これからの人類はAIとどう向き合っていくべきか――「AIの遺電子」山田胡瓜と「イヴの時間」吉浦康裕、水市恵が語る現在と未来アニメ監督×漫画家×小説家(1/10 ページ)

» 2016年04月14日 10時30分 公開
[瓜生聖ITmedia]
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 今までのAI(人工知能)はいわゆる「弱いAI」――特定問題の解決を行うためのものを指すことが多かった。しかし、Google DeepMindが開発したAlpha Goが世界最強の囲碁棋士の一人であるイ・セドルに勝利したことから、汎用AIとなる「強いAI」実現への期待が高まり、今やAIブームといってもいい状況になっている。

 これまでSFにしか存在しなかった、人間と見分けのつかない知性を備えたAIが近い将来、本当に実現するのかもしれない。そんなAIが実用化された社会はどんなものになるのだろうか。

特別座談会――AIを描くクリエイターたち

 AIが実用化された社会の日常を描いた作品として、思いつくものが二つある。

 一つは「AIの遺電子」(アイのいでんし)だ。

 「AIの遺電子」は2015年11月から週刊少年チャンピオンで連載中の漫画作品で、4月8日には待望の単行本第1巻が発売された。作者はPC USERでも連載している「バイナリ畑でつかまえて」の山田胡瓜先生。「AIの遺電子」の舞台は国民の1割がヒューマノイドという近未来で、AIを搭載したヒューマノイドが人間と同じように思考し、生活している世界を描いている。

 そしてもう一つが「イヴの時間」。

 「イヴの時間」は吉浦康裕監督によるアニメ作品。2008年8月からインターネットでファーストシーズン全6話が順次配信され、2010年3月に完全版として「イヴの時間 劇場版」が公開された。「未来、たぶん日本。”ロボット”が実用化されて久しく、”人間型ロボット(アンドロイド)”が実用化されて間もない時代」を描いている。劇場版公開に合わせて水市恵先生による小説版「イヴの時間 another act」が発売された。

「イヴの時間 劇場版」(c) Yasuhiro YOSHIURA/DIRECTIONS,Inc. アンドロイド、サミィの行動記録を追ったリクオは人間とロボットの区別をしない喫茶店「イヴの時間」にたどり着き……

「イヴの時間 another act」(小学館 ガガガ文庫)。リクオの心情に深く迫る小説版。ラストはアニメでは描かれなかった「イヴの時間」でのもう一つの再会

 今回、幸運にも「AIの遺電子」の作者である山田胡瓜先生、「イヴの時間」の原作・脚本・監督である吉浦康裕監督、そしてノベライズの著者、水市恵先生による座談会という機会を得た。はたしてAIが実用化された世界を描いた3人のクリエイターたちは現在を、そして未来をどう見ているのだろうか(聞き手:瓜生聖、PC USER担当編集長:編集G)。

アンドロイドとヒューマノイドがいる世界

水市恵 小説家。代表作に「イヴの時間 another act」、「時間商人」シリーズ(全4巻)、「ドラゴンライズ」シリーズ(全4巻)がある

水市恵 「イヴの時間」では、アンドロイドは本当は人格・自我があるけれども、表向きはあくまでも家電、という扱いです。「AIの遺電子」のヒューマノイドは本当に人間と対等で、職業を持っていたりもする、というのに驚きました。

瓜生 “倫理委員会”が放っておかない世界ですね。

水市 (笑)。倫理委員会が崩壊した後の世界ですよね。

※倫理委員会:「イヴの時間」で人間とアンドロイドの過度な関係を問題視する反ロボット組織。

「イヴの時間」より。反ロボット組織である倫理委員会はこのような広告を広く展開している。よく見るとロゴや番組名にお遊びが……

吉浦康裕 山田先生も意識されていると思いますが、SFって結局のところはその世界を通して人間をどう描くか、ということなんですよね。

山田胡瓜 そうですね。

吉浦康裕 アニメーション作家、監督。スタジオ六花代表。代表作に「イヴの時間 劇場版」(2010年)、「サカサマのパテマ」(2013年)

吉浦 そこでひねりを加えて、「イヴの時間」では黎明(れいめい)期を描いたんです。一応、アンドロイドの存在は市民権を得てはいるけれど、それを所持していること自体がちょっと後ろめたい、恥ずかしいという、人間のほうがあたふたしている時代なんですね。ガイドラインも定まっていないし、法整備もできていない。だから、どう付き合っていくのか、そのことをどこまで友だちに開示すればいいのか分からない。そういう、まだ成熟していない時代・世界を狭く描いたんです。

瓜生 いろんな人が出てきますね。アンドロイドを人間視する人を“ドリ系”と呼んで揶揄(やゆ)する人もいれば、そう指摘されてむきになって反発する人、逆にアンドロイドを人間視してどっぷり依存している人だとか。ドリ系という言い方、言われたときの反応は今の「オタク」に対する反応に近いものを感じます。一方、「AIの遺電子」ではもう少しマイルドで、人間とヒューマノイドは人種の違いくらい、といった感じでしょうか。

ドリ系:アンドロイド精神依存症。「イヴの時間」でアンドロイドを人間視する人たちを揶揄(やゆ)した呼び方

山田 そうですね。あんまり自分で言い過ぎるとよくないんですが、「AIの遺電子」はちょっと性善説がすぎるかもしれないです。

山田胡瓜 漫画家。アイティメディアにて漫画作品「バイナリ畑でつかまえて」を不定期連載。2012年冬にアフタヌーン四季賞大賞を受賞、2015年11月より週刊少年チャンピオンで「AIの遺電子」を連載中

一同 (笑)

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