VAIO、東映、クラフターの3社が、新宿バルト9で7月2日から「VR映画」の上映を開始することを発表した。6軸の頭部移動に対応する(6DoF)スタンドアロンVR HMDを観客が装着し、シアターに着席し鑑賞するスタイルとなる。3社がVR映画を展開する意図とは。
VAIOは、2017年8月にVRソリューション事業への参入を発表。当時、VAIOの吉田秀俊代表取締役社長は、VAIOの成長戦略としてブランド価値を高めるべく、「VAIOのリソースをフル活用し、ハードだけに依存しない」ことを掲げていた。
VR映画でVAIOは設備周りのソリューションを手掛ける。VR HMDには中国Pico社が開発・製造する6DoF対応の「Pico Neo」(2880×1600ピクセル、90Hz)を採用し、セキュリティ面などを映画館向けにVAIOがカスタマイズ。
既存の映画館設備に無線アンテナとサーバを設置するだけといった設置の容易さや、サーバから全HMDの動画再生の管理が可能といった運用のしやすさをアピールする。
VAIOの赤羽良介副社長は、「劇場ならではの、非日常の世界を周りの人とVRで体験してほしい」とした上で、「VR自身が、新たなパーソナルコンピューティングの提案につながる期待感がある。VAIOとしてVRの知見を深めることは大事だと考えている」と、VR映画事業を手掛ける理由を話した。
VAIOと東映、クラフターは、VR映画事業を「VRCC」(VRシネマティック・コンソーシアム)と銘打ち、設備ソリューション(VAIO)、コンテンツ配給(東映)、コンテンツ制作(クラフター)をそれぞれが担う。
東映の村松秀信取締役は、2009年に公開された「アバター」が3D映画として大ヒットして以来、3DスクリーンやIMAX、4Dといった、映画館でしか味わえない「体感型シアター」のニーズが高まっていると映画業界の現況を分析する。
ここにいち早く「VR映画」という新たな体験を導入することで、市場のけん引を狙う。自社グループが持つ「相棒シリーズや「科捜研の女」シリーズ、スーパー戦隊シリーズ、仮面ライダーシリーズ、プリキュアシリーズ、ドラゴンボール、ワンピースといった豊富なIPをVR映画に配給することで、VR映画を普及していきたいと意気込む。
コンテンツの制作を担うのは、博報堂の映像コンサルティング部門からスピンアウトした企業であるクラフターだ。自社でアニメ制作スタジオを持ち、CGを従来のアニメーションのように見せる「セルルック」技術に強みがあると同社の古田彰一社長は語る。
映画館でのVR鑑賞ではヘッドフォンで耳をふさがず、高品質な音響を楽しめるとともに、コメディーやホラーのシーンで周囲の人の反応が聞けるといった「一体感」も楽しめることがVR映画のメリットだという。
VR映画の第1弾は、オリジナルアニメ「夏をやりなおす」・「おそ松さんVR」・「evangelion:Another Impact(VR)」の短編3本立て同時上映となる。いずれも6分前後のVR作品で、合わせて17分程度の鑑賞時間となる。
「夏をやりなおす」は、2017年にドイツで開催された国際情報通信技術見本市「CeBIT2017」で同社が公開した5分間のオリジナルショートアニメ。上映時間は約5分。
発表会ではアイドルグループのSTU48が映像体験した。爽やかな夏の学校を背景として、制服を着た少女がグラウンドに立っているところから映像が始まるが、話は急転直下。衝撃の結末を迎える。映像体験後、STU48の石田みなみさんは「普通の映画は顔を背ければ映像から目をそらせるが、VRでは世界観から逃れられない」とVRならではの感想を漏らした。
「おそ松さんVR」はアドアーズのVR施設で限定配信しているものをVR映画向けにチューニングした。上映時間は約6分半。
「evangelion:Another Impact(VR)」は、「日本アニメ(ーター)見本市」で公開した同タイトルの作品を原作とし、クラフターが一から設計した。上映時間は約6分。
今後はアーティストのライブVRや「呪怨」VR、仮面ライダーVR、アイドルVR、ドキュメンタリーVR、VR長編映画のラインアップを予定しているという。
7月2日から約1カ月間、新宿バルト9で先行上映する。チケットは6月30日(土)午前0時から販売開始。価格は1500円(税込)。なお、13歳未満は鑑賞できないとしている。
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