ココが「○」 |
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・毎分70枚の圧倒的な印刷速度 |
・速乾性に優れたにじみにくい新開発インク |
・低ランニングコスト |
ココが「×」 |
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・本体サイズがやや大柄 |
日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)のビジネス向けインクジェットプリンタ「HP Officejet」シリーズは、ビジネスユースに耐える十分な性能を持っているのが特徴だ。そして、どのモデルも同価格帯のライバル製品と比較すると、印刷速度だったり、本体価格だったり、ランニングコストだったりと、どこかしら有利なポイントを持っている。
現状でHP Officejetシリーズは3段階のグレードに分かれている。下からビジネスとは言ってもほぼ個人のみで使うエントリーモデルの「HP Officejet」シリーズ、ミドルレンジでSOHO/SMB向けの「HP Officejet Pro」シリーズ、そしてそれ以上の規模を持つ事業所を想定した「HP Officejet Pro X」シリーズだ。
特にHP Officejet Pro Xシリーズは、低価格なA4ページプリンタ(レーザー/LED方式)よりも、はるかに速い印刷性能を持っているのが最大のポイントになっている。例えば、最上位モデルである「HP Officejet Pro X576dw」のプリントエンジンはおよそ70枚/分と、ギネスブックに認定されるほど。インクジェットとは思えない印刷速度を誇る。その爆速な「HP Officejet Pro X576dw」に触れる機会を得たので紹介しよう。
昨今のインクジェットプリンタの印刷品質は、もはや十分なクオリティに達し、写真画質を追及する一部のプロシューマー以外は、低価格なインクジェットでも十分に満足できる出力が可能になったと言っていい。
どれを選んでも、それほど変わらない画質であるのなら、差別化のポイントを別の部分に見出さなければならない。例えば、エプソンやブラザーといった国内メーカーのビジネス向けインクジェットは、その差別化ポイントをA3スキャンおよび印刷とし、そのレンジの製品でしのぎを削っている。
一方、日本HPは、画質の次に重視される部分として印刷速度の徹底的な見直しを行った。なぜなら印刷速度は仕事効率にダイレクトに関わってくる重要なポイントだからだ。
このギネスブックに認定された印刷速度に関してだが、従来のインクジェットの常識からはずれることで実現している。例えば、高速性が自慢のページプリンタは、1ページを1パスで一気に印刷してしまうため印刷が速いのだ。最近はモノクロもカラーも同じ速度のタンデム式がメインになっている。インクジェットはヘッドを何度も往復させて印刷する仕組みのため速度の面で分が悪かった。
HPはこれを10個のヘッドを交互にセットしA4用紙幅のラインヘッドを構成、ワンパスで一気に印刷するという方法で速さを得た。インクジェットのページプリンタバージョンと考えれば分かりやすい。
こうしたラインヘッド方式は、100万〜数百万円する業務用のインクジェット複合機で利用されているが、その技術を10万円を切るインクジェットに搭載してきたところに日本HPのすごさがあると言えるだろう。
HP Officejet Pro Xシリーズは、エントリーモデルの「HP Officejet Pro X451dw」が約55枚/分、その上になる「HP Officejet Pro X551dw」が約70枚/分、複合機のエントリーモデルとなる「HP Officejet Pro X476dw」が約55枚/分、そして今回紹介する「HP Officejet Pro X576dw」が約70枚/分の印刷速度となる。
価格はHP Directplus価格を参考にすると「HP Officejet Pro X451dw」が5万9000円、「HP Officejet Pro X551dw」が7万円、複合機の「HP Officejet Pro X476dw」が8万2500円、「HP Officejet Pro X576dw」が9万2500円となる。SOHOやSMB向けのA4カラーレーザープリンタおよび複合機と、ほぼ同じ価格に設定されている。そして印刷速度は、それらのライバル機の2倍〜3.5倍という性能を誇る。コストパフォーマンスで言えば「Officejet Pro X」シリーズの圧勝である。
HP Officejet Pro X576dwの基本デザインは、ビジネス向けインクジェットプリンタの上にスキャナユニットを乗せている構造だ。特に従来のモデルと基本的には変わらない。色も黒と濃いグレーのツートンだが、落ち着いた感じになっている。角に丸みを持たせており、ひと目見てHPのインクジェットと思わせるデザインだ。事業部やオフィス内に違和感なく収まるだろう。
本体サイズはインクジェット複合機というよりもレーザー複合機に近い印象を受ける。517(幅)×399(奥行き)×414(高さ)ミリ、重量は24キロだ。A4ビジネスインクジェット複合機として見れば大柄で重いが、A4カラーレーザー複合機と比べると軽く、ちょうど中間に位置すると考えるといいだろう。
筆者はひとりで設置したが、実際に持ってみると24キロの重さはズシリと来る。オフィスへの設置は、なるべく2人以上で行ったほうがよさそうだ。なお、本体正面から見て、左側に手差しトレイが設けられているため、このトレイを使うためには左側にもスペースが必要になる。A4用紙をセットした状態で左側に実測で約165ミリほど必要だった。
この手差しトレイ部はメンテナンスパネルと一体化しており、パネル全体を大きく開く構造になっている。この部分はほとんど紙送り機構がつまっているので、紙詰まり時などは、ここにアクセスすることになる。このパネルの高さが実測で約365ミリとなっているので、手差しトレイ(約165ミリ)の利用および紙詰まり時の対応を考えると、本体左側におよそ40センチ程度の空間が必要になるだろう。
インクは4色独立インクで、全色が顔料インクとなっている。このインクは高速印刷を行っても、ほかの紙に色移りしないように速乾性に優れる新開発のインクだ。水にぬれてにじんだりすることもなく、さらに蛍光マーカーなどを使っても印刷部分を上書きしても問題ない。
インク交換は、液晶ディスプレイの直下にあるインク交換用のカバーを開けて行う。交換自体はインクカートリッジを押すとカートリッジが飛び出してくるので、新しいものと交換するだけだ。インクカートリッジの装着で特に迷うことはないだろう。
本体上部の左側手前部分に設けられる4.3型のディスプレイ部は、従来のHPプリンタを触ったことがある人なら、特に問題なく操作できるだろう。ほかのモデルでも採用されているタッチパネル式になっている。スマホを操作したことがあるユーザーなら、すぐに操作に慣れるはずだ。メニューの内容も日本語で分かりやすい。
HP Officejet Pro X576dwのデザインや操作性が理解できたところで、スペックをざっと紹介しておくとプリント部は、最大印刷解像度が2400dpi×1200dpi、スキャナ部の読み取り方式はCISでスキャン時の光学解像度は1200dpi×1200dpiだ。
搭載するADFは両面読み取りで最大50枚をセット可能。印刷とコピー時の速度はカラー/モノクロともに標準設定で42枚/分、最高で70枚/分だ。また両面印刷機能を標準で搭載する。ADFによる両面読み取りは、紙送り機構で裏返して片面ずつ読み取る方式のため、その処理の時間がかかり、最大70枚/分というわけにはいかない。
標準の給紙トレイには500枚がセットでき、本体左側面に設けられた手差しトレイには50枚、合計で550枚の用紙をセットできる。オプションで用意されている増設カセットを利用すればさらに500枚の最大1050枚の給紙が行える。排紙は印刷面が下になるフェイスダウンで、プリンタ部とスキャナ部分の間に設けられた排紙トレイに最大300枚まで貯めておける。
印刷およびコピー機能は、2in1コピー、拡大/縮小印刷&コピー、25%〜400%までのズームコピー、最大99枚までの連続コピー、両面コピーといったビジネスユースに十分な機能が搭載されている。
利用可能な用紙のサイズはA4/B5/A5/レター/リーガル/エグゼクティブ/郵便はがき/郵便往復はがき/封筒(長形3号、長形4号)だ。利用可能な用紙の種類は、普通紙(薄紙、通常用紙、中厚紙、厚紙、最厚紙、穴あき紙、再生紙、ボンド紙、そのほかのインクジェット普通紙)、写真紙(光沢紙、グロス、ソフトグロス、サテン、つや消し紙、そのほかのインクジェット写真紙)、封筒、ラベル、カード、特殊紙(光沢ブローシャ、つや消しブローシャ、3つ折りブローシャ、はがき、挨拶状、そのほかのインクジェット特殊用紙)と幅広い。さすがインクジェットプリンタといった感じだ。
FAX機能はSuper G3に対応し、内蔵メモリに標準的なA4原稿で最大約100枚の代行受信が可能。グループダイヤルと短縮ダイヤルを合わせて99件、ほかにPCからのFAX送信/受信(モノクロのみ)も可能だ。ビジネスユースでも必要十分なFAXの送受信環境と言えるだろう。
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