逸材ぞろいのFacebookがSF世界を現実にする? 全ては「人々をつなげるため」ITはみ出しコラム

» 2017年04月23日 06時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 10年後、人は普通のメガネと同じようなウェアラブルデバイスを装着して、現実と見分けられないほどのAR(拡張現実)を体感し、考えたことを脳からダイレクトに表示してコミュニケーションできる──。米Facebookは4月19日(現地時間)、年次開発者会議「F8 2017」の2日目の基調講演で、こんな未来を示しました。

f8 1 Facebookの10年ロードマップ

 Facebookが示したロードマップによると、10年後のネットワーク、AI(人工知能)、ARとVR(仮想現実)の到達目標が、上記のような状態なのだそうです。SFじゃなくて、現在からつながった10年後の話として、世界有数の頭脳の持ち主たちが淡々と、あるいは熱く語りました。

 マーク・ザッカーバーグCEOはいつも、耳にタコができるほど「Facebookのミッションは世界中の人々をつなげること」だと言っています。

f8 2 10年後を語るマーク・ザッカーバーグCEO

 彼にとっては、ネットワークもAIもARもVRも、そのための手段です。

 人々をつなげるために何が必要かを考えて、例えば遠く離れた大切な人をあたかもすぐ近くにいるように感じながら会話したいからARとVRを、発声できない人、あるいは異なる言語を話す人とコミュニケーションする方法としてAI+ハードウェアで実現する脳から考えをダイレクトに出力するシステムを、そして、そうした技術を支えるための高速なネットワークを、日々開発しています。

 F8初日のザッカーバーグ氏の基調講演で発表された、アバターになってバーチャル空間で友達と一緒にいられるソーシャルVRアプリ「Spaces」や「Facebook camera」機能をARプラットフォームにする話は、それだけだとなんだかピンとこない感じでしたが、10年後につながる入り口と見るとわくわくします。

f8 3 ソーシャルVRアプリ「Spaces」のβ版を公開

 ARとVRの10年後について基調講演で語ったのは、ちょっと古いゲームプログラマーであれば知らない人はいないレジェンド、マイケル・アブラッシュ氏。米MicrosoftでWindows NTを開発し、FPS(First Person shooter)の名作ゲーム「QUAKE」を共同開発し、ウェアラブルがやりたくてValveに行き、2014年にFacebookが買収したOculus VRも含むAR・VR研究部門「Oculus Research」の主任研究員になったという人です。

 年齢を公表していないようですが(1956年生まれ説が多い)、SFが大好きで「スノウ・クラッシュ」メタバースの実現を今も夢見る永遠の青年です。スノウ・クラッシュは仮想世界を舞台としたSF小説で、Oculusの開発に影響を与えたと言われています。

f8 4 マイケル・アブラッシュ氏

 このアブラッシュ氏が、自分が実際にかけているメガネを指して「これくらいのデバイスで日常的なMR(複合現実)を実現したい」と語りました。普通のメガネのように視力矯正しつつ、「この人誰だっけ?」といった情報を表示したり、赤ちゃんの熱を計って表示してくれたり、会話中の相手の声以外をミュートしてくれたり……。

 そんなメガネを「遠くない将来」に実現するそうです。すごーい。

f8 5 ARメガネでできることの例

 AI搭載の脳直結システムを紹介したレジーナ・デューガン氏も伝説の人です(まだ54歳だけど)。DARPA(米国防高等研究計画局)にいたとき、エリック・シュミット氏から「好きなことしていいから、どうぞGoogleに来てください」と懇願されて「じゃあATAP(先端技術プロジェクト)のリーダーやるね」とGoogle入りして活躍していたところを、今度はザッカーバーグ氏が説得してFacebookに引き抜きました。

f8 6 レジーナ・デューガン氏

 自分の夢を追っているアブラッシュ氏もデューガン氏も、ザッカーバーグ氏のビジョンに自分のやりたいことを重ねたんでしょう。Facebookなら研究開発費もかなり自由に使えるし、優秀な人材も多いし。

 明確なビジョンとリソースで次々と逸材を取り込んでいく(取り込めない人はつぶしにかかる)マーク、恐ろしい子。今後10年でどこまでゴールに近づけるのか、今後も目を離せません。

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