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» 2014年03月14日 17時00分 UPDATE

ワタシはどのモデル/構成を選べば幸せ?:自宅Wi-Fiを高速な「802.11ac」にしましょう──事例別「802.11acホームルータ」導入ガイド(前編) (1/3)

“より高速・快適”になる無線LANの最新規格「802.11ac」対応機器がいよいよ普及しはじめてきた。今回は仕様/導入シーン別に802.11acルータのラインアップを拡充するNECのAtermシリーズを例に、「自宅ではどんなルータを、どんな構成で選ぶとよいか」を考察しよう。

[坪山博貴(撮影:矢野渉),ITmedia]

事例別 「IEEE802.11ac対応無線LAN製品」導入ガイド

 2013年にDraft規格に対応することで製品化されていた無線LANの新規格「IEEE802.11ac」(以下、11acと略)。2014年1月に「IEEE802.11ac-2013」として正式認証され、Draft規格に準じて発売されていた製品の多くが晴れて正式な802.11ac対応製品として利用できるようになった。

photo 今回評価した11ac対応製品群 左から「Nexus 5」(11ac対応スマートフォン)、「AtermWF1200HP」(無線LAN中継機能搭載2ストリーム11ac対応ルータ)、「AtermW500P」(有線LAN付き11ac対応ホテルルータ・AV機器向け11ac子機 ブラック/ホワイト)、「AtermWG1800HP」(3ストリーム11ac対応最上位ルータ)、「AtermWL900U」(2ストリーム11ac対応PC向けUSB子機)

 この流れととともに、据え置き型の無線LANルータ製品に加え、クライアント側(PCやスマートフォン、タブレット)にも11ac対応(モジュールを内蔵)化がグッと進んでいる。PCにおいては、インテル製内蔵無線LANモジュール「Dual Band Wireless-AC 7260」(2ストリーム通信対応/最大867Mbps)を中心に2014年発売の新モデルはミドルクラスのモデルも11ac対応が進んでいる。スマートフォン/タブレットにおいてもQualcommの「SnapDragon 800」シリーズが11acを標準でサポートし、同じく11ac内蔵モデルがぞくぞく増えてきた。単体の11ac対応(当時はDraft)の無線LAN機器/ホームルータが発売されてから約1年、11acはいよいよ普及の段階に入ったといえる。

 改めてIEEE802.11acとは何か。2014年1月に正式策定された5GHz帯を使用する無線LANの新規格で、理論値最大約7Gbpsを実現する高速さが特長。チャンネルボンディングによる周波数帯域の拡大(最大160MHz幅)、通信の多重化(最大8×8 MIMO)、変調方式の多値化(256QAM)、フレームアグリゲーション(隣り合うチャンネル/送信データを束ね、フレーム単位で一度に送れるデータ数を増やす手法)などにより高速化を実現する。

 規格や技術の詳細については、詳細をできるだけ分かりやすく解説するよう努めた『特集:ついにやってくるギガビット無線LAN:「IEEE802.11ac」とは何か』を、802.11ac対応スマートフォン、PC、Mac、タブレットはどんな機種があるか、どのように接続するかの手順は『「11ac」はどれだけ速いか──「11ac対応」スマホ&タブレット&PCでまるごとチェック』、モバイルシーン向けのLTEポータブルルータについては『もしかして“無双”? ツウ好みの高性能LTEルータ「AtermMR03LN」をねっとりチェック』も参照いただきたい。

 PCで、スマホで、タブレットで、AV機器で──。無線LANの活用シーンは人それぞれだが、ラインアップがかなり増えてきた2014年3月現在、「ワタシにはどれが向いているか」を判断するのも少し難しくなってきている。

 今回は、ホームルータ(親機)としてスマホ向けの低価格1ストリームモデルから最速の3ストリーム対応モデル、AV機器向けのイーサネットコンバータモデル、電波が届きにくい家庭で活躍する無線LAN中継機能付きモデル、USB子機、小型のホテルルータ、LTE対応ポータブルルータなど、ユーザーの11ac対応化をフルカバーする製品をラインアップするNECアクセステクニカ「Atermシリーズ」を軸に、利用シーン別に推奨モデルと構成、そして実パフォーマンスをチェックしていこう。


【導入事例 1】家族みんなが、それぞれPC、スマートフォン、タブレットを使う場合

photo この導入事例にお勧めの「AtermWF1200HP」(実売8500円前後 2014年3月現在)。右は11ac対応の5型スマートフォン「Nexus 5」。本体サイズは約33(幅)×97(奥行き)×146(高さ)ミリとスマートフォンとさほど変わらない小型ボディで、アンテナももちろん内蔵型。設置性がよいのも魅力の1つだ

 昨今は、家族みんながそれぞれノートPC、タブレット、スマートフォンを使っている場合もめずらしくない。プライベートのノートPC+無線LANの利用はおそらくあたり前としつつ、LTE対応のスマートフォンも月間の通信量に上限があるので、自宅でぞんぶんに使うには無線LAN接続が必須だ。

 そんな無線LAN接続中心の家庭に勧めたいモデルは「AtermWF1200HP」だ。11ac対応無線LANルータとしてはミドルクラスに位置し、11acは2ストリームの最大867Mbps通信に対応する。もちろんこれまでの2.4GHz帯802.11b/g/n、5GHz帯802.11a/nも併用でき、こちらは最大300Mbpsで通信できる。

 11ac内蔵の新PCやスマホはもちろん、これまでのPCやスマホでも使えるのがポイントだ。これから無線LANを導入する人はもちろん、すでに無線LANを導入済みという人も、高速な11acへステップアップしつつ、5GHz帯と2.4GHz帯を使い分けることで、より快適な無線LAN環境を整えられる。

 LAN区間が高速になると例えば何が便利になるか。昨今はPCとスマートフォン間での音楽や動画の転送(同期)作業にも無線接続で行うことが主流になりつつある。通常、PCとスマートフォンはUSBケーブルで有線接続して同期するが、有線接続はケーブルを用意して、つないで……という作業がとても面倒。無線接続で済むならばグッとスマートになる。

 ただ、無線通信の速度が遅いとそれだけ時間が余計にかかる。ここがこれまでの2.4GHz帯無線LANの弱点だった。無線LANルータが2.4GHz帯専用だと、PCもスマートフォンも同じ周波数帯を使うので実速度が落ちてしまうこと、そしてスマートフォン単体の無線LAN通信速度もあまり高速でない(例えば最大150Mbpsほどだった)ことが重なって、結果として遅いということになってしまっていたわけだ。

 家庭用無線LANルータは原理的に1度に1つの無線LAN機器としか通信できない仕様のため、2台の無線LAN機器間で通信すると、実通信速度は無線LAN区間で得られる通信速度の半分になる。特にスマートフォンは小型ボディゆえ物理的なサイズ(複数アンテナの実装など)の都合で、802.11n(規格上の最大速度は最大600Mbps)対応でも最大150Mbpsほどに抑えた仕様となっていることが多かった(PCはサイズに比較的余裕があるので、複数のアンテナを内蔵した802.11nで最大300Mbps対応のモデルが一般的だった)。

 そこで802.11ac化だ。対応で5GHz帯(11ac)と2.4GHz(11nなど)で同時通信できるWF1200HPを導入すると、802.11ac対応の新スマートフォンなら通信速度を明確に高速化でき、PCとスマートフォンで異なる周波数帯の電波を使うよう切り分ける工夫で、両方の通信速度を向上させることができるようになる。

 では実際にどのくらい速くなるか。Windows 7搭載のノートPCとAndroidスマートフォンを使い、音楽データの無線同期(「iSyncr」アプリを使用)を試してみよう。

 サンプルは全40曲で、ファイルサイズは170Mバイトほど。ルータであるAtermWF1200HPを中継し、11n/11ac(最大876Mbps)対応USB子機「AtermWL900U」経由で接続したWindows 7ノートPCから、2.4GHz帯の802.11nで最大150Mbps、5GHz帯の802.11acで最大433Mbpsに対応するスマートフォン「Nexus 5」へ転送する時間を計測した。

PC→ルータ→Nexus 5 データ同期速度 同期時間 高速化
パターン1:11n(2.4GHz)→ルータ→11n(2.4GHz) 70秒
パターン2:11n(2.4GHz)→ルータ→11ac(5GHz) 28秒 250%
パターン3:11ac(5GHz)→ルータ→11n(2.4GHz) 40秒 175%
パターン4:11ac(5GHz)→ルータ→11ac(5GHz) 29秒 241%
 ※40曲/約170Mバイトのデータを「iSyncr」アプリで無線同期

photo 自宅光ファイバー回線(最大100Mbps)+11ac接続したNexus 5で計った実通信速度

 パターン1はこれまでの環境である2.4GHz帯11n同士の接続。作業時間は約70秒だったが、これをNexus 5のみ、およびどちらも11acで接続するパターン2およびパターン4では、2倍以上高速な30秒ほどに短縮される。パターン2は電波帯域を食い合わない方法のため高速さが発揮されるのだが、802.11ac接続同士で5GHz帯を共有するスタイルとなるパターン4も僅差だったことに注目したい。あくまで一例ではあるが、使用できるチャンネル数が2.4GHz帯より多い(利用者/クライアントが増えても混雑影響を受けにくい)5GHz帯を使用する11acであれば、こちらを積極的に使うだけでより快適に無線LANを利用できるという意味でもある。

 なおパターン3がやや振るわないのは、混雑傾向にある2.4GHz帯でNexus 5は最大150Mbpsの倍速モード(40MHz幅)で接続できないことが多いためと考えられる。今回の測定場所(筆者自宅)も排除のしようがない公衆無線LANサービスの電波がいくつか届いてしまう環境で、Nexus 5は20MHz幅の65〜72Mbpsでしかリンクできなかった。これを11acにすると(すいているので)しっかり433Mbpsでリンクするので、こういった部分でも効果があることが分かった。

 まだ802.11ac対応機器を持っていない人は多いかもしれない。ただ、今後ノートPCやスマートフォンを買い換えると802.11ac対応となっている可能性が高い。これまでの機器では2.4GHz帯、新しい機器では5GHz帯を使い分けることで、無線LAN環境をより快適に使えるようになる。家族のインターネット接続はすべて無線LAN、そんな使い方にぴったりな11ac“ファースト”ホームルータがAtermWF1200HPと言える。

photophoto 11ac非対応のPC(デスクトップPCも含む)では、USBスティック型の2ストリーム対応11ac子機「AtermWL900U」(実売7000円前後 2014年3月現在)も一緒に導入するのが手軽だ。もう1つ、出張機会の多い人は1ストリーム対応11ac対応のホテルルータ「AtermW500P」(実売5500円前後 2014年3月現在)で運用するのも手段の1つ
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