「ネット中立性」が米国で廃止へ 日本のサービスにも影響はある?ITはみ出しコラム

» 2017年11月26日 06時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 米国のバラク・オバマ前大統領政権が2015年にせっかく定めた「ネット中立性(Net Neutrality)」を守る規則が、2017年12月に撤廃されようとしています

 米国内の話だし、ごたごたして分かりにくいので、日本ではほとんど関心を持たれていないようですが、日本にも関係なくはないニュースです。今回は、日本のユーザーにとって「米国のネット中立性規則の廃止でどんな影響があるのか」について見ていきます。

neutral 1 ネット中立性について語るバラク・オバマ前大統領

 この規則撤廃を「風が吹くと桶屋がもうかる」的にはしょると、「ネット中立性の規則がなくなるとNetflixが高くなる」――かなり強引ですが、そういう可能性をはらんでいるのは確かです。

 もう少し詳しく説明すると、AT&T、Verizon、Comcastなどの米通信インフラ企業やISP(インターネットサービスプロバイダー)傘下のコンテンツ企業と競合するNetflixやYouTube、Huluなどは冷遇され、その結果、これまでと同じ品質のサービスを保つためにユーザーへの値上げを余儀なくされるかもしれません。

 規則撤廃の影響はそれだけではありませんが、日本のユーザーに直接関係あることに絞るとそうなります。

neutral 2 規則撤廃はNetflixなど動画配信サービスの値上げを引き起こすかも……

 そもそも「ネット中立性」の「中立」は何と何の中に立つことかというと、インターネットのトラフィックです。オバマ前大統領が制定した「Open Internet Order」とは、「インターネットを支える通信インフラ企業やISPは、回線を行き交うトラフィックを全て平等に扱うべし」という規則です。

 つまり、競合するからといって特定のサービスの通信速度を遅くしたり、規制したり、利害が一致する企業を特別扱いしたりしちゃだめよ、ということです。

 これは通信インフラ企業にとっては嫌な規則です(実際、AT&T、Verizon、Comcastといった通信インフラ企業はこの規則に反対していました)。

 だって、苦労してはりめぐらせたインターネットのためのネットワーク上を、コンテンツ企業はタダ乗りして膨大なトラフィックを流しまくってお金をもうけ、トラフィックがあふれるとユーザーから苦情が出て、お金を掛けて基地局を増やしたりケーブルを太くしたりしなくちゃなりません。

 インターネットがメールとテキストベースのWebサービスだけだったころは問題になりませんでしたが、今や高速な常時接続環境や4K動画が当たり前。インフラ側がそれに対応するのは大変です。

 だから、お金持ちな通信インフラ企業やISPはコンテンツ企業を買収して、苦労して敷設した「土管」を自分でも使うことにしました。

 例えば、AT&Tは衛星放送のDIRECTVを、Verizonはデジタル光ファイバーテレビ放送のFiOS TVを買収し、コンテンツサービスも手掛けています。AT&Tはドラマ専用チャンネルHBOなどを傘下に持つTime Warnerも買収しようとしています。

neutral 3 Time Warnerは、「ゲーム・オブ・スローンズ」や「シリコンバレー」が人気のドラマ専用チャンネルHBO、「ハリー・ポッター」シリーズや「バットマン」、「スーサイド・スクワッド」などで知られる映画部門のWarner Brothers、CNN、TNT、Cartoon Networkなどを持つCATV局のTurner Broadcasting Systemを擁する総合メディア企業です

 この買収が認められて、ネット中立性の規則もなくなれば、米国のAT&T利用者は人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」を、パケット代を気にせずに高画質で快適に視聴できるようになるかもしれません。

 それは一見、いい話みたいですが、何かを優先すれば何かが犠牲になります。もしかしたら、競合するNetflixの人気ドラマ「ストレンジャー・シングス」をAT&Tのユーザーがスマートフォンで見ようとすると、途切れ途切れになるかもしれません。

 それでは困ると、NetflixはAT&Tに優先順位を上げてもらうためにお金を払うかもしれません。そのお金を稼ぐために、ユーザーの会費を値上げするかもしれない、というのが最初にはしょった話の中身です。実際、Netflixは規則撤廃に反対しています。

 ネット中立性の規則撤廃はまだ決まったわけではありません。12月14日(現地時間)に米連邦通信委員会(FCC)内で投票が行われ(FCCの5人の委員はほとんど共和党員なので可決でしょう)、採択します。

 NetflixやGoogle、Facebookなどの反対派が黙ってはいないでしょうから、採択後も訴訟になったりで、しばらく落ち着くことはないでしょう。

バックナンバー

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月14日 更新
  1. きょう発売の「MacBook Neo」、もうAmazonで割安に (2026年03月11日)
  2. 新品は絶滅、中古は高騰──「令和にMDを聞きたい」と願った筆者が、理想の再生環境を整えるまでの一部始終 (2026年03月13日)
  3. M5 Max搭載「14インチMacBook Pro」がワークステーションを過去にする 80万円超の“最強”モバイル AI PCを試す (2026年03月13日)
  4. 12機能を凝縮したモニタースタンド型の「Anker 675 USB-C ドッキングステーション」が27%オフの2万3990円に (2026年03月11日)
  5. セールで買った日本HPの約990gノートPC「Pavilion Aero 13-bg」が想像以上に良かったので紹介したい (2026年03月11日)
  6. 3万円超でも納得の完成度 VIA対応の薄型メカニカルキーボード「AirOne Pro」を試す キータッチと携帯性を妥協したくない人向け (2026年03月12日)
  7. ワコム上位機に肉薄? 10万円で18.4型4K! 高コスパ液タブ「GAOMON Pro 19」の長所と弱点 (2026年03月13日)
  8. 「MacBook Neo」を試して分かった10万円切りの衝撃! ただの“安いMac”ではなく絶妙な引き算で生まれた1台 (2026年03月10日)
  9. 高音質・良好な装着感・バッテリー交換式――JBLのフラッグシップ「Quantum 950 WIRELESS」は妥協なきヘッドセットか (2026年03月12日)
  10. JBL、高機能ノイズキャンセリング機能を備えたワイヤレスヘッドフォン「JBL Live 780NC」「JBL Live 680NC」発表 (2026年03月13日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年