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» 2012年11月29日 16時28分 UPDATE

買い替える価値アリ:老舗のこだわりを凝縮した一手――定番ドキュメントスキャナの新モデル「ScanSnap iX500」を試す (1/3)

“自炊派”層から圧倒的な支持を得ているPFUのドキュメントスキャナ「ScanSnap」シリーズに約3年9カ月ぶりのフラッグシップ機が登場した。光学系を変更し、専用画像処理プロセッサを搭載するなど、飛躍的な進化を遂げている。

[瓜生聖,ITmedia]

3年9カ月ぶりに登場したフラッグシップ新モデル

og_scansnap_001.jpg 「ScanSnap iX500」。自炊の定番ツールに久々のフラッグシップモデルが登場した

 何度も耳にした「電子書籍元年」という言葉。2012年はついに「ホンモノ」と目されているようだ。「Kindle HD」や「iPad mini」、「Kobo」など、携帯性と視認性を両立させ、単体で購入処理から保管まで可能なガジェットが出そろい、流通の問題も徐々に解決しつつある。とはいえ、すでに紙媒体で所有している書籍の電子化については著作権者側からのアプローチはほぼないに等しい。音楽がCDからiTunesストアなどによるダウンロード販売に移ったときには各個人がリッピングを行い、MP3化した楽曲を楽しんだ。同様に、電子書籍でも過渡期である今は紙媒体からの変換をしたいというニーズがある。いわゆる“自炊”だ。

 その自炊用ツールとして長らく「定番」となっていたドキュメントスキャナがPFUの「ScanSnap S1500」である。S1500はA4原稿を50枚セットできるうえ、毎分両面20枚の読取り速度(エクセレントモード除く)を実現するなど、定番とされるにふさわしい性能を誇っているものの、すでに発売から3年9カ月が経過している。それだけの長期に渡って陳腐化しないスペックはさすがではあるが、その間、電子書籍だけでなく、クラウドサービス、タブレット端末、スマートフォンが普及し、周囲の環境は大きく変化した。“電子書籍元年”後のScanSnapフラッグシップモデルを待ち望んでいた人も多いだろう。

 そして満を持して登場したのがここで紹介する「ScanSnap iX500」だ。型番をがらりと変えたネクストジェネレーションモデルに期待も高まる。

フラッグシップモデル初の等倍光学系

 シルバーを基調としたヨーロピアンテイストのS1500から一転して、iX500はマットブラック一色となった。シルエットこそS1500に似ているものの、より直線的なフォルムになり、精悍な印象だ。カバーを開くとブルーに発光するScanボタンの横にWi-Fiインジケータがあるのが分かる。この状態でもスキャンは可能だが、さらにスタッカを開くとScanSnap iX500のロゴが光るピアノブラックの面が現れる。カバー縁の金属パーツを除くと黒で統一されており、フラッグシップモデルの威厳すら感じさせるデザインだ。

og_scansnap_002.jpgog_scansnap_003.jpg カバーを開いたところ。青く発光するScanボタンの隣にWi-Fiインジケータがある。アクセスポイント接続時には青く光る(写真=左)。さらにスタッカを開いたところ。ピアノブラックの面が現れ、ScanSnapのロゴが青く発光する(写真=右)

og_scansnap_003-2.jpgog_scansnap_003-3.jpg 本体サイズは292(幅)×159(奥行き)×168(高さ)ミリ。設置面積はS1500と同じだが、1センチほど高くなった

 iX500では大きく光学系が変わっている。今までフラッグシップモデルでは非球面レンズ縮小光学系/CCDの組み合わせが採用されていた。これはデジカメと同様に画像をレンズで縮小してイメージセンサに入力するもので、コンパクトさには欠けるものの、被写界深度が深いという特徴がある。一方、S1100やS1300iなどコンパクトモデルではセルフォックレンズ等倍光学系/CISが使用されてきた。等倍光学系はレンズで収束させず、等倍のままレンズに密着させたイメージセンサに入力する。コンパクトにできる半面、被写界深度が浅くなる。

 一般的にはCCDのほうがCISより画質がよいと言われているが、iX500ではCCDを採用したS1500と同等以上の画質を実現している。S300ではRGBの各LEDの点灯タイミングを調整することで色ずれを抑え、さらに画像処理を加えることで画質を向上させていたが、iX500ではS300で1ラインだったCISをRGB別の3ラインに配置することで調整・補正なしでも高画質を可能にした。

 また、この光学系の変更は消費電力の大幅な削減をもたらしており、S1500と比較すると動作時で35ワット以下から20ワット以下に、待機時では4.5ワット以下から1.6ワット以下(Wi-Fiオフ時)を実現している。ACアダプタの出力も24ボルトから16ボルトに下がっており、アダプタそのもののサイズもかなり小型化された。その一方で、本体自体のコンパクト化はなされておらず、むしろ高さが158ミリから168ミリと、1センチほど高くなっている。

 おそらく、光学系の小型化で空いた分を駆動系、特に重送を回避するための機構に割り当てているのだろう。実際にカバーを開けてみるとローラーの数が増えていることが分かる。S1500では裏面側に幅広なピックローラーが1つ、フィードローラーが2つ、排出ローラーが2つ、表面側にプラスチックローラーが4つの計9つだった。iX500ではピックローラが溝の掘られた2つのローラーに変更され、表面側に新たにScanSnapシリーズでは初めての採用となるブレーキローラーが配置されたため、計12ものローラーが搭載されていることになる。また、これらのローラーがほぼ同一平面上にあり、安定した高速な紙送りを実現すると同時に、0.76ミリまでのプラスチックカードも読み込むことができるようになった。免許証やカード型の保険証は一度取り込んでおくと身分証明書のコピーを送付するときに楽だ。

og_scansnap_004.jpgog_scansnap_005.jpg iX500内部。ピックローラが2分割され、それに呼応する場所にブレーキローラが設置されているのが分かる(写真=左)。カードを読み込む際は重なり検出されることがままある。読み込み自体は完了しているので「残す」を選択して「読み取り中止」をクリックすればよい(写真=右)

 そのほか、スタッカを持ち上げると背面上部が後ろに倒れるが、その押し出し用の突起がS1500では左端にあったものがiX500では中央と左端から2センチほど内側の2カ所に増設、移動されている。S1500では外装部分が突起と接触し、引っかかりの原因ともなっていたが、これが解消されており、カバー開閉がスムーズになった。

og_scansnap_006.jpgog_scansnap_007.jpg 背面カバーは、端から2センチ程度のところにある突起によって後ろに倒れる仕組み。もう1つ、中央部分にも突起がある(写真=左)。一方、S1500の背面カバーの突起は外装部分にある。前面カバーとひっかかりやすく、使っているうちに塗装が剥げている部分も見られる(写真=右)

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