インタビュー
» 2010年10月02日 13時00分 UPDATE

Kaspersky Press Tour 2010(1):ネットの脅威はテロの時代に――ユージン・カスペルスキーに聞く (1/2)

ロシアのセキュリティベンダー、Kaspersky Labがドイツでプレスツアーを実施。ビールの祭典、オクトーバーフェストでミュンヘンの街が沸き立つ中、CEOのユージン・カスペルスキー氏に話を聞いた。

[後藤治,ITmedia]
og_kasper1_001.jpg Kaspersky LabのCEO、ユージン・カスペルスキー(Eugene Kaspersky)氏。葉巻が似合う

 ロシアの大手セキュリティベンダー、Kaspersky Labは、サイバー犯罪の現状や新たな攻撃手法など、最新のセキュリティ動向を伝える「Kaspersky Security Symposium」をドイツ・ミュンヘンで開催した。主に東欧で高い人気を誇る同社の製品は、ヨーロッパ全体での市場シェアを急速に拡大しつつある。イベント開催地となったドイツもトップシェアを占める国の1つだ。

 今回「Kaspersky Lab Okutoberfest Press Tour 2010」と銘打たれた同イベントは、名前の通り、世界最大のビールの祭典として知られるオクトーバーフェストの開催時期と重なっており、ミュンヘンの街は魅力的な衣装を身にまとった女性で溢れていた。お祭りムードが漂う中、イベントに集まった20カ国以上の報道関係者は、Kaspersky Labのセキュリティアナリストらとカジュアルな雰囲気で積極的に意見を交わしていた。

og_kasper1_002.jpgog_kasper1_003.jpgog_kasper1_004.jpg 世界最大のビールの祭典、オクトーバーフェストは2010年で200周年を迎える。地元のビールメーカーが設置した十数を超える巨大な仮設テントやスナックを販売する屋台、移動式の遊園地が立ち並ぶ。各テントの中では恐ろしい勢いでビールが消費されていた

og_kasper1_005.jpgog_kasper1_006.jpgog_kasper1_007.jpg オクトーバーフェストと聞いて思い浮かぶのはやはりあの民族衣装。Kaspersky Labの中の人は、用意されたタトゥーシールを張ってノリノリである。ミュンヘンでのプレスツアーを企画したドイツチームに敬意を表したい

 同イベントは、各分野のセキュリティ専門家によるプレゼンが複数平行して走るほど盛りだくさんな内容だったが、まずはKaspersky Labの最高経営責任者であるユージン・カスペルスキー(Eugene Kaspersky)氏のインタビューから紹介しよう。時間にして30分ほどのグループインタビューで、カスペルスキー氏が最新のセキュリティ事情について気さくに語ってくれた。


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―― しばらく前からサイバー犯罪は金銭目的になったと言われていますが、最近何か変化はありましたか

カスペルスキー まったく変わらない。サイバー犯罪もマルウェアもあいかわらず金銭を目的にしており、いずれも増加傾向にある。ただ、その内容はさらに組織化され、よりプロフェッショナルになっている。

―― ブラックマーケットの市場規模は金額ベースでどのくらいだと考えられていますか? 一部では非合法ドラッグを抜いたというリポートもあるようですが

カスペルスキー それは我々の調査ではないし、具体的な数字もないが、仮に例えそうだとしても驚くにはあたらないね。もっとも、南米のドラッグマーケットのほうがまだまだ大きいとは思うが。ただ、確かにロンドンの某銀行ではサイバー犯罪によって数百万ポンドが盗まれるという事例もあったし、ネット上で盗んだクレジットカード番号を利用した犯罪や、実際にATMから金が引き出されるという事件も起きている。ブラックマーケットの肥大化や組織化は深刻な状況だ。

―― スマートフォンやスレート端末が普及していますが、これらをターゲットにした脅威は?

カスペルスキー PCとスマートフォンを並べたとき、大きな違いがある。まず、PCはすでに多くのサービスが開発されている。例えばオンラインバンキング、オンラインゲーム、オンライン……全部だ。一方、スマートフォンはまだ発展途上でサービスが限定的なため、(犯罪者にとって)攻撃のチャンスはやはりPCのほうが大きい。ただ、スマートフォンでも今後そのリスクが増加する可能性は十分ある。

―― ちなみにMacはどうでしょう

カスペルスキー 今のところMacはオンライン犯罪者にとって魅力的な攻撃対象ではない。

―― それは単純にシェアのせいですか? それとも技術的な障壁でしょうか

カスペルスキー MacがWindowsよりもセキュアだということはまったくない。Googleが中国からサイバー攻撃を受けたことで、WindowsではなくMacやLinuxの使用を推奨したという報道があったが……真偽は分からないが、これは疑問だ。Macを攻撃する技術的な壁は何もないし、仮にWindowsのシェアが40%、Macが40%、そのほかが20%という状況になったらMac向けのトロイの木馬が増加するだろう。

―― ウイルス対策で定義ファイルベースの保護だけでは対処できなくなっていますが、将来的なセキュリティソフトはどのような機能を持つようになると考えてますか?

カスペルスキー 未来、というよりもすでに(2011年版で)実装されている機能だが、新しい何かではなく、これまでの技術の組み合わせだ。高度な定義ファイル、ヒューリスティックエンジン、クラウド、仮想環境(サンドボックス)、バーチャルキーボードなどなど、多岐にわたる技術や機能を組み合わせて脅威に対抗していくことになる。例えば車にはシートベルトだけでなくエアバックもABSもあるが、シートベルトがなくなったりはしないように、新しい技術が古い技術を排除することはない。

―― 先ほど出たサンドボックスはいい技術ですが、一方でシステムパフォーマンスを低下させるデメリットがあります。これに対して何かそれを軽減する機能や技術は? 例えば、GPUを補助的に使ったりとか

カスペルスキー これはちょっと、具体的な技術のディティールを知らないので、この場で答えるのは危険かもしれない。後で担当の技術者に聞いてほしい。

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