このように、今後、利用するユーザーがゲーム以上に多くなるだろうと思われるビデオ支援機能の性能に注目した場合、CPUコアへの負荷が高いベンチマークテストの結果とは異なり、第3世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーに統合したグラフィックスコアが、“Tick+”と呼ぶにふさわしい性能向上と省電力性を実現していることが分かった。
この、Tick+な進化はどのようにして実現したのだろうか。その鍵を、2011年9月に米国で開催された開発者向けイベント「Intel Developers Forum San Francisco 2011」(以下、IDF 2012)に知ることができる。
IDF 2012において、インテルでグラフィックスのアーキテクチャ開発を担当するトム・ピアザ氏は、第3世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーのCPU統合グラフィックスコアを拡張するにあたり、3Dグラフィクス性能だけではなく、「省電力で高品質、かつ、高性能なビデオ再生と形式変換の実現を目標とした」と説明している。また、インテルでビデオ支援機能の開発を担当するホン・ジアン氏は「第3世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーのビデオ支援機能では、消費電力を大幅に下げるようにする」と明かしていた。
具体的には、第3世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーに統合するグラフィックスコアに内蔵するマルチフォーマットコーデックエンジンを強化して、AVCフォーマットにおける動き補正などの高速処理を実現すべく、デコーダを改良するとともに、エンコードでは、積極的にシェーダに相当するEU(Execution Unit)に処理を回すことで、高速、かつ高品位なビデオ変換を可能にしている。
ピアザ氏が、第3世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーが“Tick+”である最大の理由として挙げられるのが、統合したグラフィックスコアの強化だ(写真=右)。マルチフォーマットCODECの拡張とメディアサンプラーのスループットの向上、スケーリングとフィルタリングの品質向上、そして、ピクセルバックエンドにイメージ補正とカラー補正能力を持たせ、演算実行ユニットや3次キャッシュメモリの増加などが進化をもたらす要因として取り上げられている。
この中で、特に重要とされているのが、第3世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーのビデオ支援機能で要となるマルチフォーマットコーデックエンジンだ。また、統合したグラフィックスコアに実装したQuick Sync Video 2.0のエンコーダでは、精度の高い動き補償によって、よりなめらかな動画を実現できるようになった。
このように、Quick Sync Video 2.0では、より高品質で、かつ、高性能なビデオ変換を低消費電力でできるようになったが、その性能を引き出すためには、「Intel Media SDK」によって、アプリケーションが第3世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーに最適化する必要がある。性能評価で、アプリケーションが「Quick Sync Video 2.0に“最適化”した」という説明をしていたが、この最適化とは、Intel Media SDKによって対応していることを指す。
性能評価の考察でも述べたように、最適化したアプリケーションは、Intel HD Graphics 4000に実装した演算ユニットなどをフルに利用して処理能力を高めるように設定されているので、その性能は格段に向上する。さらに、従来の第2世代Core プロセッサー・ファミリーに統合したIntel HD Graphics 3000などでも、性能が向上する傾向が確認できている。
インテルは、5月1日に、第3世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーに統合したグラフィックスコアにも対応する「OpenCL Development Kit」の提供を開始しているが、ビデオ処理関連のアプリケーションを開発する関係者の1人は、「この機能を有効にすることで、ビデオ変換や編集機能は、さらに高性能と高画質化を図ることができる」と期待している。
その意味で、今後も増えていくであろう第3世代インテルCoreプロセッサー・ファミリー対応アプリケーションの動向に多くのユーザーは期待してほしい。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年6月30日