同人を狙い撃ちしている、とウワサされた一太郎2017だが、一太郎2018では小説投稿サイト投稿者も狙い撃ちにしてきたようだ。
小説、特にライトノベルでは昨今、小説投稿サイトに投稿された作品からの出版が相次いでいる。出版社から人気作品の作者にオファーが来るケースが多いと思われるが、その一方で従来の出版社主催の新人賞でも小説投稿サイトで公開済みの作品を受け付けている。
そのような状況を踏まえると、できたところから小説投稿サイトで公開し、読者の反応を見つつ新人賞応募作を完成させる、という進め方も一般的になっていくのかもしれない。
だが、小説投稿サイトと出版社の新人賞とではフォーマットなどに差異がある。小説投稿サイト用に作成した作品を新人賞応募用に改稿することには意味があっても、機械的に行う変換作業にあまり時間を費やしたくはないだろう。
一太郎2018では小説投稿サイト応募作と新人賞応募作、あるいは同人誌用の印刷用データなどを相互に行き来するための機能が強化された。具体的には次の2点だ。
小説投稿サイトではプレーンなテキストデータで投稿するため、ふりがなや傍点を表現する際にはサイトごとに決められた書式でテキストデータ自身に記述する。ふりがなに関しては一部の例外を除いて「|親文字《ふりがな》」というフォーマットが一般的だが、傍点をサポートしているところは少なく、ふりがなとして「・」を当てて代用することが多い。
だが、ふりがな機能で傍点を“きちんと”表現することはかなり面倒だ。簡易的には親文字の文字数分の「・」をふりがなとして「|親文字《・・・》」のように記述すればよい。とはいえ、本来傍点は文字に対して付けるものであり、この例のように複数の文字に対してまとめて付けてしまうと表示環境によっては若干のずれが生じる可能性もある。
そのため、「|親《・》|文《・》|字《・》」と、1文字単位でつけることが望ましく、実際に「小説家になろう」サイトの入力フォームで「傍点」を選ぶとこのように変換される。
また、新人賞応募をWebから受け付けているところでは、独自のふりがなフォーマットになっているところもある。小説自体は一太郎2018で書き、アウトプットナビから「小説投稿」を選択すれば一発でふりがな・傍点を各サイト向けのフォーマットで出力することができる。変換したテキストファイルを出力するだけでなく、選択部分を変換したテキストデータをクリップボードにコピーすることもできるので、作品の一部分を投稿したり、修正したりすることも容易だ。
逆にふりがな入りのテキストファイルを読み込んで、ふりがな・傍点入りの一太郎ファイルに変換することもできる。デフォルトでは「|親文字《ふりがな》」「|傍点《・》」の対応だが、「ツール>オプション>オプション」の「ファイル操作」にある「読み込むふりがなの形式」の設定を変更すれば「|親文字《ふりがな》」「《《傍点》》」、pixiv特殊タグの読み込みも可能だ。過去の投稿済み作品を一太郎に変換するときに重宝するだろう。
ルールとして決まっているわけではないが、小説投稿サイトでは読みやすくするために会話文の始まりと終わり、段落間などに空行を入れることが多い。だが、これをそのまま印刷物として出版してしまうとページがスカスカになってしまう。小説投稿サイトに投稿した作品を出版社主催の新人賞応募用に改稿する際には、これらの「小説投稿サイト向けの空行」を削除し、出版物の体裁に整える必要がある。
一太郎には以前より「まとめて改行削除」という機能があり、空行を指定した行数だけ残して削除することができた。一見、小説投稿サイト用作品を応募用に変換する場合に使えそうだが、単に空行を削除すれば良いわけではなく、応募作でも意図がある空行は残さなければならないため、そのまま利用することは難しかった。
応募作でも残すべき空行は投稿サイト向けでは「小説投稿サイト向けの空行」とのバランスをとるため、2行以上の空行にすることが多い。そのため、小説投稿サイト用の原稿を応募用に変換する場合には「1行のみの空行は削除」「2行以上の空行は1行だけ残す」という処理を行いたいところだ。
しかし、今までの一太郎の「指定した行数だけ残す」だと、「1行のみでも空行は削除する」か「1行のみの空行はそのまま、2行以上の空行は1行だけ残す」のどちらかしか選べなかった。
一太郎2018ではここに「2行以上の空行は1行だけ残す」が追加された。これによって投稿サイト用の空行がかなりよい精度で削除できるようになった。
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