「11ac」はどれだけ速いか──「11ac対応」スマホ&タブレット&PCでまるごとチェック自宅ルータ“11acに買い換え”計画(1/4 ページ)

» 2013年07月29日 17時00分 公開
[太田百合子(撮影:市原達也),ITmedia]
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最新、最速の無線LAN規格「Draft 11ac」をスマホ&PCで試す

photo Draft 802.11ac対応の無線LANルータ「AtermWG1800HP」「AtermWF800HP」と、2013年夏に新たに登場した802.11ac対応スマートフォン、PC、タブレット

 スマートフォンやタブレット、PCの通信に欠かせない「無線LAN」。PCでのインターネット利用はもちろん、スマートデバイスでも大容量アプリのダウンロードやアップデート作業時には、LTE/3Gサービスでなく高速かつ安定して通信できる無線LANの利用を推奨する通信事業者も多い。

 そんな無線LANが“もっと高速・快適”になる新たな規格「802.11ac」が2013年3月に登場。親機となるブロードバンドルータ機器に加え、子機となるスマートフォンやノートPCにも「11ac」対応モデルがぞくぞく増えてきた。

 さて、無線LANにはいくつかの規格がある。スマホやPCのスペックとして「IEEE802.11b/g/n準拠の〜」といった記述を見たことがあると思うが、通信の前提条件として親機となるWi-Fiルータ、子機となるスマートフォン、タブレット、PC、携帯ゲーム機などがそれぞれその規格に対応している必要がある。上記の場合は、IEEE802.11b(最大11Mbps/1999年策定)、同11g(最大54Mbps/2003年策定)、同11n(規格理論値最大600Mbps/2009年策定)対応の機器で利用できますという意味だ。2013年7月現在、新規購入できる無線LAN対応機機はほぼすべてがこの3つの規格には対応している(ただし11n対応機器はアンテナ実装数の違いにより、多くの個人向け機器では最大150Mbps、あるいは最大300Mbpsとなる)。

 この対応無線LAN規格の仕様において、2013年現在、最も新しく、最も高速なのが「802.11ac」だ。これまで主流だった「802.11n」の理論値最大速度とする600Mbps(個人向け製品としては450Mbpsまで)の10倍以上にあたる「理論値最大6.9Gbps」に達するポテンシャルを持ち、無線LAN通信もギガビットクラスで実通信できる道筋がこれにより見えてきた。例えば、4K解像度クラスの映像データなど、これまでは荷が重かった“超”大容量のコンテンツも快適に無線通信経由で再生できるようになる。

 なお802.11acは現時点、正しくは“Draft 802.11ac”と記述する。Draftとは標準化前の暫定版を意味。無線LANの規格はIEEE(米国電気電子技術者協会)が標準化を進めており、IEEEによる最終規格策定が2013年7月時点ではまだ完了していないためだ。ただし、対応機器ベンダー関係者によると「もうすぐとされる最終規格策定後、ソフトウェアアップデートなどにて正式仕様をカバーできる/現時点の機器もこのまま802.11ac正式対応にできるとみている」という。この状況により、先行して登場したWi-Fiルータ機器(親機)に加え、2013年夏商戦向けモデルでスマートフォンやタブレット、PCなど子機側の対応モデルも一気に登場した。

 というわけで今回は「Draft 802.11ac」(以下、Draftは省略)対応ルータと、今夏一気に増えた「Draft 11ac対応」(以下、Draftは省略)スマホ、タブレット、PCを対象に、2013年7月13日までに国内発売された機器を可能な限り集め、その設定手順と速度の実力値をまとめてテストした。

11ac対応ルータについて

 では早速、11ac対応Wi-Fiルータに、同じく11ac対応のスマートフォン、タブレットを接続するための「802.11ac対応ルータ」を用意しよう。

 今回のテストでは、親機にNECアクセステクニカ製の11ac対応Wi-Fiルータ「AtermWG1800HP」と「AtermWF800HP」を使用した。

photophoto 3ストリームでの802.11ac通信が行える上位モデル「AtermWG1800HP」(左)と1ストリームでの802.11ac通信に対応するスマートフォン向けモデル「AtermWF800HP」(右)Atermシリーズは2機種ともアンテナ内蔵型とし、かなり小型のボディで設置性が良好なのも特長。AtermWG1800HPは、33(幅)×111(奥行き)×170(高さ)ミリ、重量は約400グラム(ACアダプタを除く)。AtermWF800HPは約33(幅)×97(奥行き)×146(高さ)ミリ、重量は約200グラム(ACアダクタを除く)となる

 AtermWG1800HPは最大1300Mbpsでの通信に対応する802.11acとともに、これまでの802.11a/b/g/nにも対応し、5GHz帯(802.11a/n/ac)と2.4GHz帯(802.11b/g/n)を同時に利用できる個人向けのハイエンドモデル。AtermWF800HPは11ac(Draft)対応のWi-Fiルータとしては国内最小クラスのボディを実現し、実売1万円を切るリーズナブルな価格帯も魅力とする新モデルだ。

802.11ac(Draft)対応ルータの仕様 理論値最大速度
1ストリーム対応モデル(1×1 MIMO) 最大433Mbps
2ストリーム対応モデル(2×2 MIMO) 最大867Mbps
3ストリーム対応モデル(3×3 MIMO) 最大1300Mbps

 2013年7月現在の802.11ac対応ルータは、対応する最大速度(MIMOアンテナ数/対応ストリーム数)により、大きく3段階のスペックに分かれている。表中の3×3 MIMOとは、親機に3つ子機に3つのアンテナを用いた通信に対応することを示し、数が多いほど通信速度の仕様が高くなる=高性能であると考えてほしい。詳細の説明は『特集:「IEEE802.11ac」とは何か』を参照いただければ幸いだ。

 AtermWF800HPは、このうち「1ストリーム通信」に対応するベーシックモデルで、理論値最大速度は433Mbpsとなる。前述したようにMIMOによる高速化を実現するには、親機/子機ともに同じ複数のアンテナを備えている必要があるのだが、スマートフォンやタブレットのような小型の機器には、スペースの都合上 MIMOのためのアンテナを複数実装するのが難しい事情がある。今回テストした11acスマートフォンはすべて1ストリーム(1×1 MIMO)対応である。従って、スマートフォン、タブレットなどポータブル機器のみで使用するのが目的であれば、コンパクトかつリーズナブルな価格で導入できる本機もお勧めである。


photophoto 本体裏面に初期設定のSSIDが記載されている。後で説明する設定手順では、ここを参照してほしい。AtermWF800HPには、「AtermらくらくQRスタート」用となる製品個別のQRコードも記載されている(写真=左) 本体側面にはWANポート、有線LANポート(1800HPはギガビット×4、800HPは100BASE-T×3)、動作モード切り替えスイッチを実装。ほか、1800HPはUSB 2.0(簡易NAS機能用)、800HPは「らくらくスタート」ボタンがある(1800HPの同ボタンは本体前面に実装)
photo 本体は横置き、壁掛け(裏面にフック穴がある)も可能だ

 さて、802.11acでの設定方法は、基本的に従来の方法(802.11nなど)と変わらない。設定画面でWi-Fiを有効にすると表示される、SSID(無線LANルータの識別名称)のリストから、ルータ固有のSSIDを選択し、暗号化キー(パスワード)を入力すれば完了だ。

 なお、本機の後面には、初期設定としてプライマリ(メイン)とセカンダリ、それぞれ2.4GHz帯と5GHz帯用、計3つの異なるSSIDがあらかじめ記載されている。802.11acは「5GHz帯のみ」を使うので、これらのうち、5GHz帯用のプライマリSSIDを選択しよう。「aterm-XXXXXX-a」(XXXは製品固有の文字列)と書かれているのがそれだ。なお裏面に記載はないが、5GHzのセカンダリSSIDも用意され、計4つの異なるSSIDを使用でき、2.4GHz帯の機器も同時に利用可能だ。2.4GHz帯は、802.11ac対応ではないこれまでのスマートフォンや携帯ゲーム機用として活用するとよいだろう。

 Atermシリーズは簡単無線LAN設定機能として、Wi-Fi標準の「WPS」およびNEC独自の「Atermらくらくスタート」に対応しており、ルータのらくらくスタートボタンを押すだけで容易に設定できる。こちらは、スマートフォンまたはタブレット、PCを待機状態にし、「らくらくスタート」と書かれた本機側面のボタンを長押しするだけでOK。ボタン操作により暗号化キーが自動的に登録される仕組みとなっており、暗号化キーの入力の手間がかなり省ける。

photophoto AtermWG1800HPは前面、AtermWF800HPは後面に「らくらくスタート」ボタンがある

 このほか、初心者層にはNECアクセステクニカが提供するスマートフォンアプリ「Atermらくらく無線スタートEX for Android」を使う方法もお勧めだ。実際に行う手順は上記と同じだが、「本体のグリーンランプが点滅したら“らくらくスタート”ボタンを長押し──」といったように、スマートフォン画面に表示される手順を確認しながら設定できる。

 では、11acスマートフォン各モデルでの設定手順を改めて確認しよう。


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