林信行が振り返るAdobe MAX――11月までに現実になる「Adobe MAGIC」5選今年の魔法は?(1/3 ページ)

» 2015年10月16日 16時00分 公開
[林信行ITmedia]

 「Adobe MAGIC」(アドビ・マジック)という言葉を聞いたことがあるだろうか。今からちょうど25年前にPhotoshopをリリースしてから、アドビは人々を「あっ」と言わせる魔法で魅了し続けてきた。

 Phothsopの登場後は、広告などで使われる写真や映画作品に、それまで想像もつかなかったような、現実にはありえないリアルな新表現が次々と飛び出し始めた。その後、Photoshopは写真の中に写っているものを消したり、動かしたり、破たんなく縮尺を変えたり、拡張したキャンバスに撮影していないはずの雲を描き出したりと、常に新たなマジックで世界中のクリエイターたちを引きつけてきた。

 そんな「Adobe MAGIC」の祭典が、毎年開催されるAdobe MAXというイベントだ。林信行によるAdobe MAX振り返りリポートの第1弾は、Adobe MAX 2015でお披露目された最新「Adobe MAGIC」を中心に紹介したい。

Adobe MAX 2015

11月までに現実になる「Adobe MAGIC」5選

 私たちが日々、目にしている写真、映像(動画)は、何らかのツールを使って作られている。そして、それがパソコンによるデジタル制作の表現であれば、おそらくほぼ確実に Adobeのソフトが使われている。

 4年前から、そのAdobeのすべてのクリエイティブ用アプリが一律の月額料金で使い放題になる「Creative Cloud」として提供され、年に1〜2度のアップデートでAdobe MAGICの補充と機能の強化、改善が行なわれている。まずは11月までにリリースされる最新Creative Cloudに搭載予定のAdobe MAGICを5つ厳選して紹介しよう。

1、Audition:3分だった曲が、数十秒に

 「Audition」と言うアプリをご存じだろうか。定番のPhotoshopやIllustratorと比べると圧倒的に認知度が低く、Adobe Creative Cloudに含まれるアプリ群の中でもかなり地味な存在で、音を編集するアプリだ。

 ただ、ちょっとしたインタビューや会議の録音も、このソフトで雑音を消したり声の成分を増強するだけで、圧倒的に聞きやすくなることもあり、筆者が最も活用しているCreative Cloudのアプリでもある。

 2015年は、この地味なAuditionにも「Adobe MAGIC」の粉が降りかかった。なんと、Premiere Proで編集した動画の尺(長さ)に合わせて、BGMの尺を変更する「Audition remix」という新機能が搭載されるのだ。

Adobe Audition

 これまでのAuditionは、ただ録音された音の波形データを解析して、特定の周波数の音を大きくしたり、小さくしたり、エコーなどの特殊効果をかけたりといった形でしか音を編集していなかった。

 これに対して新Auditionには、音楽の構造を分析する機能が加わり、曲全体を構成するビートの変化や、ハーモニーを解析して曲の構造を理解するという。そのうえで極めて自然に曲の長さを変えてくれる。確かに“あの曲”なのに、これまで聞いたことのない尺のremixが誕生するのだ。

 これまでサウンドエンジニアが長い時間をかけてやっていた曲のリミックスが、Auditionに組み込まれた人工知能によってほんの数秒で全自動で完成する。

 デモでは時間の関係でremix後の曲全体を再生せず、仕上がりが確認できなかったが、使われた曲には歌声も入っていたので、その辺りも破たんなく処理してくれるのだろう。新Creative Cloudが登場したら、真っ先に試したい機能の1つだ。

 ちなみに、この曲解析機能の追加は、今後のAuditionに新たな可能性の扉を開くことが、別の記事で紹介する「SNEAKS!」で明らかになる。

 AuditionはCreative CloudのPC用ソフトとなっているが、2016年のAdobe MAXでは是非ともiPad版もリリースして欲しいところだ。

2、After Effects CC:映像中の動く人の顔にマスクを被せる

 新たに4K/8K映像の編集にも対応した映像加工ツールのAfter Effects CCでは顔認識ツールが強化された。これまでのAfter Effectsにも人の顔を認識して、その人物が映像の中で動いていても、追いかけてボカしをかけ続ける、といった機能は用意されていたが、新After Effects CCでは、映像の中で動く人の耳の位置や左右の目の位置、鼻の位置、口の上下や両端を正確に捉えてくれる。

 これを使って簡単にできるデモとして、基調講演では、顔の上に目だけを隠すようなマスクを合成するというデモを行い、ほんの数秒の操作でいとも簡単に実現してしまった。

After Effects CCのフェイストラッキングが強化

目や鼻の位置、口の上下を正確に把握し、映像中の人物に後からマスクを合成するといった編集が簡単にできる

 新たに始まったストック素材サービス(後日公開予定の原稿で詳しく紹介)、Adobe Stockから取得したマスクを加えるデモでは、マスクの大きさが顔の大きさに全然あっていなかったが、サイズや中心位置を微調整したら、本当にマスクをつけているかのような映像になった。

 このAfter Effects CCが登場すれば、撮影後の映像に後からメガネをかけさせたり、マスクをつけたり、メイクを施したり、イヤリングやピアスといったアクセサリーを加えたるといったことが簡単にできるようになりそうだ。

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