写真のフォーマット形式がほぼJPEGのみでこと足りるのに対し、ビデオ(動画)は最もフォーマット形式が乱立しているメディアだといえる。圧縮データの伸張処理を行う機器のパフォーマンス、また、動画の再生デバイスの解像度などから、再生環境によって最適解が異なるためだ。
そのため、EMC10ではビデオキャプチャやDVカメラからの取り込みをはじめ、MPEG-2、MPEG4、MPEG-2 HD、MPEG-TS、DivX、WMV、MOV、DVR-MS、DVDなど、さまざまな形式を取り込むことが可能になっている。また、出力に関しても多岐に渡り、用意されたプリセットから再生デバイスを指定することで、自動的に最適な出力形式を選択することもできる。ちなみにEMC10では、ワンクリックでYouTubeに動画をアップロードする機能も搭載された。
また、静止画(写真)からビデオを作成することもできる。お気に入りの写真から手間をかけずにビデオを作りたい人は「CineMagic」が便利だ。CineMagicでは、写真やビデオを登録すると自動的にテーマに合うようなBGMをつけて1本の動画にまとめあげてくれる。
もちろんこれだけでも十分鑑賞にたえる楽しいコンテンツが出来上がるが、もっと凝りたい人はCineMagicが作成した動画を動画編集ソフトの「VideoWave」で読み込み、手作業の編集を加えればいい。さらに、配布目的で最終出力をDVDにしたい場合は、「MyDVD」を利用してモーションメニューやチャプター、メニューなどを付け、ユーザビリティの高いDVD-Videoとして仕上げることが可能だ。
EMC10の可能性はこれだけにはとどまらない。このレビューで触れていない機能もたくさんあるし、前身が「Easy CD Creator」であるから、ライティングは言うまでもなく、コピー、リッピング、仮想CD/DVDドライブの作成など、ライティングソフトとしての機能は万全だ。
しかし、ここではあえてPCを持て余している人にこそ、おすすめしたい。PCで何ができるんだろう、買ったからにはいろんなことをやってみたい、と思っている人の「とっかかり」として、これほど適したソフトはないのではないかというのが使ってみた実感だ。
多くの人にとって、現在のPC用途はブログ、YouTube、大型匿名掲示板などのWeb閲覧、メール、オフィスソフトでの作業、ゲーム、そしてデジタルメディアの(なんらかの)利用で、ほぼ網羅されるのではないだろうか。そして、この中で最もハードルが高かったのがデジタルメディアだ。もちろん、閲覧・視聴するだけであれば難しくはない。ところが自分で作る、編集する、加工する、というプロセスになったとたん、なにが必要なのか、何をすればいいのか分からなくなり、途方に暮れてしまう。
EMC10はそういったユーザーに対する福音となるはずだ。パッケージ版には280ページ以上に及ぶユーザーガイドが同梱されている。これを読みながら1つ1つ試していくのもいいだろう。網羅している範囲の広さと製品の価格を考えると、実はかなり高機能な部類に入るソフトウェアだ。もちろん、使い込んでいけば不満足な点などは出てくるだろう。だが、そうなれば「なにが足りないか」を認識できるだけのスキルアップが果たせている、ということにほかならない。
また、中級者以上にとってもビクトリノックスのように「持っておけば1年に1度くらい必要となるようなあらゆることに対応できる」というツールでもある。ほかのライティングソフトの価格と比較しても、9450円(ロキシオ・ショップ価格)というのはかなりお得感が高い。PCを使いこなすユーザのたしなみとしても、持っておいて損はないだろう。
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