自社で工場を持たない、いわゆるファブレスのメーカーにとって、要求した本来の仕様とは異なる製品が外注先から納品されてくるのは、それほど珍しい話ではない。むしろどちらかというとよくある話だ。
それらを見抜き、検収せずに外注先に突き返したうえで、正しい仕様の製品を再度作らせるのがメーカーの役割ということになるわけだが、そもそもこうしたミスはどのような原因がもとで起こるのだろうか。
今回は、こうしたOEMやODMのビジネスにつきものの、この種のトラブルが起こる舞台裏について、詳しく見ていくことにしよう。
なお、この手の話題では「メーカーとは何ぞや」という、メーカーの定義付けがよく問題となるが、本稿では、自社ブランドの製品を日本国内で販売・流通させており、自らメーカーと名乗っていれば、製品を自社内で企画・設計・製造しているか否かと無関係に、メーカーとして取り扱う。
そのため、世間一般の定義とは異なる場合があることをご了承いただきたい。
ファブレスのメーカーが外注先に製品を作らせる方式としては、自社で用意した仕様書の通りに外注先で作らせるOEM方式と、外注先が仕様を決めて生産まで行うODM方式、大きく2通りに分けられる。
OEM方式で多いトラブルとしては、仕様書だけでは表現しきれない部分の解釈の相違がある。例えば、書面で伝わりにくいボディーカラーの相違は典型的な例で、本来はオフホワイトであるはずが、納入されたボディーカラーは光沢のあるホワイトだった、というケースだ。メーカーは試作品と違っているので外注先のミスだと主張し、外注先は試作品は手塗りゆえ量産品と同じ質感にはなり得ないと反論し、モメるというパターンである。
また、ここでいう外注先のほとんどは海外の事業者であるため、仕様書を翻訳する過程でニュアンスが変わったり、または明らかな誤訳が発生したりしたことで、誤った仕様の製品が納入されるケースもよく起こる。「ここまで詳しく書かなくても分かるはず」と判断して詳細を省いたところ、案の定ミスが発生したというケースも、取引の回数が少ない外注先との間では起こりやすい。
では、仕様書に細部までしっかり明記され、誤訳などのミスもなければ、こうしたトラブルは100%防げるかというと、必ずしもそんなことはない。典型的なのは「量産してみたら想定通りに動作しなかったので、きちんと動作するようこちらで仕様を変更しました。後で報告するつもりが忘れていました」というパターンだ。
善意の対応に見せかけつつ、実際には単なる外注先の都合をオブラートに包んだ言い訳なのだが、このような新入社員レベルの言い訳を使ってくる外注先は、特に海外の事業者では後を絶たない。そうした言い訳をいかにさせないか、先回りしてチェックするのが、発注元であるメーカーの腕の見せ所になる。
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