iPhone Xはどこが次世代なのか?これまでで最大級の変化(3/4 ページ)

» 2017年11月01日 09時00分 公開
[林信行ITmedia]

想像以上によく練られた顔認識、「Face ID」機能

 ホームボタンがなくなったことで、もう1つ大きく変わったのが指紋認証技術の「Touch ID」が使えなくなったこと。代わりに採用されたのが顔認証技術の「Face ID」だが、これが思っていたよりも操作性が練られていて使い勝手が良かった。

 まず指紋認証をやめて顔認証にすることのメリット。実はこれまでの指紋認証ではiPhoneの持ち主が寝ている間、つまり知らない間に、勝手に指紋を取られてロックを解除されたり、買い物をされたりといったことがたまに報告されていた。これに対してFace IDは目を開けていないと認証されないのでその心配がない。

 Face IDはインカメラに写った顔を認識しているわけではない。顔にドットパターンを投影し、それを赤外線カメラで読み取り、顔の微妙な起伏までとらえているのだ。だから、真っ暗な部屋でもきちんと顔認識ができるし、顔写真でiPhoneをだましてロックを解除しようとしてもダメだ。それどころか、Appleはハリウッドの特殊メイクなどによる変装すらも見抜いて反応しなくなるように、iPhoneのニューラルネットワーク(認識技術)をトレーニングしている。双子の兄弟など特殊な場合を除き、顔認証をだませる確率は100万分の1だという(もう1つ、顔の特徴が発達していない児童の顔では誤認識が生じる可能性が高まるという)。

 実際に使って見て驚かされたのは、AppleがFace IDでの認証をストレスのないものにするためにいかに多くの工夫をしているかだ。Face IDの認証はかなり速く、あっという間に完了するが、それに加えて、Face ID関連の操作がとにかく待ち時間を感じさせないように練り込まれた設計になっている。

 例えば、ロック画面の解除。瞬時に終わるFaceIDの本人確認を待たずに、とりあえずロック解除の操作だけ先に行っておくことができ、確認が取れ次第ロックが解除される。サイドボタンをちょんちょんと2度押しすると、Wallet(iPhone内のお財布)が起動するが、ここで支払うカードを選んでいる間にすでにFace IDでの顔認証が完了し、支払いができるようになっている。

 確かに、指紋認証と違ってiPhoneの画面を顔から背けた状態では本人確認ができないが、本人確認が必要な場面は大概、ユーザーの側も慎重に向き合う必要がある場面だ。Face IDの認証のスピードの速さも考えると、またしてもこれまでホームボタンに押し付けていた指が手持ち無沙汰になる感じはあるが、不満を感じる人はほとんどいないだろうと思えた。

 iPhone Xでは、同じFaceTimeカメラを使って絵文字の顔を操るアニモジという機能もiPhone X限定で提供している。顔の50以上の筋肉の動きを読み取って再現する表情は何か愛らしく、感情移入できるものがある。なお、アニモジを作るのはiPhone Xでしかできないが、Iメッセージを使って送信した際にはムービー形式になるので、再生はどのiPhoneでも可能だ。

 iPhone Xの発表会では、他にユーザーの顔を認識してお面を合成表示したり、顔だけ他のキャラクターに変えてしまったりといった技術を搭載したSnapchatの将来バージョンが紹介された。また、Appleの映像編集ソフト「Clips」もリアルタイムでセルフィー(自撮り)映像の背景を差し替えたり、絵画風にしたりと、さまざまな効果が加えられるようになるようだ。

 あなたの顔の表情やわずかな起伏まで認識するカメラやセンサー、その処理を支えるA11bionicプロセッサ、この組み合わせはこれまでのiPhoneにはなかった新しい応用、新しいタイプのアプリを今後も生み出してくれそうだ。

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