コラム
» 2017年08月20日 06時00分 UPDATE

ITはみ出しコラム:米国の白人至上主義サイト、締め出した側と受け入れた側の言い分

米バージニア州で極右団体とその反対派が衝突して死傷者が出たことを受け、白人至上主義サイトやそれに関連する差別的発言をネットから締め出す動きが出てきました。

[佐藤由紀子,ITmedia]

 8月12日に米バージニア州シャーロッツビルで極右団体とその反対派が衝突して死傷者が出たことをきっかけに、白人至上主義者やネオナチ、オルトライト(オルタナ右翼)をインターネットから締め出すような動きがあります。

行き場をなくした「The Daily Stormer」のたどり着いた場所

 衝突で亡くなった女性についてひどい記事を掲載したネオナチサイト「The Daily Stormer」がドメインを停止されています。まずはドメイン登録事業者のGoDaddyがこのサイトのドメインを停止し、次に登録したGoogle Domainsも数時間後に停止しました。いずれも「利用規約に反した」ことを理由に挙げています。

freedom 1 亡くなった女性を罵倒する記事が載った「The Daily Stormer」(8月14日時点のトップページ)

 The Daily StormerにCDNサービス(プロキシを使ってDDoS攻撃などからサイトを守るサービス)を提供していたCloudflareも16日にサービス停止を発表しました。今は匿名化ネットワークの「Tor」を使ってサイトを存続させています。

freedom 2 Googleからも締め出し。CloudflareはThe Daily StormerにCDNサービスを提供していましたが、16日にサービス停止を発表しました

 Redditはオルトライト系サブレディットを削除、Facebookは差別的発言を積極的に非表示にすると宣言し、Twitterからも多数の関連アカウントが凍結されています。

freedom 3 凍結されたThe Daily StormerのTwitterアカウント

 Twitterから追い出された人々の多くはGabという別のSNSに集結しましたが、今度はGoogleがアプリストアからGabのアプリを削除しました(GabにはWebブラウザからアクセスできます)。

 こうした思想の団体への寄付を阻止する動きもあります。クラウドファンディングのGoFoundMe、KickStarter、Indiegogoはそれぞれ、シャーロッツビルで女性を車でひき殺し、多数の人を負傷させた男のための寄付を募るキャンペーンを排除。Appleは差別的なメッセージをプリントしたTシャツを販売する白人至上主義サイトでのApple Payサポートを停止し、PayPalも同様なWebサイトでの募金のPayPal利用を停止しました。

ネットは言論の自由が尊重される場所のはずだが……

 一方、インターネットは本来、言論の自由が尊重される場所のはずだとして、こうした動きに懸念を示す向きもあります。確かにThe Daily Stormerにはユダヤ人や女性を根拠なく攻撃するひどい記事が多数掲載されていますが、中身がひどいからといって排除するのはインターネットの精神に反するという声が上がっています。

 Cloudflareのマシュー・プリンスCEOは、これまではどんなにひどいコンテンツのWebサイトに対しても、ネットワークという立場であくまで中立を保つことにしてきたと語っています。それでも、The Daily Stormerが「Cloudflareはわれわれのイデオロギーを密に支持している」と主張したことが停止を決定する転換点だったと公式ブログで説明しました。

 Cloudflareは2013年から透明性レポートを公開しており、その中で「いかなる政治的圧力を受けても顧客を排除したりコンテンツを削除したりはしない」としていますが、今回(政治的圧力に屈したわけではないけれども)The Daily Stormerを排除したことで、今後は各国政府からの圧力に強く抵抗できなくなってしまったとしています。

 プリンスさんは、この決断が正しかったかどうかは分からないとし、「インターネットサービスに関わる各階層のサービス(Facebookのようなプラットフォーム、GoDaddyのようなドメインサービス、ISPなど)がコンテンツ制限に際してどうすべきかについてのフレームワークについての話し合いが必要だ。正しい答えが何かは私には分からないが、コンテンツ制限に際しては、明確な透明性と整合性、デュープロセス(法に基づいた適正手続の保障)の尊重が不可欠であることは分かる」と語りました。

 今もまだThe Daily Stomerにサービス提供を続けているTorは公式ブログで、自分たちだってTorのサービスが人種差別主義者のひどい内容のWebサイトのために使われるのはすごく嫌だけど、Torのサービスを誰が使うかを管理するようになったら、全ての人を守れるフリーでオープンソースのツールを構築することはできなくなってしまうから、内容にかかわらずサービス提供を続けるんだと主張しました。

 「皮肉なことに、Torを設計・開発しているのは多数の地域、人種、ジェンダー、政治的思想を持った人々だ。われわれは彼らの軽蔑の対象だ。そして、われわれは彼らが敵対する人々の人権を日々守っている」(Tor公式ブログより)

freedom 4 Tor公式ブログより

 どんなに停止しても、The Daily Stormerの主催者、アンドリュー・アングリンさんは執拗にサイトを復活させます。「.ru」(ロシア)からも追い出され、現在はGabのサーバを使っているとのこと。

freedom 5 アングリンさんのGabへの投稿

 これを書きながらOnionサイト(Torでアクセスするサイト)を見に行ったら、今は「.lol」ドメインのURLになっていました(またすぐ変わるかもしれないのでリンクは貼りませんが、被害者を罵倒する記事は今もあります)。

 排除しようとすればするほど、過激になっていくようです。こういう“信念の人”は説得して考えを変えさせることは多分できません。

 この話には正解もないし、結論もありません。でも、遠い国の話ではなく、自分にも関係あることとして、考えていたいのです。

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