マイニングブームは5月末に1ビットコインが30万円を突破したころに始まった。それまで目立たない存在だったRadeon RX 580/570カードの売れ行きは急騰。世界中で枯渇したため、旧世代のRadeon RX 480/470カードを仕入れるショップが相次いだが、それもあっという間に在庫切れとなるなど、猛烈な特需が一カ月以上続く。購入層は中国人を中心とした外国人が多く、日本人はむしろ少数派だった。
ビットコインをはじめとする仮想通貨はパソコンでマイニング(採掘)することで入手できる。採掘のエンジンとなるのはGPUで、効率的に処理できるグラフィックスカードを複数台併行して動かすとどんどんペースが上がる構造だ。通貨の種類によって相性の良いGPUには違いがあるが、当時“マイナー”から支持を集めていたのはRadeon RX 580/570だった。
同GPU搭載カードの売れ行きが異常に伸びたのはそれゆえのことで、前世代も含めて枯渇した6月中旬以降は対象がGeForce GTX 1060(3GB)やGTX 1070カードまで広がっていった。多数のPCIeスロットを搭載したマイニング向けマザーが登場し、PCIe x1スロットを延長するライザーカードやマルチGPUの稼働に向いた大容量電源ユニットの売れ行きも好調なまま下がる気配もない。
当時、あるショップが「ゲーム用で主流のGTX 1060/1070まで広がったのは正直痛い。いつ止むか分からないマイニングブームで、ゲームのために自作しようと思っているお客さんが離れてしまったら元も子もないですから」と真剣な口調でこぼしていたのが印象的だ。購入制限をかけて販売するショップは珍しくなく、ゲームユーザー向けのGTX 1060搭載カードの特価セールを実施する例すらみられた。
この猛烈な需要がようやく落ち着きをみせるようになったのは7月下旬に入ってから。ターゲットとなっていたグラフィックスカードが値上がりして旨味が減ったのと、マイナーの需要がある程度満たされたことが背景にあるようだ。
8月に入ると、入力端子を最小限まで省いたマイニング専用のRadeon RX 470カードも出回るようになるが、「一時期より落ち着きましたが、ジャンル的には定着しているので、人によっては相当お得な特価だと思いますよ」(パソコン工房 秋葉原BUYMORE店、当時)とコメントされるほどには静かになっていた感がある。
しかし、これで過去のものにはなからなかった。
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