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» 2018年11月29日 17時53分 公開

QLC SSDを採用した大容量SSDの性能は? 「Samsung SSD 860 QVO」徹底検証 (1/2)

QLC NANDフラッシュメモリを採用したSSDは大容量を低コストで実現できるのが特徴だ。しかし、現時点ではあまりお勧めできないかもしれない――その性能を検証した。

[鈴木雅暢,ITmedia]

 Samsung Electronicsは、QLC NANDフラッシュメモリを採用した普及価格帯向けSSD「Samsung SSD 860 QVO」を発表した。インタフェースにはSerial ATAを採用し、同社のラインアップでは「Samsung SSD 860 EVO」の下位に位置付けられる。QLC NANDフラッシュメモリは、低コストで大容量なSSDを作りやすいことから普及価格帯の選択肢として大いに注目されているが、製品としての仕上がりはどうだろうか。今回、最大容量となる4TBモデルを入手したので、性能を検証しよう。

Samsung SSD 860 QVO(右)は、QLC NANDフラッシュメモリを搭載したSSDだ。1TB、2TB、4TBと大容量中心のラインアップをそろえる。左は上位モデルにあたるSamsung SSD 860 EVO

QLC NANDフラッシュの特徴

 QLC NANDフラッシュメモリは、メモリセル1つ当たりに4bitのデータを記録する方式のNANDフラッシュメモリだ。現在の主流であるTLC NANDフラッシュメモリに比べて1セル当たりのデータ量は1.33倍、高級SSDに搭載されているMLC NANDフラッシュメモリに比べると2倍になる。つまり、低コストで大容量のSSDを作りやすい。一方、QLCでは電流制御が複雑になるため、メモリセル当たりの寿命はTLCの約3分の1、性能(特に書き込み)もTLCに比べて大きく落ちる。

NANDフラッシュメモリの種類と買い換え回数

Samsung 860 QVOの外観とスペック

 Samsung SSD 860 QVOの外観とスペックをチェックしよう。2.5インチ、7mm厚のフォームファクターを採用した外観は「ごく普通のSSD」。上位の860 EVOのデザインを踏襲しつつ、カラーリングをグレー基調に変更している。

 性能面ではSerial ATAインタフェースのSSDとしては標準的なもの。上位の860 EVOと比べるとQD1のランダムリードで見劣るが、これもTLC SSDの一般的な水準からすると低いわけではない。

 性能面での見劣りが少ないのは、DRAMキャッシュの容量が大きいことに加えて、後述するSLCバッファー技術の効果が大きい。

 耐久性については、TBW(Total Byte Written)が指標になる。SSD全体で寿命が来るまでにどれくらいの容量を書き込みできるかの総量を示すものだ。これも860 EVOと比べると見劣りするものの、一番容量が少ない1TBでも360TBと十分だ。通常の使い方なら数年は問題にならないだろう。

 なお、コントローラーは、860 EVOと同じSamsung製の「MJX」。QLC NANDフラッシュメモリもSamsung製である。Samsungが「V-NAND」と呼ぶ3D NAND技術も併用されている。コンシューマー向けで実用化されている中では最新の64層の技術を採用している。

2.5インチ、7mm厚のフォームファクターを採用している
グレーを基調としたシックなデザイン
Samsung SSD 860 QVOのスペック
Samsung SSD 860 QVOと同860 EVOのスペック比較(4TBモデル)

性能をSLCバッファー技術でカバー

 QLC NANDフラッシュメモリの性能をフォローしているのが「SLCバッファー」「疑似SLCモード」などと呼ばれるバッファー技術だ。Samsungではこれを「Intelligent TurboWrite」と呼んでいる。

 SLCバッファーとは、本来QLCのメモリセル1つに記録するデータをあえてSLC相当の1bitのみとし、電圧制御をシンプルにすることで性能や耐久性をSLC並に引き上げ、それを書き込みバッファーとして利用し、書き込み性能の遅さをカバーするものだ。

 Samsungの場合、かなり細かい部分まで仕様を公表しており、固定で6GBのバッファーを確保。あとは空き容量や使用する容量に応じて可変で確保し、最大で78GB(1TBモデルは42GB)がバッファー領域として使えるという。

Intelligent TurboWriteのSLCバッファー容量。1TBモデルは最大42GB、2TB、4TBモデルは最大78GBのバッファーを搭載する

QLCとTLCの決定的な違い

 SLCバッファー技術で性能を稼いでいるのはTLCもQLCも共通だが、TLCとQLCでは決定的な違いがある点に注意したい。

 最も異なるのは、SLCバッファー領域外の性能だ。SLCバッファー領域内は高速でも、バッファーに入らないデータの書き込み性能はNANDフラッシュメモリの素の性能が反映される。TLCではバッファー領域外でも高速に書き込めるが、QLCではバッファー領域を外れた途端、一気に性能が低下する

 Samsungのレビュワーズガイドによれば、860 QVOのSLCバッファー領域外のシーケンシャルライト性能は、2TB・4TBモデルで160MB/sと標準的なHDD並。1TBモデルは80MB/sまで下がることが明記されている。

 もう1つ、QLCの場合は、SLCバッファーに使われる本来の容量は、バッファー容量の4倍であることも忘れてはならない。本来、4倍の容量を記録できるセルをあえて等倍記録にして耐久性や性能を上げているのだが当然だが、例えば、36GBのSLCバッファーのために使われる空き容量は144GB、SLCバッファーが72GBならば288GBだ。Samsungのレビュワーズガイドでは、1TBモデル(可変SLCバッファーが36GB)で空き容量が168GB以上ない場合には、可変SLCバッファーは完全には機能しない(not fully operate)と記載されている。

Intelligent TurboWriteのSLCバッファー領域内外のシーケンシャルライト性能。QLCではバッファー領域をはずれると性能が低下する。これは現状のQLC NANDフラッシュメモリ搭載SSDの宿命だろう
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