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» 2015年07月03日 05時00分 UPDATE

鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:Windows 10の先にあるSF映画みたいな近未来――「Microsoft Research Asia」探訪 (1/4)

Windows 10がようやく公開日を迎えようとする中、Microsoftが北京に構える研究施設「Microsoft Research Asia」では、その先にある未来を描こうとしていた。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

Windowsの最新技術は北京からやって来る

tm_1407_win10J_1_01.jpg 一見よくあるタブレットだが、最新技術によりタッチの感覚は今までとまったく異なる?

 中国のITと言えば「PCやスマートフォンなどのハードウェア製造」を思い浮かべる方も多いと思うが、最近では市場の成熟を反映したのか国内向けにソフトウェアやサービスを提供する事業者が増えつつあり、こうして誕生したスタートアップの中には最初から世界展開を視野に入れたものも登場している。

 Microsoftが中国の北京に拠点を置く研究所「Microsoft Research Asia(MSRA)」は、そんな中国のIT最前線で活躍している起業家らを支援し、ときには自らが人材輩出を行う形で拡大を続けている。今回はこのMSRAの活動に触れつつ、今後数年内にもWindowsの世界へとやってきそうな最新技術を紹介する。

 MSRAが設置されたのは1998年のこと。「Microsoft Research(MSR)」の名を冠する同社の研究所としては、2005年にインドのバンガロールに設置された「Microsoft Research India」と並んでアジアの2大拠点の1つとなる。

 北京という中国の政治で中心に位置することからも、設置理由の1つは中国市場への早期のコミットが考えられるが、一方で地元の優秀な学生を呼び込んで産学協同プロジェクトを推進する側面が大きいと言える。

tm_1407_win10J_1_02.jpg 「Microsoft Research Asia(MSRA)」は、多くの大学や研究機関、IT企業が集まり、中国のシリコンバレーとも言われる北京市海淀区中関村に位置する
tm_1407_win10J_1_03.jpg 1998年のMSRA設立以来、マネージングディレクターとして同部門の指揮を執るHsiao-Wuen Hon(洪小文)氏

 世界に拠点が複数あるMSRだが、それぞれ異なるテーマを持つ。例えば北京のMSRAが掲げるのは、「ナチュラル・ユーザー・インタフェース(NUI)」「次世代マルチメディア」「データ集中型コンピューティング(Data Intensive Computing)」「検索とオンライン広告」「コンピュータサイエンス基礎研究」の5つのテーマだ。

 ここでの研究成果は中国国内だけでなく、世界市場向けの製品に反映することも想定している。今回紹介する研究成果の一部は、近い将来にも読者の方々が手にするWindowsや関連製品の中で見かけることになるかもしれない。

 このMSRAを設立以来率いているのは同マネージングディレクターのHsiao-Wuen Hon氏だ。同氏は米Microsoftのサティア・ナデラCEOが同職就任時に従業員に向けて発信したメッセージ「Our industry does not respect tradition - it only respects innovation.(われわれの業界は伝統ではなく、イノベーションを尊ぶ)」を引用しつつ、オープンな環境で内外のさまざまな研究者が参画することで、明日の技術革新を推進していけるというMSRAの基本スタンスを強調している。

tm_1407_win10J_1_04.jpg 米Microsoftはアジア地域だけで2万6000人の従業員を抱えているが、そのうちMSRA傘下には3000人以上のフルタイムワーカーが研究開発に従事している

SF映画のような未来予想図に現実が追いついてきた?

 Hon氏はMSRAでの研究成果をいくつか挙げているが、その重要なものの1つは「Skype Translator」だろう。音声とテキストチャットともに、異なる言語を相手が分かる形でリアルタイムに翻訳するシステムは、何十年も前からSF映画などで描かれ続けてきた「未来図」そのものだ。

 同製品はまだプレビュー版の段階だが、そう遠くない未来にも、ごく当たり前のサービスとして、Windowsやスマートフォンに実装されているかもしれない。

 身近なテーマとしては「自然言語解析」と、膨大なデータベースを組み合わせた「人工知能(AI)」も面白い。「単語」ではなく「質問文」を入力して最適解が導き出せる「Bing Search」の仕組みは、この2つの技術を組み合わせたものだ。

 同じくBingをベースに音声認識と音声アシスタントの機能を実装した「Cortana」も、このMSRAの研究の一部が利用されている。残念ながら日本国内での提供は当面見送りとなるCortanaだが、中国では「小娜(XiaoNa、シャオナ)」の名称でWindows Phone 8.1(ならびにWindows 10)におけるサービスが提供されている。

 この技術をSina Weiboなど中国国内の人気SNSに展開したのが「小氷(XiaoIce、シャオイス)」だが、これは一時期流行った自動応答プログラム「人工無能」のような体裁となっている。人間が小氷に話しかければ、その文章を理解して小氷が最適な返事を返すというもので、実際に記者が小氷へのロングインタビューを行って会話が成立しているという事例を報告している。

tm_1407_win10J_1_05.jpg 中国版Cortanaである「小娜(XiaoNa)」と、ソーシャルネットワーク上に存在して人工知能チャットを実現する姉妹技術「小氷(XiaoIce)」は、MSRAでのAI研究の成果の1つ
tm_1407_win10J_1_06.jpg 人間が小氷に話しかければ、その文章を理解して小氷が最適な返事を返す
tm_1407_win10J_1_07.jpg 文章で質問を入力すると、その構文や意味を解析しつつ、複数のデータベースエンジンを組み合わせて最適解を返答するAI的な一問一答システム「Project Light」
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