逆になぜ、社内ではなく、社外のデザイナーに発注しようという発想が出てくるのだろうか。話題作り、他社との差異化など、冒頭で述べたような要因はもちろんだが、これ以外にも表からは決して見えない、開発サイドならではの思惑がある場合もある。その1つが「社内にいるデザイナーには発注したくない」というものだ。
大きな会社になればなるほど、製品デザインを担当するデザイナーは自社で抱えている。開発部とコミュニケーションを取りながら柔軟に対応するデザイナーはもちろん少なくないわけだが、デザイナーがベテランであればあるほど、社内でアンタッチャブルな存在になる場合もある。例えば、上に対しては愛想よくしているが、若手のスタッフがデザインの修正を依頼しに行くと露骨に嫌な顔をしたり、忙しいという理由でやたらとスケジュールを引き伸ばしたりと、コントロールが一苦労だったりするのだ。
であれば、外部の著名デザイナーを起用するという名目で、開発サイドが直接社外にデザインを発注する形にすれば、付き合いづらい社内のアンタッチャブルなデザイナーと顔を合わせずに済むし「お前らがいなくても俺たちはやっていける」という暗黙のメッセージにもなりうる。たとえ著名デザイナーであっても、代理店を間に挟めば、それほど気を使わずに要望が出せる。少なくとも「社内で立場の強いデザイナーにお伺いを立てる」ような必要はない。
こうした「真の理由」に加えて、冒頭で述べたように競合他社との差異化につながリ、かつメディアでの露出も増えるとなれば、まさに一石三鳥だ。もちろん、真の理由の方が表に出ることはない。
余談だが、これに近いところでは、個人的にファンだった著名デザイナーと発注を通じてお知り合いになりたいといった、ミーハー極まりない動機が外部デザイナーの起用につながっていることも少なくない。CMや販促物において、広告部門のスタッフが自分が好きな俳優やアイドルをイメージキャラクターとして起用するのとよく似た例だ。
メーカーが社外の著名デザイナーを起用した製品には、こうしたケースが少なからずあることを知っておけば、より製品を見る目が養われるはずだ。
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