「ウイルス対策ソフトはサポート切れのXPを守れません!」 業界を挙げて移行を訴求

» 2014年02月13日 15時42分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 MicrosoftによるWindows XPのサポート終了まで残り55日――日本マイクロソフトと経済産業省、セキュリティソフト各社は2月13日、Windows XPユーザーに向けてサポートが継続されるWindows Vistaなどへの移行を改めて呼び掛けた。XPのサポートは日本時間の4月9日に終了する。

マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者の加治佐俊一氏

 今回の呼び掛けは「情報セキュリティ月間」の一環として行われたもの。会見したマイクロソフトの加治佐俊一 最高技術責任者は、XPと現在のOSにおけるセキュリティ対策の取り組みについて、「XPが発売された2001年はインターネット普及が本格化した時期にあたり、脆弱性の修正パッチを提供する体制ができ上がった。現在は常時接続が当たり前で常にサイバー攻撃のリスクに晒されているため、OSに多層的な対策を設けている」と説明した。

 今回のXPのサポート終了とは、Microsoftから脆弱性を修正する修正パッチが提供されなくなることを意味する。高橋正和 チーフセキュリティアドバイザーは、「サポート終了後に継続利用されるとセキュリティなどのリスクを抱えるので、最新環境に移行していただきたい。XPのマルウェア感染率はWindows 8の21倍も高い(同社調べ)」と述べた。

Windows XPとWindows 8.1でのOSにおけるセキュリティ対策構造の違い(マイクロソフト資料より)

 XPのサポートが終了してもMicrosoftは、2015年7月14日(米国時間)までは同社製のセキュリティソフト「Microsoft Security Essentials」でXPユーザー向けの定義ファイルの配信を継続する。一部のセキュリティソフトメーカーも同様の対応を表明している。しかし各社の施策は、あくまで期限までに他のOSへ移行できないユーザーのための最低限度の措置という位置付けになっている。

 カスペルスキーの川合林太郎 社長は、「ウイルス対策ソフトはサポート期限の切れたOSを守れない」と明言。同氏によれば、OSのサポートとは、いわば家屋の構造を守ることに当たり、ウイルス対策ソフトは家屋の周辺を守る存在。「構造自体を修理できないとなれば、周辺だけの保護には限界がある」(川合氏)という。

 会見したトレンドマイクロの大三川彰彦 副社長は「どうしても移行が遅れる場合は、ネット接続しない、用途を限定するなど方針を検討してほしい」、FFRIの鵜飼裕司社長は「XPの“延命措置”として多数の相談を受けているが、修正パッチ以上の対策は無い」、エフセキュアの富安洋介 プロダクトマネージャーは、「一刻も早く移行を進めてほしい」とそれぞれコメント。JPCERT コーディネーションセンターの満永拓邦 情報セキュリティアナリストは、「パッチマネジメントはセキュリティ対策の基本中の基本で、最も効果的」と解説する。

 ユーザー別にどんなセキュリティリスクが待ち受けているのか。コンシューマに向けて、マカフィーの本橋裕次 サイバー戦略室長は「警察庁によれば2013年はオンライン詐欺の被害額が過去最悪の14億円になった。被害者の大半がセキュリティソフトを使っていなかったといわれるので、セキュリティソフトを正しく利用してほしい」と話す。企業ユーザーに対して、シマンテックの岩瀬晃マーケティング 統括本部長は「標的型サイバー攻撃に遭った企業の31%は社員1〜250人の中小企業。大企業が狙われるというのは間違った認識」と警鐘を鳴らす。

XPユーザーに向けた“お願い事”

 マイクロソフトは、サポート終了時点における国内のXPユーザーを、全PCユーザーの約1割にあたる750万台まで引き下げたい考え。経済産業省の上村昌博 情報セキュリティ政策室長は、「政府の成長戦略にITは不可欠であり、特にサイバーセキュリティ対策は根幹の政策。官民を挙げて移行を推進したい」と述べている。

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