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日本マイクロソフトはOffice 365+AIで働き方をどう改革したのか鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2017年12月07日 06時00分 公開

 「働き方改革」という言葉を最近よく聞くようになった。「一億総活躍社会」を標語に老若男女を問わず、それぞれのスタイルで仕事に取り組むことを模索する仕組みだ。2016年には内閣官房に「働き方改革実現推進室」が設置され、国を挙げての取り組みとなっている。

 こうした状況を受け、IT業界では働き方改革(あるいはワークスタイル改革)を率先して実施し、自社製品のアピールとともに最新の取り組みを紹介する企業が増えてきた。その代表的な存在と言えるのが日本マイクロソフトであり、比較的早期から働き方改革を進めてきたことで知られている。

 実際、同社の取り組みは興味深く、多くの企業にとって参考になりそうな点が幾つかある。「企業の業務改革や生産性向上を実現する製品を提供する企業は、自らがそれを実践してその効用をアピールしなければならない」とばかりに、最新ツールを駆使して自ら業務改革を実現しているのだ。

MS 日本マイクロソフトの品川オフィス受付前には、「働き方改革推進会社」の看板と、テレワーク先進企業としての功績をたたえた総務大臣からの表彰状が飾られている

移転で本格化した日本マイクロソフトの働き方改革

 日本マイクロソフトは「ワークスタイル変革」と銘打った業務改革を2010年から実施してきた。

 当時の同社は新宿本社を中心として、東京周辺だけでも事業部ごとに複数のオフィスに分散しており、オフィス間の移動が月5506回も発生し、コスト効率が悪かった。しかも営業などの業務を問わず、多くの従業員が出張や外出などで離席していることが多く、昼間の空席率が平均60%を超えるなど、オフィス空間と相互連絡の面で非常に無駄が多かったと言える。

MS 品川本社移転以前の日本マイクロソフトが抱えていた課題

 同社は2011年に品川へオフィスを移転したが、これを機に、時間、場所、会議やメール依存での生産性低下など、それまで蓄積されてきた数々の問題を最新のツールや業務改善をもって見直していこう、というのが本格的な働き方改革の発端となる。

 移転後の品川オフィスでは、従来の固定席を廃止し、フリーアドレス制度をもって好きな場所での作業が可能になり、オフィスの利用効率が向上した。また、複数の拠点集約と「Skype(Lync)」をはじめとするツールの活用により、移動時間や旅費交通費の削減を実現し、デジタルツール活用はペーパーレス化も推進するなど、非常に大きな効用をもたらしている。

 2015年には就業規則改定を発表し、在宅勤務制度の廃止とともに、テレワーク制度の導入とフレックスタイムにおけるコアタイムの廃止など、より柔軟な働き方で業務に専念できるよう見直している。

MS 日本マイクロソフトにおけるワークスタイル変革前と変革後
MS ワークスタイル変革により2010年から2015年の間に起きた変化

 ツールの活用で興味深いのは、会議はメンバーが同じ場所に集まる必要がなく、オンライン会議ツールで場所を問わず参加できる点にある。

 これは客先での訪問も同様だ。特に引き合いの多い現場説明を行うエンジニアなどは移動がネックとなってアポイントの制限がかかりやすいが、ツールを駆使したオンライン同行も織り交ぜることで、この面でも効率を上げている。

MS 時間と場所という業務における最大のネックをツール活用で改善する

Power BIやSurface Hubの活用で無駄を省き、意思決定を高速化

 そんな日本マイクロソフトだが、2017年からは「働き方改革第2章」と題して、さらなる業務変革を目指している。

 従来は構造の見直しでの効率化だったが、今後はさらに自社が開発する最新ツールや技術を使い、より働き方の量や質を高めていくという取り組みとなる。

MS 2017年以降は新技術やツールの導入で働き方の量や質そのものを変革していく

 1つは比較的新しいツールの活用だ。

 これまで同社は「Excel」を業務改善と生産性向上のツールとして推奨し、多くの企業に導入を促してきた。Excelは数値分析や計算の省力化という効用をもたらした反面、必要なデータを得るため、またはデータを会議用などの資料向けに加工するため、ツールの操作が長時間に及ぶなど、本来の目的と手段が入れ替わったような状況もままある。

 そこで導入したのが、自社のビジネスデータ分析ツール「Power BI」だ。Power BIは入力したデータをもとに自動で各種グラフなどを作成してダッシュボードで視覚化し、分析や解析に役立てたり、それをもとにした資料を手軽に作成できたりする。

MS 「Power BI」を活用した分析の省力化

 会議ではPower BIのダッシュボードを大画面のタッチパネル搭載デバイス「Surface Hub」に映し出して、その場で必要に応じてタッチ操作でグラフの表示方法や抽出データなどの設定を変え、視覚化された情報を分析したり、手書き入力機能でメモを書き込んだりしながら議論を進めることで、宿題を極力持ち帰らず、意思決定を迅速に行えるよう工夫した。

 また、必要な情報が得られるダッシュボードを呼び出して大画面に映しながら会議をすることで、事前に配布資料を別途作成して印刷したり、議論で指摘されたデータを追加した資料を会議後に作り直したり、といった無駄も極力省いている。

 さらに営業の現場でPower BIを使えば、客先で求めに応じて必要なデータをすぐ取り出し、その場で手軽に視覚化できるため、非常に効率がよいという。

 ちなみにSurface Hubは2017年1月に約30台を導入し、執務室や会議室、社長室にも置いて積極活用している。

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