“ほんやくコンニャク”の実現はいつ? 音声認識・翻訳技術は「言語」の壁を取り払うか特集・音声言語インタフェース最前線(1/4 ページ)

» 2018年04月20日 12時30分 公開

 先日、PC USER編集部の編集Gから「『“ほんやくコンニャク”が実現するのはいつになるか』をテーマに原稿を書いてください」という、そのものズバリな依頼がやってきた。

 ほんやく(翻訳)コンニャクといえば、国民的大衆マンガ(アニメ)のネコ型ロボットが取り出す「未来のひみつ道具」の1つで、ミドルエイジ世代にとっては学生時代に「アンキパン」と並んで最もほしいと思った道具かもしれない。

 ほんやくコンニャクを食べると、読み書きから会話まであらゆる言語のバリアを取り払うことが可能で、外国人との意思疎通には欠かせない。さすがに未来のひみつ道具というだけはあり、単に地球上に存在する外国語だけでなく、宇宙人から動物、古代の言葉まで、「万能翻訳機」として機能する。恐らくは、昨今話題の異世界探訪にも強い味方となってくれることだろう。

旅先で言葉の壁にぶつかることは多い。こんなときほんやくコンニャクがあれば……

 こうした万能翻訳ツールに対する渇望は世界中であるようで、SFの世界では割とメジャーな存在だ。

 SFドラマの金字塔となった「Star Trek」(スタートレック)においても万能翻訳機はストーリーで重要な位置を占めており、例えば、Microsoftの翻訳アプリ「Bing Translator」は標準で劇中に登場する「クリンゴン語」の翻訳に標準で対応している。

 よりほんやくコンニャク的な存在でいえば、英国の作家ダグラス・アダムズが記したSFコメディー「The Hitchhiker's Guide to the Galaxy(銀河ヒッチハイク・ガイド)」では、「Babel Fish」(バベル魚)という魚型の万能翻訳機(?)が登場しており、これを耳から挿入することで宿主の脳波を糧に周囲の音を取り込んで言語変換を可能にするという。

 SF世界では異星人との交流がごく当たり前なので、ドラマを生み出すための“道具”として欠かせないものというわけだ。

人はなぜ万能翻訳機を求めるのか

 SFの世界に限らず、言語の壁を越えて相手とコミュニケーションを取りたいという欲求は普遍的に存在しており、語学学習に対するニーズは非常に高い。とはいえ、近似している欧州圏内の隣接言語でさえ互いのコミュニケーションは大変なようで、筆者が米国で語学留学していたころは英語がうまく話せずに同じ出身国の者同士で固まってしまうという現象もよく見られた。

 筆者は比較的ドイツ人グループと話すことが多かったが、英語に比較的近く、英語習得レベルが高いといわれるドイツ人たちでさえ、「込み入った話は英語では難しい」とドイツ人同士で固まってしまうありさまだった。

 「日本語と英語は全然文法が違うから日本人が英語を習得するのは欧州人より難しい」という話はよく聞くが、程度の差こそあれ抱えている事情はみな一緒というのは、語学留学時代に得られた一番の経験だ。

Microsoftが2016年に開催したBuildカンファレンスでは、入り口にMicrosoft Translatorを使ったなぞ解きがあった
なぞのフレーズをTranslatorアプリに入力すると……(画面=左)。それはクリンゴン語で書かれたMicrosoftからのメッセージだった(画面=右)

 さて、そうした彼らが語学学習に向かう一番のモチベーションは何だろうか。Brexit(EUからの英国脱退)以前の話だが、筆者の友人のフランス人やスペイン人らは「英国(あるいは英語圏)で働くため」という仕事上の理由を挙げており、移動の自由のあるEU圏内ならではの事情が見られた。

 ポーランドを旅行中に英語が比較的達者な女性たちに学習方法やそのきっかけについて聞いたところ、純粋に「(欧州にいる)友人らと共通して話せる言語を学びたい」といった理由を挙げていた。

 だが実際のところ、多くの人にとっての理由は非常にシンプルなもののようだ。英The Telegraphによれば、語学学習アプリを提供するBabbelがユーザーらを対象にした最新のアンケート調査結果では、その理由の4割を「旅行」が占め、「移住」や「教養」といった回答を大きく引き離している。

 今でこそ航空運賃やビザの障壁が下がって人の行き来が簡単になり、欧州などのように外国人と触れる機会はそれほど珍しいものではなくなっているが、「海外旅行」は外の世界に触れる貴重な機会であることには変わらない。その瞬間、その体験を最高のものにすべく、事前に備えるのは自然な行為かもしれない。

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