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月20ドルでWindows 10とOffice 365+αが使える「Microsoft 365」の狙いとは?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2017年07月12日 13時45分 公開

 米Microsoftは年次のパートナー向けイベント「Microsoft Inspire」を米ワシントンDCにて7月9日〜13日(現地時間)の会期で開催している。7月10日には同社のサティア・ナデラCEOが基調講演を行い、新サービスの「Microsoft 365」を発表した。

Microsoft 365 「Microsoft 365」が登場

 2016年の同時期には、企業向けに月額7ドルで利用できる定額制のWindows 10「Windows 10 Enterprise E3」を発表した同社。この流れを受けた今回の新サービスによって、クラウドとサブスクリプションモデルでWindowsの世界を今後どう描こうとしているのかを見ていこう。

Microsoft 365 2017年のMicrosoft Inspireの会場となった米ワシントンDC中心部にあるウォルター・E・ワシントンコンベンションセンター

モダンITの世界を目指す「Microsoft 365」

 Microsoft 365はサブスクリプション型のサービスで、簡単に言えば「Windows 10」「Office 365」「Enterprise Mobility + Security(旧名称はEnterprise Mobility Suite)」のサービスを一本化した形で提供する。OSのライセンス、生産性アプリケーションからコミュニケーションツール、セキュリティ対策、管理ツールまで、ビジネスユーザーに必要なサービスを全てワンセットで用意できるという製品だ。

 実は、Microsoft 365に相当する製品は既に存在しており、「Secure Productive Enterprise」の名称で販売されている。2016年7月開催のパートナーイベント(当時の名称はWorldwide Partner Conference)では、「Secure Productive Enterprise E3(従来の名称はEnterprise Cloud Suite)」とその高機能版「Secure Productive Enterprise E5」の2種類が発表された。今回は、Microsoftという自社名を冠した主力製品としてよりキャッチーな名称でリブランディングしたわけだ。

 毎年名称がコロコロ変更されるMicrosoftの企業向けITスイート製品群だが、2017年の新名称は社名入りでおいそれと変えそうもない。いよいよ腰を据えた取り組みとなりそうだ。

Microsoft 365 Microsoft 365の狙いはシンプルで必要な機能を全てワンセットで提供すること

エンタープライズ向けの「Microsoft 365 Enterprise」は8月1日発売

 Microsoft 365には2種類のカテゴリーがあり、Secure Productive Enterpriseの後継にあたる大企業向けの「Microsoft 365 Enterprise」と、新設となる中小企業やSOHO向けの「Microsoft 365 Business」が用意されている。

 Microsoft 365 Enterpriseは、「Windows 10 Enterprise」「Office 365 Enterprise」「Enterprise Mobility + Security」をセットにしたサービスだ。下位の「Microsoft 365 E3」と上位の「Microsoft 365 E5」の2つのプランに分かれており、E5は一部E3にないサービスも付く。これらはMicrosoftのクラウドソリューションプロバイダー(CSP)などの販売パートナー各社から購入でき、2017年8月1日から利用可能だ。価格は個別契約となるため明示されていない。

 なお、Microsoft 365 Enterpriseの登場をもってSecure Productive Enterpriseの提供は終了となる。米ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏によれば、Microsoft 365 Enterpriseの提供開始後もOffice 365 EnterpriseやWindows 10 Enterprise E3/E5の個別製品での提供は継続される見込み。管理ツールや生産性アプリケーションを特に必要としないユーザーのための選択肢は残されているようだ。

中小企業向けの「Microsoft 365 Business」は2017年秋発売

 今回の目玉はMicrosoft 365 Businessだ。1組織300ユーザーまでという制限がある中小規模企業向けの製品で、1ユーザーあたりの月額料金が20ドルに固定化されている。8月2日にパブリックプレビューを開始し、2017年の秋に全世界で発売の予定だ。

 Microsoft 365 Businessには、「Windows 10 Pro」「Office 365 Business Premium」「Enterprise Mobility + Security」が含まれる。1ユーザーあたり月額12.50ドルで利用できるOffice 365 Business Premium単体と比べて、Creators Update以降に順次導入されている最新の管理機能やセキュリティ機能に対応する点で特徴がある。つまり、月額7.50ドルの差額で「大企業と同じ管理ツールや最新セキュリティの仕組みがそのまま利用できますよ」というわけだ。

Microsoft 365 「Microsoft 365 Business」の機能

 Microsoftとしては、既存のOEMを介したデバイス単位のOSライセンスモデルを止めるつもりはないものの、豊富な機能やサービスを武器に、ユーザーをサブスクリプションへと誘導し、ビジネスの軸を徐々に移していきたいのだと考える。

 特に、中小企業では「購入してきたPCをそのままインターネットに接続して利用」というケースが多いと思われるが、これらをよりモダンな最新のクラウドIT環境へと誘導する狙いもある。

 直近だとWannaCryの被害やWindows 7の延長サポート終了問題が取り沙汰されているが、長期的にはMicrosoft 365のような施策がPC業界のビジネスモデルを大きく変革していくのだろう。

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