毎年2回ほど開催される米Appleのスペシャルイベントだが、ここ数年でもこれほど気合が入った回はなかったかもしれない。何しろMac以外のすべての製品が新しくなったのだ。
スマートウォッチ、タブレット、スマートフォンの3つのカテゴリをすでに征していたアップルが、今回の発表でさらに競争力を高めている。
「Apple Watch」は、その妥協しないクラフトマンシップと圧倒的な品質で高級ブランドの中でも特別な地位を築いているエルメスと、世界トップ企業であるアップルとの夢のコラボということで、スマートウォッチ市場はもちろんだが、高級時計市場にも大きな衝撃を与えることになるだろう。
また巨大なのに初代iPadと同じほどの重さなので、むしろ軽くさえ感じる「iPad Pro」は、デジタルであることを忘れさせるほど滑らかに描けるApple Pencilと、気軽に持ち運べるiPad Pro Smart Keyboardが加わり、マイクロソフトやアドビも本格的なアプリを出してきたことから、これから法人やクリエイターでの需要が飛躍的に高まりそうだ。
「iPhone 6s」と「iPhone 6s Plus」は見た目こそ、これまでのiPhone 6/6 Plusと変わらないが、中身はまったく違ったものになっている。新たに加わった3D Touchの操作は、外観からは分からないものの、何かをするまでの操作のステップ数を大幅に減らしてくれる画期的な機能で、今後、なんらかの形で他者にも真似をされて、スマートフォンの操作方法を未来永劫(えいごう)変えてしまう可能性を秘めた画期的な機能だ。
これに加えて、App Storeを搭載し、アプリの実行にも対応した「Apple TV」で、ついにテレビまわりのデジタル環境にすら深く切り込んできた。これまでソニーや任天堂、マイクロソフトが支配してきた家庭用ゲーム機市場にとっても大きな脅威となることだろう。
いずれ劣らず圧倒的な存在感を持つ4つの新製品は、これからクリスマス商戦まで少しずつ展開されていく。
今日から発売になったApple Watchの新色、月末に発売のiPhone 6sと6s Plusが、10月にはApple TVとApple Watch Hermes、そして11月にはiPad Proといった具合に、アップルはこれから毎月順に新製品を発売して今日の発表会を思い出させようという戦略をとっている。
どれ1つをとっても主役を張って発表会イベントを開けるほどに内容が詰まった4製品だけに、紹介するには情報の整理が必要だ。
以下では、各製品の発表の概略を短めにまとめて、その後に目を引くディテール部分という構成で書こうと思う。手っ取り早く概略だけを知りたい人は、そこだけ飛ばし読みしてもらえればと思う。逆にすでにほかの記事を読んで概略を知っている人は、ディテール話だけつまみ食いしてほしい。
まず、この記事ではApple Watchを紹介する。その後、iPad Pro、Apple TV、そしてiPhone 6sとiPhone 6s Plusの記事も続けて掲載する予定だ。
スペシャルイベントは、2015年に登場したばかりの新製品、Apple Watchの話題から始まった。
春ごろに登場したApple Watchは顧客満足度調査でも97%と大好評だが、今回はスペックをそのまま引き継ぎつつ、新たなバンドやボディカラーが選べるようになった。
そしてなんといっても最大の話題は、フランスのブランド、エルメスとのコラボレーションモデルだ(発売は10月から)。アップルとエルメスといえば、どちらもクラフトマンシップ、職人の技と製品の質になによりもこだわる企業。ある意味、非常に相性がいいコラボといえよう。
ラインアップは、一般の革時計と同様の「Single Tour」モデルが38ミリと42ミリで3色、腕の回りをぐるっと2周して留める「Double Tour」モデルが全38ミリで4色、太い革のブレスレットから時計の盤面がまるでカフスリンクのようにのぞく「Cuff」モデルが42ミリのみの1色で展開される。
これに加えて、好評ながら高価な18カラットの金素材でしか提供されていなかったゴールドとローズゴールドの2色が手ごろなApple Watch Sportコレクションとしてアルミニウムケースでも展開されることになった。さらにApple Watch標準コレクションやEDITIONコレクションにも新色が加わっている。
Apple Watch関連でもう1つ重要な発表は最新OS、watchOS 2の提供時期が米国時間の9月16日に決まったことだ。
これまでのApple Watchは、iPhoneのセカンドスクリーン的な位置づけで、実はアプリの実行もすべてiPhoneにまかせていたが、watchOS 2からはApple Watch上で直接動かすことが可能になり、Apple Watch内のセンサーやWi-Fiを含む通信機能を活用したアプリも登場することが期待されている。
また、時計の盤面に表示されるコンプリケーションも、例えば、ニュースヘッドラインや最新のフライト情報、電気自動車の充電状態など他社製のものが表示可能になる。
タイムトラベルと呼ばれる機能を使って、リュウズを回して時間を戻したり進めたりして、その時間の予定や天気などを調べることもできる。
最も期待が大きいのがネイティブアプリだ。Apple Watch用のアプリはすでに1万種類がリリースされているが、今回、新たにFacebook Messengerのアプリや音声通訳をしてくれるiTranslate、アクションカメラGoProの撮影映像を確認できるアプリなどが紹介された。また、医療用アプリのAirStripも登場する。
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