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» 2013年03月20日 00時00分 UPDATE

Ultrabook、液晶一体型PCへの採用を目指す:タッチ対応PCのコストダウンに寄与――40点タッチ対応の新方式タッチパネルに期待

ダイアログ・セミコンダクターが赤外線を用いた新たなマルチタッチ検知技術を紹介。最大で40点のマルチタッチに対応し、低コストで量産が可能という。

[池田憲弘,ITmedia]

低コスト&40点マルチ対応の新型タッチパネル

photo Dialog Semiconductorの事業開発&戦略担当バイスプレジデントのマーク・ティンドール氏

 ダイアログ・セミコンダクターは3月19日、ノートPCやデスクトップPCに適用可能なマルチタッチディスプレイセンサーIC「SmartWave」を発表した。スマートフォンやタブレットの多くで採用されている静電容量方式とは異なり、カバーガラス内に通した赤外線でタッチを検出する新技術だ。

 同日行われた発表会では、米本社の事業開発&戦略担当バイスプレジデントのマーク・ティンドール氏が技術の解説や、開発の背景を説明した。

 ティンドール氏はまず、PC市場の現状について「ノートPCの形が薄型軽量のUltrabookへと移行しつつある今、インテルやマイクロソフトがPCのタッチ機能に注力している。現在売り上げが伸び悩むPC業界で、成長しているのはUltrabookなど薄型PCの分野だ。タッチ機能を備えたノートPCが今後のPC市場を支える」と述べた。

photo Ultrabookの売り上げは伸びている

 しかし、薄型ノートPCにタッチパネルを内蔵するとコストが増えるため、メインストリーム層向けの比較的安価なUltrabookには導入しにくい現状もある。「例えば、静電容量方式を用いたタッチパネルを14型ワイド液晶ディスプレイを備えるUltrabookに導入すると、通常よりも60ドル(日本円換算 約5700円、2013年3月20日現在)ほどコストが高くなる。メインストリーム層向けUltrabookの相場は600ドル程度であることを考慮すれば、60ドルというコストは大きい。同社のタッチ製品を使えばコストを40ドル(日本円換算 約3800円、2013年3月20日現在)程度まで落とせる」(ティンドール氏)とした。

 コスト面以外にも、現在製品化しているタッチ技術は、「Windows 8を搭載するメインストリーム向けUltrabookなどに採用しにくい」という。ティンドール氏が述べたメインストリーム向けUltrabookに必要とされるタッチシステムの条件は、以下の3点。

  • 5点マルチタッチに対応する
  • ボディが厚くならない
  • コストが安い

 この条件に照らし合わせると、例えば感圧(抵抗膜)方式はコスト面では有利だが、5点マルチタッチに対応できないほか、抵抗膜が光の透過を防ぐため、スクリーンの透過性が落ちる。ディスプレイ表面に超音波を発生させてタッチを検知する超音波(表面弾性波)方式もマルチタッチに対応しない。また、周囲に音波を発生するユニットを取り付けるため、ディスプレイのフレームが広くなり重量が増すほか、センサーが敏感で誤操作が起きやすいデメリットもある。

photophoto 感圧式タッチパネル(写真=左)と超音波方式タッチパネル(写真=右)の特徴

 スマートフォンやタブレットで多く採用されている静電容量方式は、5点マルチタッチに対応し、フレーム幅も狭くできるが他の方式に比べてコストが高い。特に11型以上のサイズになるとコストが上がってしまうという。赤外線を液晶表面に照射し、カメラを用いて赤外線の乱れを検知する画像処理タイプも5点マルチタッチに対応するが、カメラを搭載するためフレームの幅や厚みが増えてしまう。

photophotophoto 静電容量方式タッチパネル(写真=左)と画像処理タイプのタッチパネル(写真=中央)の特徴。5点マルチタッチ、薄型ボディの維持、コストという3つの条件をクリアするタッチパネルは今のところ存在しないという(写真=右)

 その上で「新方式のSmartWaveはこれらの条件をすべてクリアする」とティンドール氏はアピールする。SmartWaveを使う新しいタッチ検出方式は、カバーガラス内全体に赤外線を通し、カバーガラス表面を指で触れたときに起こる赤外線の乱れを、受信機が検知してタッチ位置を特定する仕組みだ。必要な発信装置と受信装置の数はディスプレイのサイズによって異なり、14型なら72個、23型なら約100個づつ必要で、最大32型まで対応するとしている。

 新方式では細かな圧力の検知にも対応する。「力の入れ具合によって指表面の水分や指紋の影響で赤外線の乱れ方が異なる」とのことで、1024段階の判別が可能だ。タッチの解像度は400dpiとなる。もちろんマルチタッチにも対応しており、32型までならどの画面サイズでも40点同時タッチを認識する。表面を触れることでタッチを検出するため、手袋を装着した状態やスタイラスでも利用可能だ。消費電力については、具体的な数値は公開されなかったものの、「静電容量方式と同等かやや低い」(技術担当者)としている。

photophoto SmartWaveはカバーガラスの中に赤外線を通して、タッチ位置を検出する仕組みだ(写真=左)。最大で40点のマルチタッチを検出する(写真=右)

 赤外線の発信/受信装置、そしてそれらを制御するSoC(System on Chip)である「SmartWave」を備えたプリント基板をカバーガラスの裏に装着して使用する。静電容量方式のようにITOレイヤー(透明な金属膜)などの新たな層を追加しないことから、透過性は液晶ディスプレイ本来の性能となり、光量が落ちることもない。基板の厚みはおよそ1.5ミリとなっている。

photophotophoto 赤外線の発信/受信装置、そしてそれらを制御するSoC(System on Chip)である「SmartWave」を備えたプリント基板をカバーガラスの裏に装着する

 現在、SmartWave採用に向けて大手PCベンダーや液晶ディスプレイやパネルベンダーと交渉を行っており、「まず液晶一体型PCでの採用を目指し、その後Ultrabookへの採用を目指す」(ティンドール氏)という。なお、静電容量方式が一般的となっているタブレット/スマートフォン向けのサイズ(10型未満)に提供する予定はないとのことだ。

 今後の動きについては2013年半ばにはSmartWaveのサンプルをベンダーに提供、2013年第3四半期に量産化という予定を立てている。「2014年春のタイミングでSmartWave搭載製品が発売されれば」とティンドール氏は述べた。Windows 8登場以降、タッチパネルの供給不足が叫ばれて久しいが、SmartWaveの登場によりタッチパネル不足が解消し、タッチパネル搭載モデルが、非搭載モデルとあまり変わらない価格で提供される(タッチパネル搭載モデルがさらに安くなる)可能性は十分にある。早期の実用化に期待したい。

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