System 7で幕をあけた激動の1990年代(前編):林信行の「Leopard」に続く道 第3回(2/2 ページ)

» 2007年10月24日 12時00分 公開
[林信行,ITmedia]
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エミュレーションの質の高さが仇になる

 すばらしい出来のエミュレーション機能で、それまでの680x0用につくられたアプリケーションであっても、PowerPCに最適化したアプリケーションであっても、区別なく同等に実行ができた。

 このおかげで、スペックシートを気にしないユーザーは、CPUが少し速くなったことには気がついても、CPUの種類まで変わっていることをほとんど意識しないですむことになる。

 同じ時期にサン・マイクロシステムズが、やはり680x0から自社開発のRISC型CPUに移行を果たしていたが、こちらはアプリケーションの総取り替えなど、ユーザーにはかなりの不自由を強いる移行だった。このため、アップルのCPU移行は、しばしば「PC業界における無血革命」などと呼ばれることもあった。

 しかし、このエミュレータの質の高さは、実はアップルに取って諸刃の剣でもあった。

 エミュレータ機能があまりにもよくできているために、開発者がわざわざアプリケーションをPowerPCに最適化しなくても、そこそこのパフォーマンスで動作してしまう。このためアプリケーションのPowerPC最適化がなかなか進まない。アップルは、最適化をしたアプリケーションに「Power Application」のロゴを提供するなど、なんとか盛り上げようと奮闘した。

 しかし、そもそもアプリケーション開発者がどんなに頑張っても、当時PowerPCの真価を発揮することはできなかった。なぜなら、エミュレータがよくできすぎているために、実はOSそのものさえ、かなりの部分が680x0用のままで、PowerPCに最適化されていなかったからだ。

 アップルはアプリケーションからの呼び出し頻度が高い機能からPowerPC最適化を進めていったが、晩年のMac OS 8に至っても、一部に680x0用のコードが残っていた。

関連キーワード

Mixed Mode Manager、Power Application、Code Warrior、コネクティクス Speed Doubler


グラフィックスからマルチメディアへ

 旧OS時代、Macは先進グラフィックスのPCからマルチメディアのPCへと進化した。System 7登場の直前に、アップルはマルチメディア機能拡張のQuickTimeをリリースする(最初はSystem 6用だった)。QuickTimeの登場で、Macでは映像と同期した音声を再生したり、記録したり、さらには圧縮する機能が標準で加わった。

 このQuickTimeと、初代Macの主要開発者であるビル・アトキンソン氏が開発し、すべてのMacに標準添付となっていた「HyperCard」(誰でも簡単に自作ソフトが作れた)というソフト、そして米マクロマインドの「Director」(簡単にアニメーションなどが作れた)というソフトの3つを中心に、ユーザーのクリックに反応するインタラクティブ型コンテンツが急速に増え始めた。

 一方、ハードウェア技術でも動きがあった。

 1992年には、当時のアップルCEOだったジョン・スカリー氏の呼びかけで、箱根でマルチメディア国際会議「箱根フォーラム」というイベントが開催されている。ここに集まったアップルや富士通などのPCメーカーは、登場したばかりのCD-ROMをその後のPC業界の標準として普及させるために、CD-ROMドライブ内蔵PCを開発することで合意したのだ。

 アップルやマクロメディアのソフト開発プラットフォームと、当時としては巨大な650Mバイトの容量を持つCD-ROMドライブがPCに標準搭載されたことで、ここから一気にマルチメディアの時代が訪れる。

 それは「スペースシップワーロック」というゲームを開発したマイク・サエンツとジョー・スパークス、「ヘル・キャブ」のペペ・モレノ、「Cosmic Osmo」(Mystの前身だ)を作ったミラー兄弟など、多くのスタープログラマーが誕生した時代でもある。

 日本に目を向けると、このマルチメディアブームの時代は、バブルがはじけていたにも関わらず、「マルチメディア市場はこれから大きく成長しそうだ」という期待感が大きかった。そして多くの日本企業がこうした海外のスタープログラマーらに投資した。

 しかし、やがて到来するインターネットブームによって、それまで夢を描いていたCD-ROMを基盤とするマルチメディア文化は、泡のように消えてしまうのだった。(中編に続く)

関連キーワード

Director、HyperCard、QuickTime、CD-ROM、Spaceship Warlock


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