の部分を作り分けるため、温度制御がシビアです。また、隣接するグルーブにまで熱が伝わらないようにすることも重要です。

 レーザーを照射した部分の温度変化や、熱の伝わり方を制御するために、書き換え型メディアの相変化記録層の上下には、誘電体層という層が設けられています。誘電体層の素材は一般にZnS-SiO2が使われます。


追記型の記録原理

 今度は、追記型メディアの記録原理を説明します。

 追記型HD DVD-Rメディアの記録層は、一般にAZO(アゾ)化合物系の有機色素を塗布、乾燥させたものです。使用される有機色素は、HD DVDが使っている波長405ナノメートルの青紫光に対して吸収性を持ちます。このためレーザービームを照射すると、焦点部分の有機色素が瞬時に高温になり、物性が変化します。物性の変化とは、具体的には白濁したり盛り上がるなどであり、その部分が記録マークとなります。記録マークの部分は、他の部分よりも反射率が低くなります。再生時には、弱いレーザービームを照射して、その反射光の強弱の変化をとらえることで、記録マークの始まりと終わりを検知します。


 一般のHD DVD-Rの記録層は、上で説明したような記録メカニズムなのですが、日立マクセルのHD DVD-Rメディアの記録層はLow to High媒体といって、記録マークの部分の反射率が高くなるという特殊な有機色素を採用しています。黒い紙に穴を開けて行くような感じと言えば分かりやすいでしょうか。従来の媒体とは、明暗の関係が逆転していますが、光ディスクは前述したように記録マークの始まりと終わりが1、それ以外が0という記録方式であるため、従来とまったく同じ再生信号を得ることができます。


BD-Rの記録層は合金をスパッタリングして作られる

 日立マクセルは、追記型のBlu-ray DiscであるBD-Rメディアも発売中です。このメディアの記録層は、従来のように有機色素をスピンコート法で塗布したものではなく、無機材料(合金)をプラスチック基板上にスパッタリングして形成した無機記録膜でできています。スパッタリングは蒸着とも呼ばれますが、要するにメッキのことです。記録は、レーザー照射によって無機材料を分解することで行います。Blu-ray Discは記録密度が高いために、高精度の記録層を作る必要があり、そのためにはスピンコート法よりもスパッタリングの方が適しています。

 また、BD-Rメディアの中には、追記型でありながら、相変化型の記録層を採用するものもあります。これもやはり無機記録膜を、スパッタリングで形成したものです。

 一般に、有機材料を使う方がメディアの製造コストを下げやすいと言われていて、いくつかのメーカーが有機材料を採用したBD-Rメディアの製造技術を開発中です。

関連キーワード

Blu-ray | HD DVD


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
最新トピックスPR

過去記事カレンダー