インタビュー
» 2012年06月29日 15時00分 UPDATE

1キロを切る11.6型Ultrabook:軽さへの挑戦――「LuvBook X」誕生秘話 (1/2)

マウスコンピューターが満を持して投入した「LuvBook X」は、アルミ外装のやや重いUltrabookが主流となるなか、3面カーボンファイバーを採用することで985グラムの軽量ボディを実現した注目の製品だ。製品担当者に開発の経緯やモバイルPCへの想いを聞いた。

[後藤治,ITmedia]
og_x_001.jpg 重さ1キロを切る薄型軽量ボディと、カーボンボンネットの美しいデザインが目を引く

 6月15日から販売が始まったマウスコンピューターの11.6型ノートPC「LuvBook X」は、ボディ3面にカーボンファイバーを採用し、重量約985グラムを実現したUltrabookだ。同社初のUltrabookとしてその後発らしい“尖った”仕様に注目している人も多いだろう。LuvBook Xの製品企画を担当したマウスコンピューター開発本部製品企画部の平井部長に話を聞いた。

 なお、すでにPC USERでは(正式発表前の試作機ながら)レビューを掲載しているので、製品の詳細はそちらを参照してほしい(関連記事:求めたのは圧倒的な軽さ――重さ1キロを切る11.6型Ultrabook「LuvBook X」)。

2年前に始まった製品企画、しかし開発は一時保留に

 LuvBook Xの開発は2年前にさかのぼる。つまり、もともとLuvBook XはUltrabookを指向した製品ではないということだ(インテルがUltrabookを提唱したのは、2011年に行われたCOMPUTEX TAIPEIなので、当時その言葉は存在しなかった)。

og_x_002.jpg マウスコンピューター開発本部製品企画部部長の平井健裕氏

 「実はLuvBook Xは、CULVノートPCと呼ばれていた製品の延長として企画がスタートしました。当時のCULVノートPCは、Netbookに続く新しいモバイルノートPCのカテゴリとして注目されていましたが、バッテリー駆動時間が短かった。また、重量面でも、それまで国内PCメーカーが作っていたような軽さを追求した製品は少なく、画一的なものが多かった印象があります」と平井氏は当時を振り返る。「そこで私たちは、持ち運びに適した、軽くてきちんと使える製品を作りたいと考えていました。1キロを切る、という目標はスタート時からめざしていたものです」。

 しかし、低価格を武器に市場を席巻したNetbookから、より高性能なCULVノートPCへの移行は、Montevina世代(Core 2世代)でこそ順調に見えたものの、Calpella世代(Core i世代)で失速してしまう。このときマウスコンピューターには2つの選択肢があった。「まず1つは、LuvBook Lシリーズをさらに薄型化していく方向性。これが後のLuvBook Xにつながります。そしてもう1つが、同じく11.6型ながらCPUを換装可能にし、BTOでより高性能な構成も選べるLuvBook Sです」と平井氏は語る。

 そこでマウスコンピューターが選んだのは後者だった。「確かに2年前でも“ごり押し”すればLuvBook Xを作れないことはありませんでした。しかし、非常に薄く軽く作っていくと、トレードオフの部分が大きくなってしまう。特に価格面では、当時から10万を切る価格で出すという目標があったので採算がとれなかった。そして開発はLuvBook Sに傾いていき、時流に合わなくなったLuvBook Xは一時保留の状態になってしまいました」と平井氏。

og_x_003.jpgog_x_004.jpg 11.6型のボディに通常電圧版のCore i7を搭載する「LuvBook S」シリーズ。幅広いBTOに対応し、高性能なモバイルPCを求めるユーザーから支持された

 しかし、この選択はある意味では正解だったかもしれない。Ultrabookでは後発となったマウスコンピューターだが、11.6型のコンパクトなボディに標準電圧版のCore i7を搭載するパワフルなLuvBook Sは、性能重視のモバイルPCを求めるユーザーからは高い支持を集め、一定の成果を残している。「ただし」と平井氏は続ける。「その一方で、軽いモバイルPCに対する想いは残っていました。かつて国内メーカーが作っていた1キロを切る軽量ノートPCを思い出したとき、その価値は必ずあるだろうと。マーケットは1.3キロ以上の製品が主流になっていましたが、ニーズや顧客がいなくなったわけではなく、主に価格とのトレードオフが問題になっていたのだと思います」。そしてインテルがUltrabook構想を発表したとき、LuvBook Xの開発が再スタートを切った。

「シールって重いんですよね」――1キロを切るために

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 前述のとおり、LuvBook Xの開発において「1キロ以下」というマジックワードは最初から設定されていた。この点で、カーボンファイバーの採用は必然だったといえる。開発を決定づけたのも、カーボンの金型工場を持つ強力なパートナーの存在がきっかけだった。しかし、本格的に再スタートを切ったのは2011年末。すでに競合メーカーは、第1世代のUltrabookを相次いで投入していた。あせりはなかったのだろうか?

 「後発だからこそ重さを追求する必要はありました。モックではさまざまな素材を試し、カーボンも決してコストは安くないのですが、重量面も含めたトータルバランスに優れている。そしてようやく最初のプロトタイプができたのは2012年初頭のCESのタイミングです。実はCESの関連ブースでこれが展示されていたと後になって知りました。メディアに取り上げられなかったようなので、誰にも気づかれませんでしたが……あせりましたね」と平井氏は笑う。

 3面カーボンファイバーが現実化したことで、デザインも固まった。平井氏は「カーボンといえば、カーボンボンネットしか頭になかったです。UV加工を施した艶やかなデザインは、こうした製品を求める層には受けると思っていましたし、反応を見ても狙い通りです。ただ、ギラギラしているとか、指紋が目立つといった否定的な意見もないわけではありませんが……」と付け加える。

og_x_006.jpg UVコーティングを施した光沢感のある外装。カーボン繊維のパターンがデザイン上のアクセントになっている

 カーボン繊維の層をデザインに取り入れたLuvBook Xの外観は、非常に完成度が高いと感じるが、実は色を塗ったモデルも検討していたという。「ホワイトなど女性受けがしやすそうなカラーリングですね。しかし、色を塗るとその分だけ重くなってしまうということで見送っています。今回、軽量さを追求するにあたってつくづく感じたのは、シールも重いんだな、ということ。ロゴシールやシリアルシールで3〜4グラムは変わりますから」と平井氏はしみじみと語る。実際、編集部で製品版の重量を実測したところ、公称の985グラムではなく991グラムになっていた。「なので、お客さまが使用する際にきちんと1キロを切るためには999グラムではだめなんですよね」(平井氏)。

 ACアダプタも重量を優先してウォールマウントプラグのない正方タイプを採用した。「ノートPCと一緒にACアダプタを持ち歩くなら、重量はノート本体とACアダプタや電源ケーブルとの合計で考える必要があります。ですので、とにかくケーブルをくるくると巻けて、カバンに入れてもじゃまにならないものを選びました。とはいえ、その構造上、コンセントの配置によっては干渉してしまうという問題も認識しているので、次のモデルでは電源ケーブルを付け替えられるタイプなども検討しています」とのことだ。

 なお、液晶ディスプレイのフレームデザインは、最終試作機でカーボンを強調するデザインだったが、歩留まりの悪さから製品版では塗装したものへと変更されている。

og_x_010.jpgog_x_011.jpg ベースとなったLuvBook L(左)とLuvBook Xの試作機(中央)、そして量産機(右)。先端部分を見ると、開発の過程で薄くなっていくのが分かる

 なお、LuvBook Xの発表からほどなくして、13.3型(1600×900ドット)で1キロを切る「LaVie Z」の投入がNECから予告されたことについて聞くと、「あのモデルが出てきたことによって、LuvBook Xで求めた軽さ、これまでのUltrabookにはない軽さに対して、消費者の目が集まるきっかけになったと思います。あれが出てきて本当によかった。サイズが違うのでライバルといったらおこがましいですが、国産ノートPCが得意だった“軽さ”をめざす、同じ方向性の製品として歓迎しています」とコメントしてくれた。

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