Leopardへの助走――Mac OS Xの誕生からTigerまで林信行の「Leopard」に続く道 第6回(2/4 ページ)

» 2007年10月30日 12時00分 公開
[林信行,ITmedia]

2つの親を持つOS

 2001年誕生の「Mac OS X v10.0」は2つの親を持つOSだ。

 1つはもちろん、それまでの旧Mac OS。Classicという環境で、Mac OS 9をそのまま動かすことができる(それもParallelsでいうCoherenceモードのように、Mac OS Xの環境に完全にブレンドして利用できる)。

 それに加えて、旧Mac OS用ソフトを少し手直しすることで開発できるCarbonアプリケーションというソフトの実行に対応している。そのおかげでPowerPC移行時(「エミュレーションの質の高さが仇になる」を参照)に比べると、ネイティブアプリケーションが増えるのは早かった。

 またMac OS Xは、「Aqua」というまったく新しいユーザーインタフェースを用意しながらも、その外観は少しだけ旧Mac OSに似せていた。例えば、Mac OS XのFinderのツールバーを隠し、アイコン表示モードにし、アイコンサイズを変更すれば、遠くから見た感じでは分からない程度に旧Mac OSと似せることも可能だった。

 そして何より、旧Mac OSに上書きインストールして、ほとんどのアプリケーションや書類をそのまま使うことができたのだ。これはOSの基盤がガラリと変わったことを考えると画期的なことだ。

もう1つの親、OPENSTEP

 さて、Mac OS Xのもう1つの親は、ネクストのOS「OPENSTEP」だ。

 OPENSTEPの元祖はNeXTstepというOSで、machと呼ばれるプリエンプティブマルチタスクやメモリ保護に対応した堅牢なカーネルの上に、BSD系と呼ばれるUNIX環境を載せ、そのうえでオブジェクト指向技術ベースのアプリケーション開発環境を実現していた。画面上で見たものを、そのまま印刷する「WYSIWYG」(What You See Is What You Get)を実践すべく、「Display Postscript」という技術を採用した。

 デスクトップには起動中のアプリケーションなどのアイコンが表示されるDockがあり、ブラウザと呼ばれるファイル管理ソフトのウィンドウはツールバーを備え、カラム表示が標準になった。

 実はMac OS Xは、Display Postscriptの代わりに、同様にAdobe Systemsの技術がベースになっているPDFを使うなど、このOPENSTEPを進化させたものに、CarbonとClassic環境を加え、新しいユーザーインタフェースでくるんだものだ。1997年、ジョブズ復活時には「Rhapsody」と呼ばれていたが、同年に行なわれた開発者会議で参加者に配られた「Prelude to Rhapsody」は、実はネクストが開発していたOPENSTEPの最新版そのものだった。

 この当時、OPENSTEPの開発環境は先進的だからと、アップルはMacの開発者をすべてこの新開発環境(Yellow Box、旧OPENSTEP)へ移行させようとしたが、開発者から猛反発にあう。その結果、妥協案として先のCarbonが誕生した(今日でもAdobeやマイクロソフトのような巨大なソースコード資産を持つ会社はCarbon技術に依存している)。

 こうしたやり取りもあり、Mac OS Xはカーネル部分はすぐにPowerPCへ移植されたが(元々はインテルCPUなどで動いていた)、OSとして完成するには時間がかかった。

 アップルがRhapsody技術をベースにして作った最初のOSは、1999年リリースのMac OS X Server 1.0というサーバOSだった。ネクストの製品は、銀行などを含む大手企業で使われていることが多く、そうした企業がOPENSTEPからのアップグレードパスを探していたのだ。

 このMac OS X Server 1.0は、見た目はOSを大柄にし、カラム表示機能を加えた旧Mac OSのようだったが、実はMacをネットワーク経由で起動させるNetBootサーバなどの機能を備えていた。なお、アップルは同OSのリリースとほぼ同時に、OSの基盤技術をDarwinというオープンソースプロジェクトとして公開している。

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