一見しただけではよく分からず、地味な機能ながらも、実はiPad Proに大きな違いをもたらしているのが、Pro Displayと呼ばれるiPad Proのディスプレイ技術だ。明るく、表現できる色の幅も大きく広がり、光の反射も40%押さえたPro Displayの表示はとにかくリアルで美しい。
これまでのiPadシリーズの画面はいずれもきれいで、iPad Air 2の画面でも十分と思えていたが、改めて同じサイズでありながらPro Displayを搭載した今回のiPad Proと比べてみると、その差は歴然(iOSに標準で入っている壁紙の葉の写真を使うと特に差が分かりやすい気がした)。これに慣れた状態でiPad Air 2に戻ると少し色あせているような印象すらを覚えるようになった。
もちろん、Webブラウザ上でこの記事を見ている人は、どんなディスプレイで見ているかによって、その差がきちんと再現できていない場合もあるので、この違いだけは是非とも店頭で実物を触って確かめてみてほしい。
1987年に初めてカラー版のMacであるMac IIを出したとき、Appleは色の再現性にこだわり、ソニーと組んでPC用ディスプレイとしてはやや高価なトリニトロンディスプレイ管を使ったディスプレイの採用を決めたが、Apple創業40周年に発売となるiPad ProのPro Displayには、それに通じるものを感じる。
今、世の中はディスプレイであふれかえっている。機種によって、種類によって、ロットによって(実はこれまでのApple製品の一部にも)色味などが異なることが多い。これからのiPad Proシリーズでは、色の再現性にさらに真剣に取り組み、その高い色再現性をApple製品全体に広げていってほしいと思う。
ファッション系トップブランドの多くは、いまだにiPhone用アプリはリリースしていても、その他のスマートフォン用の純正アプリは用意していないところが多い。それはファッション業界がiPhone一色だから、ということに加えて、色の再現性が重要だからではとも推測している。Pro Displayの重要性をもっと強くアピールして、スマートフォン/タブレット業界全体の色再現性の水準を引き上げる原動力となってほしい。
ちなみにこの9.7型iPad ProのPro Displayでは、ちょっと変わった試みも行われている。環境光にあわせて、画面表示の色味が変わるTrue Toneで、これは12.9型iPad Proにはない、9.7型ならではの機能だ。
本来、液晶ディスプレイはそれ自体が発光しているので、画面の色味は部屋の光の色の影響をそれほど受けない。これに対して、iPad Pro上でDTPツールなどを使って制作した紙の書類は、暖色系の電球の下では黄色っぽくなるし、寒色系の電球の下では青みを帯びる。
True Toneをオンにすると、iPad Pro上の電子書籍がまるで紙の書籍であるかのように、部屋の光の色に合わせてページの白地部分の色もうっすらと変わるのだ。本当にうっすらなので、実際に変化しているのか分からないことも多いが、システム環境設定で設定をオン/オフしてみると、なるほど確かに少しだけ色味が変わっているのが分かり、確かにオンにしていたほうが自然だと感じる。
これが紙での刷り上がりを確かめるために使えるほど正確な機能なのか、正直、筆者の目では分からない。今回は時間がなくてできなかったが、できればプロの意見を聞いてみたいところだ。
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