Windows 10の新ブラウザ「Project Spartan」とは何か?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)

» 2015年02月04日 10時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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Spartanは2種類の動作モードを用意

 以前の連載でも解説したように、IEでは過去の資産をサポートするための後方互換性を維持する機能として、「Document Mode」と「Edge Mode」の2種類の動作モードを備えており、IE11ではさらに「Enterprise Mode」を搭載している。

 Webサイト側でIEバージョンを指定するメタタグをあらかじめ埋め込んでおくことで、最新のIEでも過去のバージョンの動作に則ったレンダリング方式に切り替えてWebページを再現することが可能だ。これを「Document Mode」と呼ぶが、IE11がリリースされた時点ですでにこの方式は「非推奨」となっており、IE11以降のバージョンでのサポートを保証していない。

 このDocument ModeだけではWebサイトによっては再現性がまだ不十分で、IE8以前のプラットフォーム(主にWindows XP)を利用するユーザーをIE11+Windows 7以降へと引き上げるために「Enterprise Mode」が導入された経緯がある。

 しかし、これもまた一時的な救済策であり、対象も「イントラネット」だけなど、企業内のごく限られた用途への適用にとどめ、基本的にはIEのデフォルト動作モードである「Edge Mode」に対応した環境へと順次移行していくよう、Microsoftでは開発者やシステム管理者に対して訴えている。

 そして昨年2014年11月、このIEの動作に関する大きなシステム上の変更が発表された。互換性維持のためのDocument ModeをEdge Modeから分離し、「"Living" Edge Mode」とでも呼ぶべき「新機能の導入」や「(他のブラウザとの)互換性維持」に特化したレンダリングモードの採用が明らかになったのだ。

 こうしたWeb標準の新機能と他のWebブラウザの搭載状況について、一覧表にしたものがMicrosoftのサイト(Modern IE)に掲載されている。将来的に、これらを"Living" Edge Modeへと素早く取り込んでいくことが目標になるとみられる。

 Document Modeへの導線となる「X-UA-Compatible」のメタタグを無視する仕組みが2014年最後のWindows 10 TPアップデートである「Build 9879」のIE11に搭載されたのも、Edge Modeでの積極的な動作テストを強化していくのが狙いだったのかもしれない。

Microsoftのサイト(Modern IE)では、Web標準の新機能と主要Webブラウザの搭載状況を一覧表にまとめて掲載している

 そして今回のSpartan発表のタイミングで、この"Living" Edge Modeに特化した新レンダリングエンジン(EdgeHTML.dll)と、Document ModeやEnterprise Modeなどレガシーサポートに特化したレンダリングエンジン(MSHTML.dll)の2種類のレンダリングエンジンが用意されることが発表された。

 以前の予想では「MSHTMLはIE11、EdgeHTMLはSpartan」という形で区別されると考えていたが、実際にはSpartanは両方のレンダリングエンジンに対応し、通常はEdgeHTMLで動作するが、必要に応じてMSHTMLを呼び出す形となる。つまり、SpartanはレガシーなWebサイトでも動作する。

 ややこしいのは、IEにおいても2つのレンダリングエンジンをサポートし、EdgeHTMLとMSHTMLを適時切り替えて動作することだ。つまり、レンダリングエンジン(そしておそらくJavaScript実行エンジンの「Chakra」も含む)レベルではSpartanとIEに差はないということになる。

 今後IE11の後継となる「IE12」のようなバージョンがリリースされるかどうかは不明だが、少なくともWindows 10の世界でSpartanとIEが共存することになるとMicrosoftでは説明している。

Windows 7〜8.1上のIE11(画像=上)と、Windows 10上のSpartan(画像=下)におけるレンダリングモードの違い。ややこしいのは、Spartan導入後はIEも2種類のレンダリングモード(EdgeHTMLとMSHTML)をサポートする点で、IEにおいてもEdgeHTMLを利用できるようになる

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