IDF 2015で説明のあったUSB Type-Cに関するアップデートでは、従来の「USB 3.1 Type-C」に加え、「USB 2.0 Type-C」が登場している。USB 2.0のコネクタ形状をそのままType-Cに変換したもので、この規格のケーブルではUSB 2.0の通信しか行えない。USBでは拡張に合わせて信号線を次々と追加しており、“3.1”においてもUSB 2.0以前の通信を行うための信号線を残している。そのため、USB 2.0のみに対応したデバイスをUSB 3.1以降に接続しても、USB 2.0の信号線のみを使って通信するため、下位互換を確保できる。
なお、“3.1”対応機器同士をUSB 2.0 Type-Cケーブルを使って接続した場合、理屈では“3.1”で通信できず、USB 2.0での通信となる。ユーザーが混乱する規格になる可能性もあるが、コストの理由などでUSB 2.0を使い続けるケースもあるため、新たに規格として用意したのだろう。また、USB 3.1ではケーブル長の問題もあり、あえてUSB 2.0を使わないといけないケースもある。
一方で、USB 2.0 Type-CにおいてもPDは利用可能だ。PD対応のUSBは電池型のアイコンデザインを採用しているが、USB 2.0 PDのアイコンも定義している。USBケーブル経由の給電では「CC」という信号線を用いるが、これ自体はすべてのUSB規格で共通なので、USB 2.0 PDでもネゴシエーションさえ行えればPDによる給電が可能だ。ただ、PDそのものは通電で大きな負荷がかかり、コネクタやケーブルが発熱する問題もあるという。
USB 3.1は従来のバージョンよりも多くの信号線を使って通信を高速化している関係もあり、ケーブルを細くすることは難しい。USB 2.0 Type-Cでは既存の細いケーブルも利用可能だが、これでPDによるバスパワー(2.5ワット)以上の給電にそのまま対応できるかは不明だ。
PDに関して興味深いのは、「認証機構」の導入を検討していることだ。具体的には、PDによる給電を確立するためのネゴシエーションを行うタイミングで、実際に給電先のデバイスが適切かを判断し(一種の電子証明書のようなものを使って認証を行うようだ)、その結果に応じて給電、または、データ通信を開始するかを決定する。適合しないデバイスであればPDによる給電は行わず、通常のUSBバスパワーによる給電となる。
IDF 2015の展示会場では、Renesasの認証チップを搭載したデバイスによるデモストレーションを紹介していたが、このような仕組みが将来的に登場するPDの給電デバイス(コンセント型の給電装置やUSBハブなど)では一般的になるのかもしれない。
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