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» 2007年10月24日 12時00分 UPDATE

林信行の「Leopard」に続く道 第3回:System 7で幕をあけた激動の1990年代(前編) (1/2)

System 7が登場した1991年からMac OS Xがリリースされるまでの10年。それはMacが大きく飛躍する一方で、アップルが窮地に追い込まれた激動の時代だった。

[林信行,ITmedia]

いま一度、Macの歴史を振り返る

 10月26日、アップルから待望の「Mac OS X v10.5 Leopard」が発売される。これはアップルが社名から「コンピュータ」の文字を取り去って初めてリリースするOSという意味においても注目のOSになる。数々の新機能を搭載し、新次元の使い心地を実現するOSだ。今年初めに“新時代OS”と期待してWindows Vistaを買ったものの、いまひとつ盛り上がれなかった人も、Leopardを触ればワクワクできるかもしれない。

 ここでは、待望の新OSのリリースを祝い、「Leopardに続く道」という題で、MacのOSの歴史を振り返る。連載の開始は4月だったが、その後アップルがiPhoneの開発を優先させ、Leopard発売を10月まで延期したこともあって、一時連載を中断していた。

 第1回の「理想と現実のギャップにあえいだ黎明期のMac OS」は1980年代、Mac本体の付属品として無料で配られていた時代のMac OSについて紹介したが、今回はMacを大きく発展させる一方で、アップルを窮地に追い込む要因にもなった波瀾(はらん)万丈の時代のOS、System 7からMac OS 9までを振り返っていく。


 System 7が登場した1991年からMac OS Xがリリースされた2001年までは、玉石混交の技術が入り乱れた激動の10年だった。この時代の出来事をすべて書き連ねようとすると、ものすごい量にならざるをえない。そして書きたいことも山ほどある。そこをぐっとこらえつつ概略だけを振り返ったが、それでも長さを抑えることができずに、前・中・後編に分けることとなった。

 前編では、この時代のOSと、ハードウェアとアップルの戦略を時代背景を絡めて紹介する。

 中編は、旧Mac OSがいかに終焉を迎えたかの物語だ。

 そして後編では、もう少し低い視点から、そもそも旧Mac OSがどんなOSだったかを振り返ってみたい。

 なお、この10年間のOSはSystem 7に始まり、同8、9と3つのメジャーリリースが登場しているが、文中ではこれら3つをまとめる意味で「旧Mac OS」と書かせてもらう。

 また、書くと長くなりそうな技術や機能、ソフトウェアの説明などは、各見出しの最後にキーワードの形で並べておいたので、興味がわいた人はApple Wikiなどを使って調べてみてほしい。

32ビット化時代のはじまり

 System 7は、Mac最初の32ビットOSだ。Mac Plusまでの初期のMacは、MotorolaのMC68000という(32ビットに近い)16ビットのCPUを採用していた。1987年登場のMac II以降、68020や68030という32ビットCPUの採用が始まったものの、System 7になるまでOSは16ビット仕様でメモリは8Mバイトしか扱えなかった。しかし、System 7以降はハードウェアの仕様にあわせて徐々に最大搭載メモリ容量が増大し、最終的にMac OS 9では1.5Gバイトまで扱えるようになった。

(※記事初出時、System 7以前の最大メモリ搭載容量を4Mバイトと記述していましたが、正しくは8Mバイトです。お詫びして訂正いたします)

 蛇足だが、扱えるメモリこそ拡張されているが今日のMac OS X(Tiger)も基本的には32ビットOSだ。そして次期OSのLeopardで、Mac OS Xはついに64ビットOSに進化する。32ビット化以来、実に16年ぶりの進化である。

関連キーワード

MODE32、32bit QuickDraw、Apple 8・24GCカード


MC680x0系からPowerPCへ

 旧Mac OSの時代に起きたハードウェア仕様の変化はこれだけではない。この時代、MacはCPU変更という、とてつもなく大胆な戦略を打ち出している。

 初期のMacが搭載していたモトローラ680x0系と呼ばれるCPUは、時代が進むにつれてどんどん構造が複雑になり、パフォーマンス向上のペースが落ちていった。後述するが1990年代は、MacとWindowsの間のシェア争いがPC業界にとって最大の関心事であり、アップルはWindows機が採用していたインテル製CPUよりも進化のペースが遅いモトローラ製CPUに業を煮やし始めていた。

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 そこで1990年、アップルはIBMと提携し、PowerPCという新世代のCPUを共同開発することに決めた。

 PowerPCは、RISC(縮小命令セットコンピュータ)という設計思想に基づき、処理できる内容を減らしてシンプルにし、その代わりに高速動作や並列処理でパフォーマンスを向上させようとしたCPUだ。やがて、アップルにCPUを供給していたMotorolaも、PowerPC開発陣営に参加。IBMとモトローラの2社がCPUを供給する体制が整った。

 それまでとまったく異なるCPUに対して、どんなOSを提供すべきかは、アップルにとっても大きな課題だった。アップル社内には“Pink”というコード名の次世代OSのプロジェクトがあり、PowerPC時代のOSの筆頭候補に挙がっていた。

 しかしその後、Mac IIfxの開発チームがスキー旅行をしていたとき、PowerPCほどの処理能力があれば、680x0 CPUの動作を完全にエミュレートする(模倣する)ことができるのではないかという議論が出た。

 そして実際に試してみると、予想以上のパフォーマンスが出た。そこでアップルは、System 7そのものに、680x0エミュレーション機能を内蔵することを決断する。

 こうしてMac誕生から10年目の1994年3月14日、ニューヨークでPowerPC搭載のMac新シリーズ「Power Macintosh」(通称:Power Mac)が登場する。ちなみにノート型シリーズのPowerBookが登場したのは1991年で、PowerPC採用以前のことだ。

関連キーワード

CISC、RISC、POWERアーキテクチャー、PowerPC 601、PowerPC 603、PowerPC 604、PowerPC 620


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