Mac新時代を切り開く 使い心地の新iMacと先進性の新MacBook Pro(1/2 ページ)

» 2017年06月08日 00時00分 公開
[林信行ITmedia]

 今年のWWDCで、AppleはVRやAR、AIなど新フロンティアへの挑戦をアピールしたが、もう1つ強く印象付けられたのは、「Macの復権」だ。次期OS「macOS High Sierra」の洗練された機能と一緒に7種類もの新型Macを発表し、さらにはウワサもなく秘密裏に開発していたiMac Proも2017年末に発売すると発表。しかも、これとは別に来年に向けてMac Proの後継となるコンポーネント型ハイパフォーマンスモデルも開発していると公言している。

 今回、AppleがMacへの本腰を示した7製品の中から、21.5インチiMacの最上位モデルと、15インチMacBook Proをいち早く貸し出してもらったので、そのファーストインプレッションを紹介したい。

低価格モデルが大きく魅力を伸ばした新Mac


 新しいMacに共通する特徴は、CPUがIntelの第7世代Core、「Kaby Lake」世代と呼ばれる新プロセッサーに切り替わったことで、高速動作時においても、省電力動作時においても従来モデルよりも処理性能が増している。

 今回、筆者は7モデルの中でも、MacBookがダークホースだと思っている。旧モデルのキーボードは打鍵した印象が弱く、慣れないと打ちにくさを感じるという人も多かったが、最新モデルではMacBook Proと同等の打ちやすいキーボードに差し代わった。

 Retina Displayとあの小型軽量さを考えると、これだけでも十分魅力的な改良だが、その上でCPUは1つ世代が進み、20%ほど動作が速くなっている。ファイルを保存するSSDも50%ほど高速なものになり、メモリも基本は8GBのままだが、CTOで最大16GBが選べるようになった。また、バッテリー動作時間も映画の再生テストで11時間から12時間と延びている。小さなバッグにもエレガントに収まる軽量ボディーと、優美なディスプレイはそのままにここまで色々と改善が行われているのは正直かなりお得に感じる。

 同様にiMacも、手ごろな21.5インチの4K Retinaモデルがより魅力を増した。デスクトップ機ならではの大容量と高速なファイルアクセスを両立するSSDとHDDの合わせ技、Fusion Driveが標準装備されるようになった上に、SSD自体も従来より50%高速になっている。評価機の21.5インチ最上位モデルも1TBのFusion Driveを搭載している。

 こちらもCPUは第7世代Coreになり、省エネ動作時の周波数もTurboBoost時の動作周波数も底上げされた。27インチの最高速モデルは、TurboBoost時で4.5GHz。前モデルの3.7GHzから大きく伸びている。21インチでも最上位モデルではTurboBoost時で最大3.8GHzと、旧27インチモデルよりも高速だ。これにあわせてメモリもDDR4という前モデルよりも1世代新しい2400MHzの高速メモリ(前は1867MHz)を搭載し最大容量も21インチモデルで32GB、27インチモデルで64GBと倍増している。

  それに加えて、これまで27インチモデルと大きなパフォーマンス差を生み出していたGPUが、従来のCPU一体型Intel Iris Pro Graphicsのほかに、購入時のカスタマイズオプションとして、高速な個別単体GPU(ディスクリートGPU)が選べるようになった。今回、貸し出しを受けた21.5インチ最上位モデルも4GBのメモリを搭載したRadeon Pro 560を搭載している。

 このように高性能を発揮させる要素もたくさん詰まっているが、それ以上に魅力的なのはやはりなんといってもiMacの最大の特徴であるディスプレイだろう。

 21.5インチiMacは4K Retina DisplayのiMacとも呼ばれているだけあって、最新のiPhoneなどで撮影した4K映像をピクセル・トゥー・ピクセルつまり、映像を縮小せず、画素を1つも省略せずに表示、再生できる高い解像度を持つ。その高精細なディスプレイの上で非常に広い範囲の色を表現したのがiMac前モデルのチャレンジだったが、最新モデルではその上でさらに明るく、そして格段に多い色の再現に取り組んでいる。


 解像度こそそのままだが、明るさは前モデル比で43%も明るい500nitになっている( 27インチモデルも同じ)。実はApple製品の中では、既にMacBook Proの前モデルが、この明るさを達成していた。しかし、21.5インチや27インチという大きな液晶で、この明るさを実現するのはなかなか大変だ。新iMacでは、そこにチャレンジして達成している。

 一方、MacBook Proを完全に追い抜いてしまったのが、色の表現だ。10bitディサリングという技術を使うことで10億色を表現できるようになっている。10億色というと、これまでの4K/5K Retina iMacや最新のMacBook Proが表現している数百万色から大きな飛躍となる。この比類なきディスプレイは写真や映像のプロフェッショナルが、妥協せずに映像の中の繊細さを追求する上で大きな武器になるだろう。


 試しに筆者が撮影したカラフルな写真を明るさを最大にしてiMacとMacBook Proで映し出してみた。エッジなどはMacBook Proのほうが際立って見えるが、これはMacBook Proの方が解像度が低くてピクセル数をかなり間引いた縮小表示になっているからだろう。色合いの変化なども少し多めでMacBook Pro上で見る写真のほうがメリハリがついているが、これは言うなれば少しデフォルメされた状態。iMacのほうがディテール部分のコントラストは弱いが、その分、自然なグラデーションが描かれている印象を受けた(上の写真ではあまりうまく表現できておらずiMac側が少し色飛びしてしまった)。

 こうした基本性能に加えて、iMacには使い勝手の柔軟性がある。巨大なディスプレイの裏側には充実の接続用ポートが並んでおり、デジタルカメラから抜き出したSDXCカードもそのまま差すことができれば、Macの新標準になりつつあるThunderbolt 3(USB-C)のケーブルを差すこともできる。一方で、USB 3対応の周辺機器の接続にはまだまだ主流な従来型のUSB端子(Type-A端子)も4つ用意されており、さらにはギガビットイーサネットのネットワークケーブルも利用できる。


 ポートは本体背面なので、そのままでは差すのが難しいが、重心のバランスがよいため、くるっと本体を回転させてコネクタを差せるのもiMacのデザインの魅力だろう。

 キーボードやマウス、トラックパッドがすべてワイヤレスで、さまざまな姿勢で向き合えるのもデスクトップ型iMacの魅力だ。ちなみにワイヤレスキーボードとは言っても、USBーライトニングケーブルを使って接続し充電をしたり、万が一、Macが故障してBluetooth機能などが使えなくなったときには、有線キーボードとしても利用できる。


 これまではマウスかトラックパッドかの選択はあったものの、純正のキーボードは1種類しかなかったが、今回からは新たにテンキー(数字入力キー)がついたキーボードも購入時のオプションとして選べるようになった。

 日本では、家の広さなどの理由から、ノートPCを選ぶユーザーが多い。だが、新しい21.5インチのiMacは置くには大き過ぎず、見るには十分な大きさで、映し出す映像も美しく、さらには新旧の周辺機器を深く考えずに接続しっぱなしで使える快適さも含めて、これまでノート型Macしか使っていなかった人に、デスクトップ型Macを使うことの心地よさを知ってもらう入門用マシンとしてオススメの1台といえる(もっとも、Fusion Driveは21.5インチモデルでも、ノート型に差をつける3TBまで選べるようにして欲しかったが)。


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